精選版 日本国語大辞典 「排他的経済水域」の意味・読み・例文・類語
はいたてき‐けいざいすいいき ‥ケイザイスイヰキ【排他的経済水域】
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領海の外側に海岸の基線から測って200海里までの範囲内で設定される水域のこと。略称EEZ。この水域は、領海外の海洋資源に対する沿岸国の要求に応えるとともに、水域内の海洋資源の最適利用を確保することを目ざして、1982年の国連海洋法条約によって制度化されたものである。
[田中則夫]
この水域における沿岸国の権利と義務は、国連海洋法条約によって規定されている。沿岸国は、排他的経済水域において、(1)海底の上部水域ならびに海底およびその下の天然資源(生物であるか非生物であるかを問わない)の探査、開発、保存および管理のための主権的権利、ならびに、この水域の経済的な探査、開発のための他の活動に関する主権的権利、(2)人工島、設備および構築物の設置と利用、海洋の科学的調査、海洋環境の保護と保全に関する管轄権、(3)この条約に定めるその他の権利および義務を有する。他方、すべての国は、排他的経済水域において、航行の自由、上空飛行の自由、海底の電線とパイプライン敷設の自由を享受する。また、排他的経済水域の制度と両立する限度で、公海制度に関する国際法の他の規則もこの水域に適用される。
[田中則夫]
沿岸国は、排他的経済水域において生物資源の保存と最適利用を促進する義務を負う。そのため、沿岸国は、この水域内における生物資源の漁獲可能量を決定し、自国がそのすべてを漁獲する能力を有しない場合、その資源の余剰分については、漁業協定に基づき他国に入漁の機会を与えなければならない。内陸国や地理的不利国は、同一地域の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の余剰分の開発に、衡平の基礎のもとで参加する権利を有する。入漁を認められた他国民は、入漁料、漁獲割当量、漁業規制など沿岸国が定める条件を遵守しなければならない。また、沿岸国は、この水域における生物資源の管理のために制定した法令の遵守を確保するために、外国漁船に対して乗船、臨検、拿捕(だほ)、訴追などの措置をとることができる。もっとも、外国漁船の乗組員に対する処罰は罰金刑に限られ、供託金が提供された場合には船舶と乗組員が速やかに釈放される。
[田中則夫]
領海の外側に連なる浅い海底を大陸棚というが、そこにある石油などの地下資源の開発が可能になったので、1958年の第一次海洋法会議で「大陸棚に関する条約」が採択された。この条約では、領海の外側の水深200メートルまでの海底、または、それ以上深くても天然資源の開発が可能な海底を大陸棚と定義して、大陸棚資源の探査と開発に沿岸国が主権的権利を行使することにした。しかし、その後における海底開発技術の進歩に伴い、沿岸国が開発可能性を根拠にして大陸棚の範囲を拡大する傾向を示したため、地理学上の大陸棚をこえて陸地の自然延長の及ぶ大陸縁辺部全体の資源開発に、沿岸国の主権的権利を認める方向に進んだ。第三次海洋法会議においては、距岸200海里の排他的経済水域を設立して、沿岸国がこの水域の海中と海底およびその下にあるすべての天然資源の探査と開発に主権的権利をもつことが決定された。そのため、国連海洋法条約では、大陸棚の範囲について、沿岸国の領海をこえて陸地領域の自然延長の及ぶ大陸縁辺部の外縁までの海底区域、または、大陸縁辺部の外縁が200海里以内で終わっている場合には200海里までの海底区域とすることになった。つまり、沿岸国は、海岸から200海里までの海底の天然資源については、海底の形状にかかわりなく主権的権利をもち、大陸縁辺部の外縁が200海里外に延びている場合には、200海里外の海底についてだけ大陸棚制度が適用されることになった。
[田中則夫]
排他的経済水域と大陸棚において海洋の科学的調査を実施しようとする国は、沿岸国の同意を得なければならない。また、沿岸国は、排他的経済水域を通航する外国船舶が、国際規則および基準に違反する排出を行って、沿岸国の領海または排他的経済水域の資源に対して重大な損害を生じさせた場合には、その外国船舶に対して海洋環境を保護するために一定の措置をとることができる。
このように、200海里排他的経済水域は、国連海洋法条約に基づいて、領海とも公海とも異なる新しい法的地位をもつ水域として確立した。すでに160か国・地域が排他的経済水域を設定している。日本も、1996年(平成8)6月に国連海洋法条約を批准した際、「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」を制定し、200海里排他的経済水域の設定に踏み切った。
[田中則夫]
『小田滋著『注解国連海洋法条約 上巻』(1985・有斐閣)』▽『高林秀雄著『領海制度の研究』(第3版)(1987・有信堂高文社)』▽『山本草二著『海洋法』(1992・三省堂)』▽『高林秀雄著『国連海洋法条約の成果と課題』(1996・東信堂)』
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