中世末期、戦国時代以降、軍陣で、自己の存在あるいはその所属などを明示するために身体につけた竿(さお)のある小旗。一般には背に負ったものを称するが、腰にさした腰指(こしざし)もある。天文(てんぶん)(1532~1555)ごろの風俗を写す『洛中洛外図屏風(らくちゅうらくがいずびょうぶ)』(上杉家本)では、鎧武者(よろいむしゃ)が後世の旗指物と同じものをすべて腰にさしているので、腰指から発達したものと思われる。当世具足の背の部分には、たいてい指物を立てるための「受筒(うけづつ)」、それをさす「合当理(がったり)」「待受(まちうけ)」があるように、近世に至って背に立てる形式で定着したと思われる。戦国時代には、甲冑(かっちゅう)は簡略化し、威毛(おどしげ)の色彩の効果も薄れたため、また集団戦法の採用から、軍団の進退に伴う自己の明示、所属・職階の区別のために発達した標識である。したがって戦国大名の陣触れ状や着到状、軍法には指物についての規定がしばしば示される。
形状は、幟(のぼり)状の旗が基本と思われるが、正方形の四方(しほう)、その半切である四半(しはん)、幟の端を切り裂いた切裂(きっさき)、撓(しない)、靡(なびき)、折掛(おりかけ)などの小旗、それらの小旗の組合せである三本撓、二本靡、各種の柄蔓(えづる)、あるいは、提灯(ちょうちん)、団扇(うちわ)、御幣(ごへい)、金扇(きんせん)、吹貫(ふきぬき)、酒林(さかばやし)などのさまざまの道具をかたどったものがある。旗は色彩だけのものもあるが、模様、紋章、文字などをも記し、人目をひく意匠を凝らした。『北条五代記』の三好孫太郎の七つ提灯、武田信玄(しんげん)の使番の士の百足(むかで)を描いた指物などが名高い。またしだいに長大になって、背負うことなく、指物持(もち)として従者に持たせる例もあった。
[齋藤愼一]
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…(2)フランス 18世紀のルイ15世からルイ16世,さらにナポレオンの時代にかけて,宮廷や貴族階級の生活様式を反映した華麗で豪華なロココ様式や古典主義様式の家具が流行した。彫刻や寄木の精巧な装飾技術,指物技術,綴織や絹織物の技術などが最高水準に達したのもこの時代である。この高度に洗練された家具製作の技術の伝統を背景に,19世紀末には有機的な曲線をもつアール・ヌーボー様式の家具,さらに1920‐30年代にはキュビスムに影響をうけたアール・デコ様式の家具が展開し,世界の家具デザインに大きな影響を与えた。…
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