捕虜(読み)ほりょ(英語表記)prisoner of war

精選版 日本国語大辞典 「捕虜」の意味・読み・例文・類語

ほ‐りょ【捕虜】

〘名〙 戦争などで敵軍に捕えられた者。俘虜。とりこ。また、比喩的に、あるものの魅力に心を奪われる状態をいう。
史記抄(1477)一五「首虜率とは斬首捕虜の功によりて封賞の科か定てある法令を率と云ぞ」

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デジタル大辞泉 「捕虜」の意味・読み・例文・類語

ほ‐りょ【捕虜】

戦争などで敵に捕らえられた人。とりこ。俘虜ふりょ
[補説]作品名別項。→捕虜
[類語]俘虜虜囚とりこ人質

ほりょ【捕虜】[戯曲]

原題、〈ラテンCaptivi》紀元前3世紀から紀元前2世紀頃の古代ローマの喜劇作家、プラウトゥスによる戯曲

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「捕虜」の意味・わかりやすい解説

捕虜
ほりょ
prisoner of war

戦時に敵に捕えられた者のうち国際法上の一定の要件,すなわち正規軍に属する戦闘員非戦闘員交戦資格を備えた民兵群民蜂起の構成員,元首,大臣,外交使節団などに該当する者。平和的人民原則として捕虜にはされない。捕虜は常に人道的に待遇され保護されねばならず,虐待措置は禁止される。また実際の敵対行為が終了したのち,遅延なく解放され,返還されなければならない。捕虜に関する国際法規は 1899年の陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約付属規則(→ハーグ陸戦規則)により法典化され,1929年の俘虜ノ待遇二関スル条約,および第2次世界大戦の経験に照らして作成された 1949年の捕虜の待遇に関する条約(ジュネーブ第3条約)により保護の範囲と内容が拡充された。第2次世界大戦中の日本軍による連合国捕虜の取り扱いをめぐっては,21世紀にいたっても,不当であったとして補償を求める動きが続いた(→戦後補償)。また日本軍将校シベリア抑留についても捕虜に関する国際法規との間で議論が残された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「捕虜」の意味・わかりやすい解説

捕虜
ほりょ
prisoner of war

捕虜とは、戦争において敵の権力内に陥った者をさすが、捕虜待遇を与えられるための資格要件は国際法によって定められている。1899年ハーグ陸戦規則(1907年改定)、1929年ジュネーブ捕虜条約(1949年改定)、1949年捕虜条約を含む1949年ジュネーブ諸条約に対する1977年第一追加議定書によって捕虜資格要件は漸次緩和され、今日では国家の正規軍・不正規軍構成員のほか、民族解放戦争において民族自決のために闘う戦闘員にも捕虜待遇を受ける資格が認められてきている。また、軍隊構成員ではないが、従軍記者や需品供給者など許可を得て軍隊に随伴する者、商船や民間航空機の乗組員で敵の権力内に陥り他の国際法規定によっていっそう有利な待遇を受けない者にも同様に捕虜待遇が与えられる。捕虜の取扱いもフランス革命以来人権思想に基づく人道的待遇が要求され、上記の捕虜条約には詳細な保護規定が置かれている。それによれば、捕虜の一般的保護の基礎にある原則として、捕虜はこれを捕らえた個人または部隊の権力内にあるのではなく、抑留国が捕虜待遇について責任を負う。捕虜の保護内容としては、人道的待遇、健康に重大な危険を及ぼす行為の禁止、暴行・脅迫ならびに侮辱や公衆の好奇心からの保護などがあげられる。抑留国は捕虜につきその本国に通知し、その家族や中央捕虜情報局への通知票送付を認めねばならず、敵対行為終了後は捕虜を遅滞なく解放しかつ送還しなければならない。

[藤田久一]

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普及版 字通 「捕虜」の読み・字形・画数・意味

【捕虜】ほりよ

とりこ。俘虜。〔漢書、匈奴伝上〕其の後、三千餘騎を出だし、三と爲り、竝びに匈奴に入り、捕數千人を得てる。匈奴、(つひ)に敢て當(その代償に相当するもの)を取らず。

字通「捕」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「捕虜」の意味・わかりやすい解説

捕虜【ほりょ】

戦争や武力紛争に際し,敵国に捕らえられ,その権力内に陥った軍事要員。1949年のジュネーブ条約(赤十字条約)でその身分・待遇が定められている。これによれば,戦闘員・非戦闘員(政治的要人・従軍記者等も含む)を問わないが,一般人民は対象とされない。収容国は捕虜を一定地に留置できるが,身体と名誉を保護し,自国軍人と同一の給養・医療を無償で行い,労役は,将校を除く捕虜に対し軽度で作戦行動に無関係なものについてのみ課すことが許される。
→関連項目戦闘員

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世界大百科事典 第2版 「捕虜」の意味・わかりやすい解説

ほりょ【捕虜】

一般に,戦争において敵の権力内におちいった者の総称であり,国際法上その資格要件と待遇が定められている。もっとも,交戦国による捕虜の取扱いは大きく変遷してきた。近代以前の戦争において,捕虜は殺害されあるいは奴隷となり,17世紀になると捕虜交換や身代金制度が始まった。18世紀にはフランス革命を契機に,当時の人権思想に基づいて捕虜に一定の人道的待遇を与えることが要求された。この要求は近代国家における国民軍制度の採用によって強まったが,19世紀後半以来不正規兵の戦闘参加の増大につれ,交戦者資格ないし捕虜資格の要件を満たした者のみに捕虜待遇が与えられることになった。

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世界大百科事典内の捕虜の言及

【生捕り】より

…戦場において敵の将兵を生かしたままでとらえ捕虜にすることで,生虜あるいは生獲ともいった。捕虜は事後殺される場合が多いが,その処遇の仕方は生捕りされた者の地位や事情で異なる。…

【ゲリラ】より

… なお国際法上,捕らえられたゲリラの取扱いが問題となる。第2次大戦中のレジスタンス運動の経験から,1949年の捕虜の待遇に関するジュネーブ条約は,義勇隊や民兵隊に要求されるのと同じ条件を満たす〈組織的抵抗運動団体〉の構成員に対しては捕虜待遇を認めた。しかし,その条件を満たすことはゲリラの場合には不可能に近いため,現在の国際法の下では,捕らえられたゲリラは戦時犯罪として処罰を免れえない。…

【戦闘員・非戦闘員】より

…戦闘員は敵対行為に直接参加する権利を有する。そのため逆に,戦闘員は敵の攻撃対象とされうるが,傷病や投降により戦闘外におかれた場合には一定の保護が与えられ,敵の権力内に陥った場合には捕虜となる。他方,非戦闘員はおもに交戦国の文民・一般住民であるが,戦闘員以外の国民のすべてを指し,さらに自国に在留する外国人(中立国および相手交戦国国民を含む)をも含む。…

※「捕虜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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