抗体(読み)こうたい(英語表記)antibody

精選版 日本国語大辞典 「抗体」の意味・読み・例文・類語

こう‐たい カウ‥【抗体】

〘名〙 生体内に侵入した抗原に対して形成されるたんぱく質総称。抗原と抗原抗体反応を起こす。一般に動物血清中に多く含まれ、その抗原に対する免疫性を生体に与える。化学的には血清グロブリンに属するたんぱく質で、リンパ系細胞でつくられる。抗原抗体反応の種類によって、凝集素抗毒素、溶菌素、沈降素、溶血素などに分けられる。〔血液科学(1944)〕

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デジタル大辞泉 「抗体」の意味・読み・例文・類語

こう‐たい〔カウ‐〕【抗体】

体内抗原が侵入したとき、それに対応して生成され、その抗原に対してのみ反応するたんぱく質。実際に抗体として働くのは免疫グロブリン免疫体
[類語]抗原

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百科事典マイペディア 「抗体」の意味・わかりやすい解説

抗体【こうたい】

リンパ球一種であるB細胞が,抗原刺激によって産生,分泌するタンパク質物質的な実体免疫グロブリン。→免疫抗原抗体反応液性免疫
→関連項目アレルゲンクローン蛍光抗体法血液型血清血清療法抗毒素自己免疫ジフテリア血清排卵誘発薬ハプテンマクロファージ免疫血清免疫療法モノクローナル抗体溶血性貧血

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抗体」の意味・わかりやすい解説

抗体
こうたい
antibody

抗原の刺激によって生体内につくられ,この抗原と特異的に反応をする蛋白質をいう。抗原の影響下に血清や組織中につくられる免疫抗体と,特定の抗体が生れながらに存在する正常抗体がある。抗体はその抗原抗体反応の種類,すなわち抗原の違いによって,抗毒素,凝集素,血球凝集素,アナフィラキシー抗体,溶血素,溶菌素,補体結合性抗体などと呼ばれる。また,抗原の由来により,(1) 同種抗体 ヒトの血液型における凝集素のように自然にある抗体,(2) 自己抗体 自己の体内の病巣による抗原に対する抗体,(3) 異種抗体 抗体をもっている動物とは異なる種に由来する抗原に作用する抗体,に分類される。抗体産生に関与する細胞には,マクロファージ (抗原処理) ,T細胞 (ヘルパー細胞) およびB細胞 (抗体産生前駆細胞) の3種が考えられ,骨髄,脾臓,肝臓などで関与すると考えられているが,まだ解決はされていない。アレルギー,アナフィラキシーなどの生体反応を説明するのに,液体抗体,定着抗体に分けて考えることもある。その他,非特異性抗原に反応する非特異性抗体,フォルスマン Forssman抗体などがある。

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妊娠・子育て用語辞典 「抗体」の解説

こうたい【抗体】

自分とは違った異物(抗原=ウイルスや細菌など)が体内に入り込んだとき、そのたんぱく質に反応し、体から追い出すためにできる対抗物質。たとえば、はしか(麻しん)のウイルスに対する抗体、水ぼうそう(水痘)のウイルスに対する抗体などです。スギ花粉症の場合、異物とはスギ花粉で、「スギ花粉に反応する抗体」が体の中にたくさんあり、スギ花粉を排除しようと一生懸命反応していることになります。 なお、抗原がウイルスの場合、そのウイルスに対抗して特定タイプの抗体がつくられることがあります。妊娠中に行われるいくつかの抗体検査は、こうした体の仕組みを利用したもので、血液中の抗体の有無や量を調べ、そのウイルスに感染したことがあるか、実際に感染しているかどうかを調べる検査です。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

化学辞典 第2版 「抗体」の解説

抗体
コウタイ
antibody

抗原を生体に投与した際に産生され,その抗原と特異的に反応する免疫現象に本質的なタンパク質.通常,血清中に存在するが,リンパ液,脳脊髄液などの体液中,また組織に結合した状態でも存在する.とくに抗原の投与を受けない生体の血清中にも同様の物質が含まれ,血液凝集反応などに関与するものも知られる.このように,もともと存在するものは正常抗体と称し,抗原投与によって生じた抗体を免疫抗体という.血清中の抗体は大部分γ-グロブリン分画にある.[別用語参照]イムノグロブリン

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世界大百科事典 第2版 「抗体」の意味・わかりやすい解説

こうたい【抗体 antibody】

生体にウイルス,細菌,その他の細胞や動植物の成分などの抗原が侵入すると,生体の免疫系が刺激され,やがてそれらの侵入物に特異的に結合できるタンパク質が合成されて,細胞表面,血清その他の体液中に出現する。このタンパク質が抗体である。
【抗体産生細胞】
 抗原の侵入に対する生体免疫系の反応,すなわち免疫応答の主体をなす細胞はリンパ球系の細胞であって,これは胸腺由来リンパ球(T細胞)と骨髄由来リンパ球(B細胞)に大別される。

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栄養・生化学辞典 「抗体」の解説

抗体

 自己の成分ではない物質が体内に侵入した場合,生体はそれと結合して除去しようとする機能をもっており,抗体というタンパク質を合成する.このタンパク質は,免疫グロブリンとよばれ,物理化学的性質および免疫学的性質によってG,M,A,D,Eの五つのクラスに分けられている.⇒免疫グロブリン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「抗体」の意味・わかりやすい解説

抗体
こうたい
antibody

抗原と特異的に結合して抗原抗体反応をおこすもので、免疫グロブリンのいずれかに属する。抗原刺激に反応してBリンパ球より分化、増殖した抗体産生細胞(形質細胞)により産生される。それがおこす抗原抗体反応の種類により、抗体に、沈降素、凝集素、溶血素、抗毒素などの名がつけられることもある。

[高橋昭三]

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世界大百科事典内の抗体の言及

【抗原認識】より

…それに合致する抗原が受容体に結合した場合にのみ,そのリンパ球が増殖し,分化して免疫機能を発揮するのである。リンパ球には,抗体産生細胞の前駆細胞であるB細胞群と,免疫の調節や細胞性免疫にあずかるT細胞群がある。B細胞とT細胞では抗原受容体が同じではなく,抗原認識の仕組みも異なることが知られている。…

【免疫】より

…この血清を投与することによって,ジフテリアや破傷風にかかった患者に劇的な効果を表すことがわかって,いわゆる血清療法の嚆矢(こうし)となった。この物質はやがて,タンパク質であり,試験管内でさまざまな反応を起こし,生体内では感染防御に働く分子であることが明らかになり,のちに〈抗体〉と呼ばれるようになった。これに対し,この抗体産生を誘導する微生物由来の異物,さらには広く〈自己でないもの〉を〈抗原〉と呼ぶのである。…

【免疫グロブリン】より

…抗体タンパク質の総称。血清のタンパク質は電気泳動によりアルブミンとα‐,β‐,γ‐グロブリンに分画されるが,抗体はほとんどがγ‐グロブリン画分に見いだされ,また,γ‐グロブリン画分のタンパク質の大部分は抗体であることから,抗体タンパク質は古くからγ‐グロブリンと呼ばれていた。…

※「抗体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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