手車(読み)テグルマ

デジタル大辞泉 「手車」の意味・読み・例文・類語

て‐ぐるま【手車/×輦/輦車】

人の手で押し、または引く小形の車。物を運ぶのに使う。
土砂などを運ぶ、2本の柄のついた手押しの一輪車。
自家用の人力車
「―へ乗って、立派な玄関のある家をこしらえるに相違ない」〈漱石坊っちゃん
子供の遊戯の一。二人両手を差し違えに組み合わせ、その上に別の一人を乗せて歩く。
屋形車輪をつけた車で、前後に突き出ているながえを人の手で引くもの。これに乗って内裏に出入りするには、輦の宣旨による勅許が必要であった。輦車れんしゃ
近世以降のおもちゃの一。土・木などで小さな井戸車の形に作り、糸を結びつけて上げ下げするもの。現在のヨーヨーに似る。

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精選版 日本国語大辞典 「手車」の意味・読み・例文・類語

て‐ぐるま【手車・輦・輦車】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. (れん)に車をつけ、肩でかつがずに車で運行する乗り物。特に手車の宣旨を受けた皇太子または親王・内親王・女御・大臣などが乗用するもの。れんしゃ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
      1. 手車<b>[ 一 ]</b><b>①</b>〈石山寺縁起絵巻〉
        手車[ 一 ]石山寺縁起絵巻
      2. [初出の実例]「白く清げなる法師を手輿(テグルマ)にかきて」(出典:貞享版沙石集(1283)八)
    2. 二人が向かいあって、それぞれの両手を組み合わせ、その上に他の一人が乗れるようにしたもの。また、そのようにして歩き回る遊戯。おてぐるま。
      1. [初出の実例]「いざ、この仏、河むかへへ具して行て供養せんとて、手車(テクルマ)にのせて、山河の早く深をわたりけるか」(出典:雑談集(1305)二)
    3. 自家用の人力車。
      1. [初出の実例]「和らかひ衣服きて手車(テグルマ)に乗りあるく時は立派らしくも見えませうけれど」(出典:十三夜(1895)〈樋口一葉〉上)
    4. 人の手で押したり引いたりして動かす小形の車。
      1. [初出の実例]「手車と箒とを持ち街衢を掃除して」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉五)
    5. 土砂などを運ぶのに用いる、箱に二本の柄のついた手押しの一輪車。
    6. 近世以降の、玩具一種。土や木で小さく井戸車の形に作り、その車に糸を巻きつけておき、その糸の端をひくと車が回り、反動を利用すれば、再び糸は車に巻きつく。お蝶殿の輦(てぐるま)と称し、享保一七一六‐三六)の初め頃から売られた。後のヨーヨーと同じ。
      1. 手車<b>[ 一 ]</b><b>⑥</b>〈絵本家賀御伽〉
        手車[ 一 ]〈絵本家賀御伽〉
      2. [初出の実例]「手車となるや折取風車〈宗房〉」(出典:俳諧・毛吹草(1638)五)
    7. 「てぐるま(手車)に乗せる」こと。
  2. [ 2 ] 狂言曲名。狂言「鈍太郎(どんたろう)」の狂言記での名称

てん‐ぐるま【手車】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「てぐるま(手車)」の変化した語 ) 児童の遊戯の一つ。二人が両手を組み合わせ、その上に他の一人を乗せて歩くもの。
    1. [初出の実例]「又呼ぶも鼠手ぼたんてんぐるま」(出典:雑俳・雲鼓評万句合‐延享三(1746))

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世界大百科事典(旧版)内の手車の言及

【ヨーヨー】より

…日本でも同じころに中国から伝わり,長崎から流行し,享保年間(1716‐36)初期には京坂で売られ,やがて江戸でも流行した。1727年刊の《目付絵》には,当時の流行玩具のひとつとして〈お蝶殿の手車〉の名があげられており,また1798年(寛政10)刊の《近世畸人伝》には〈享保のはじめ,京に手車(てぐるま)といふものをうる翁あり〉とあり,〈手車〉の名でよばれていたことがわかる。これは胡粉彩色をした土製菊形のものを二つ合わせたもので,鈴木春信の浮世絵にも遊女がこれをもてあそんでいる図がある。…

※「手車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」