憎む(読み)ニクム

デジタル大辞泉 「憎む」の意味・読み・例文・類語

にく・む【憎む/悪む】

[動マ五(四)]
よくないこと、本来あってはいけないこととして許しがたく思って嫌う。他人言動などに強い不快の感情をいだく。憎いと思う。「不正を―・む」「戦争を―・む」「―・むべき犯罪」
自分に不利益をもたらすものとして嫌う。「恋敵を―・む」
非難する。なじる。
「人の―・むをよしと言ひ、ほむるをもしと言ふ人は」〈・三一九〉
[可能]にくめる
[類語]嫌う忌み嫌う恨むそねのろ嫌がる厭う憎悪する嫌悪する敵視する仇視きゅうしする嫉視しっしする呪詛じゅそする唾棄だきする目のかたきにする白い目で見る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「憎む」の意味・読み・例文・類語

にく・む【憎・悪・嫉】

  1. 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
  2. よくないことやよくない人・行為などに対して、感情的、かつ意志的に、強い非難めいた気持を抱く。憎悪する。憎いと思う。
    1. [初出の実例]「天皇(すめらみこと)則ち其(そ)不孝(おやにしたかはぬこと)の甚(にへさ)なるを悪(ニクム)て、市乾鹿文(いちふかや)を誅(つみな)ふ」(出典:日本書紀(720)景行一二年一二月(北野本訓))
    2. 「いかで我死なん、にくみ、あしき物にの給へば、罪もあらん」(出典:落窪物語(10C後)四)
  3. よくないことなどを嫌い、しりぞける。いとわしく思う。
    1. [初出の実例]「博奕(ばくやう)をして、親にもはらからにもにくまれければ」(出典:大和物語(947‐957頃)五四)
  4. 他人の長所、幸福、幸運などに対して、ねたましい感情を抱く。ねたむ。そねむ。こしゃくに思う。
    1. [初出の実例]「三位の位おくり給ふよし、勅使来てその宣命読むなん悲しきことなりける〈略〉これにつけてもにくみ給ふ人々多かり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  5. 非難のことばを口にする。悪口を言う。なじる。そしる。
    1. [初出の実例]「おいぬる人こそ、人はむつかしき心のあるにこそ、とにくむは、めのとやうの人をそしるなめり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
  6. 相手意見などに意気ごんで反対する。
    1. [初出の実例]「いささか違ふ所もあらん人こそ、我はさやは思ふなどあらそひにくみ、さるからさぞともうち語らはば」(出典:徒然草(1331頃)一二)
  7. 軽く、またはからかうような気持でなじる。また、ひやかす。
    1. [初出の実例]「こと人の言はむやうに、心えずおほせらると、中将にくむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)

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