(読み)ジ

デジタル大辞泉 「持」の意味・読み・例文・類語

じ【持】[漢字項目]

[音](ヂ)(呉) チ(漢) [訓]もつ
学習漢字]3年
〈ジ〉
手にもつ。「持参所持把持捧持ほうじ
もちつづける。たもつ。「持続持論持久力維持加持堅持固持護持支持住持保持
引き分け。「持碁
〈チ〉もつ。たもつ。「扶持ふち
[名のり]もち・よし

じ〔ヂ〕【持】

歌合わせや囲碁などで、勝負・優劣がつけられないこと。引き分け。あいこ。もちあい。もち。
[類語]引き分けドロー預かりあいこ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「持」の意味・読み・例文・類語

もち【持】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「もつ(持)」の連用形名詞化 )
    1. もつこと。支えたもつこと。
    2. 品質や機能が変化したり、衰えたりせずに長く初めの状態を維持すること。
      1. [初出の実例]「上着は宿の内儀に持(モチ)が能いと勧められた茶縞の伏糸」(出典:油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉一)
    3. 米などを買い入れて、相場の上がるのを待つこと。
      1. [初出の実例]「米買こんで相場のあがるを待を持といひ、高相場に売置をして、さがるを悦ぶをはたと名附」(出典:浮世草子・商人職人懐日記(1713)一)
    4. 所有すること。自分のものとしていること。名詞の下に付けて用いることもある。
      1. [初出の実例]「主人もちなら主人が怕く、親もちなら親の言ひなり」(出典:にごりえ(1895)〈樋口一葉〉二)
    5. 引き受けること。負担すること。受持。
      1. [初出の実例]「何でも今日の奢りは、悉皆春好さんの持(モチ)とするがいひ」(出典:人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)五)
    6. 歌合、囲碁などの勝負事で、引分けとなること。
      1. [初出の実例]「右は勝ちたりとも、勝の御歌二つをくちにて出でかたれば、右一つ負けにたり。されど歌はもちどもにぞしける」(出典:類従本延喜十三年亭子院歌合(913))
    7. もちだち(持太刀)
      1. [初出の実例]「赤松殿 御太刀(持)」(出典:親元日記‐文明一五年(1483)六月一七日)
    8. 和船の上棚・中棚・かじきの船首尾での反り上がりを表わす船大工の語。ふつう上棚の船首尾の反り上がりでその船の持ちを表わすが、これは腰当船梁上面を通る水平線を基準として船首は水押付留(みよしつけとめ)船尾は戸立(とだて)との結合部のそれぞれの垂直の高さで示される。持上。
      1. [初出の実例]「とものもち、床の厚サほともちあかり申候」(出典:瀬戸流秘書(1663)船之法筒之目録)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 事物の状態を表わす語。「気もち」「心もち」など。

もた‐せ【持】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「もたせる(持)」の連用形の名詞化 )
  2. ( もたせた物の意 ) 贈り物。また、持って来た物。手土産
    1. [初出の実例]「もたせの御酒のありと聞く」(出典:御伽草子・酒呑童子(室町末))
    2. 「つづみおけもちて出て、もたせじゃと云」(出典:虎明本狂言・比丘貞(室町末‐近世初))
  3. もたせかけること。また、もたせかけるもの。「筆もたせ」
  4. 江戸時代、大坂で行なわれた女の髪形一種。いちょうまげに似た形のもの。
    1. もたせ<b>③</b>〈守貞漫稿〉
      もたせ守貞漫稿
    2. [初出の実例]「京坂は毛巻を忌ず此もたせ等毛巻也」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)一〇)

【持】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 歌合わせ、絵合わせ、囲碁などの勝負事で双方優劣をつけがたくて引き分けとなること。あいこ。あいもち。もち。
    1. [初出の実例]「一番右勝、是大将所為歟、但天判持」(出典:御堂関白記‐寛弘三年(1006)八月三〇日)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝疏‐昭公元年〕
  3. 囲碁で、互いに取りかけにいくことができない状態。セキ。または持碁。
    1. [初出の実例]「待ち給へや、そこは持(ぢ)にこそあらめ、このわたりの劫をこそ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)空蝉)

めち【持】

  1. 〘 他動詞 動 〙 動詞「もつ(持)」の連用形「もち」にあたる上代東国方言。
    1. [初出の実例]「我(わ)ろ旅は旅と思(おめ)ほど家(いひ)にして子米知(メチ)(や)すらむ我が妻(み)かなしも」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三四三)

もし【持】

  1. 動詞「もつ(持)」の連用形「持ち」にあたる上代東国方言。
    1. [初出の実例]「白玉を手にとり母之(モシ)て見るのすも家なる妹をまた見てももや」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四一五)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【句合】より

…有名俳人に判者を仰ぐ一般的方法以外に,作者が集まり,その議論に従う〈衆議判(しゆぎはん)〉や作者自身が判者となる場合もあり形式は多様である。歌合と同じく,優れた方を勝ち,優劣が決められないときは持(じ)とし,判定の理由を判詞として書くのが一般であるが,これまた多様である。1656年(明暦2)の季吟判《俳諧合》が版本として最も古いが,発生は寛永(1624‐44)ごろまでさかのぼりうるかもしれない。…

※「持」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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