慢性乳腺炎(読み)まんせいにゅうせんえん(その他表記)Chronic mastitis

六訂版 家庭医学大全科 「慢性乳腺炎」の解説

慢性乳腺炎
まんせいにゅうせんえん
Chronic mastitis
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 急性化膿性乳腺炎ほど激しい症状はありませんが、乳腺炎による膿瘍(のうよう)形成、排膿を繰り返すものです。多くは乳頭、乳管の形成不全と合併しており、とくに陥没(かんぼつ)乳頭と合併したものが最も頻度が高い傾向にあります。乳頭部付近の乳管と皮膚との間に瘻孔(ろうこう)トンネル)を形成していることが多いようです。

原因は何か

 何らかの原因で化膿性乳腺炎を起こし、保存的治療で症状が改善したものの、乳腺内に生き残った細菌コロニー(集まり)を形成して炎症による排膿を繰り返します。感染のもとになった乳管と皮膚の間に瘻孔を形成していて、この瘻孔が残っているかぎりは再燃する可能性があります。

 乳頭や乳管の形成不全と関係していることもあり、陥没乳頭と合併していることが多いようです。授乳の有無と関係なく発症することもあります。

症状の現れ方

 乳輪下の腫瘤(しゅりゅう)と乳輪、あるいは乳輪近辺の皮膚から排膿します。この特徴的な臨床症状と、感染巣に通じる瘻孔が認められれば、慢性乳腺炎が疑われます。

 もともと陥没乳頭になっている女性では、授乳経験がなくても本疾患にかかることがあります。

検査と診断

 臨床経過と陥没乳頭などの典型的な症状がそろっていれば、診断は容易です。乳がんを否定するために乳腺X線撮影、超音波検査、細胞診などを行います。膿汁の培養試験も、抗生剤による一時的な症状軽減のためには有用です。感染源である乳腺と皮膚との間の瘻孔を確認することが重要です。

治療の方法

 一時的な炎症鎮静のためには、抗生剤による治療が有効です。しかし、細菌のコロニーになった乳腺と、皮膚との間に形成された瘻孔をともに切除しないかぎり再燃は必至なので、感染した乳腺と瘻孔を除去します。この時、乳房変形を来すことがあるので、形成外科的な技術を要する手術になります。

 また、陥没乳頭を放置すると再燃の原因になるので、乳頭形成術を行わなければならないこともあります。慢性乳腺炎の治療は決して安易なものではありません。

病気に気づいたらどうする

 とりあえず外科を受診し、炎症の鎮静処置をしてもらいます。

 その後、形成外科で細菌に感染した乳腺および瘻孔の切除、また必要がある時は、陥没乳頭の根治的な手術をしてもらいます。

関連項目

 陥没乳頭

馬場 紀行

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「慢性乳腺炎」の解説

まんせいにゅうせんえん【慢性乳腺炎 Chronic Mastitis】

[どんな病気か]
 乳腺の慢性的な炎症で、授乳に関連しておこる慢性授乳性乳腺炎と、授乳に関係なくおこる慢性乳腺炎があります。
■慢性授乳性乳腺炎(まんせいじゅにゅうせいにゅうせんえん)
 授乳期の急性化膿性乳腺炎(きゅうせいかのうせいにゅうせんえん)(「急性化膿性乳腺炎」)が、不適切な治療によって治りきらずに慢性化したものです。授乳後、長期にわたっておこることがあります。
 乳房が赤く腫(は)れて大きくなり、熱をもったり、しこりを触れることがありますが、急性化膿性乳腺炎よりも症状が軽いのがふつうです。
 治療としては、膿瘍(のうよう)があれば切開(せっかい)して排膿(はいのう)します。しこりがあれば摘出手術が必要です。
■授乳と関係ない慢性乳腺炎
 閉経前後にみられるもので、乳房全体や一部にしこりを触れますが、圧痛や発赤(ほっせき)などの炎症症状はありません。
 乳腺の炎症により乳房の皮膚にひきつれやへこみができたり、わきの下のリンパ節が腫れることもあります。
 とくに治療を必要としませんが、乳がんとの鑑別がむずかしいことがあるので、一度は外科の乳腺専門の医師の診察を受ける必要があります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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