扞止堤(読み)かんしてい(英語表記)tailing dam

改訂新版 世界大百科事典 「扞止堤」の意味・わかりやすい解説

扞止堤 (かんしてい)
tailing dam

スラリー(粒子懸濁液)を堆積し,脱水させるためのダムで,テーリングダムとも呼ばれる。鉱山で選鉱廃滓を処理するため広く用いられている。選鉱工場では,鉱石を単体分離して浮選(浮遊選鉱)などの選別操作を行うために,鉱石は74μm以下のものが70~95%程度になるまで細かく粉砕され,有用鉱物が分離回収されたのちに,大量の廃滓が生成される。この廃滓は廃石または尾鉱tailingと呼ばれる。廃石のうち,粗粒部は坑内充てん(塡)材などとして利用される場合が多く,残りは扞止堤に堆積される。扞止堤は日本では山間部の地形を利用して築かれる場合が多いが,平坦地に設けられる場合もある。周囲からの雨水流入を防ぐための導水溝,堆積物の状態を検査するための暗きょ(渠)などが設けられ,また堤防は,外側を土石によって築き,その内側を廃滓スライムから分級した粗粒部によって強化する方法で作られる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「扞止堤」の意味・わかりやすい解説

扞止堤
かんしてい
dam

鉱山で堆積された捨石鉱滓などが,崩壊したり流出したりするのを防止するために設けられる堤状の構築物。普通鉱滓ダム,あるいは単にダムと呼んでいる。選鉱場,砕鉱場,精錬場などから排出される捨石,鉱滓,沈殿物などは,擁壁,扞止堤,排水施設などをもつ堆積場に堆積することが法律によって義務づけられている。

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