損なう(読み)ソコナウ

デジタル大辞泉 「損なう」の意味・読み・例文・類語

そこな・う〔そこなふ〕【損なう/害う】

[動ワ五(ハ四)]
物をこわして、だめにする。傷つける。「器物を―・う」
人の気持ちやからだの調子を悪くする。「感情を―・う」「健康を―・う」
殺傷する。「一兵も―・うことなく」
動詞連用形に付いて)
㋐…するのに失敗する。「書き―・う」
㋑…する機会を逸する。「乗り―・う」「見舞状を出し―・う」
[類語](1損ねる損ずる壊す破壊する損壊する毀損きそんする破損する損傷するこぼ傷付ける欠く砕く割る破る崩すつぶ打ち砕く打ち壊すぶち壊す取り壊す叩き壊す破砕砕破全壊壊滅/(2損じるとちる

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精選版 日本国語大辞典 「損なう」の意味・読み・例文・類語

そこな・うそこなふ【損・害】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. [ 一 ] 完全であるものを不完全にする。
    1. 心身を傷つける。
      1. (イ) 体の一部分をいためる。傷つける。けがをさせる。破る。
        1. [初出の実例]「恐るらくは寒心するところ、患を手に傷(ソコナフ)に貽(いた)さむ〈興福寺本訓釈傷 曾去奈不爾〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
      2. (ロ) 傷つけて命をなくす。殺傷する。
        1. [初出の実例]「種種の鳥獣を残賊(ソコナヒ)しが故に」(出典:大智度論平安初期点(850頃か)一六)
        2. 「河原のわたりは、盗人おほくて、人そこなう也」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      3. (ハ) ( 「心地そこなう」などの形で ) 病気になる。
        1. [初出の実例]「心地そこなひてわづらひける時に、風にあたらじとて、おろしこめてのみ侍りけるあひだに」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・八〇・詞書)
        2. 「いと、をかしげなる人の、いたう弱り、そこなはれて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
    2. 物事を悪い状態にさせる。
      1. (イ) うちこわしてだめにする。
        1. [初出の実例]「霖旱(ながめひでり)に経(あ)ふと雖も損傷(ソコナハるる)所無し」(出典:日本書紀(720)神代上)
        2. 「互ひに相ひ非し片ひて仏教を残(ソコナハ)む」(出典:百法顕幽抄平安中期点(900頃))
      2. (ロ) 人の気分などをこわす。
        1. [初出の実例]「イロヲ soconǒ(ソコナウ)、または、キゲンヲ soconǒ(ソコナウ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  3. [ 二 ] ( 動詞の連用形に付いて補助動詞として用いる ) ある動作をしながらも、その動作を全うできない、その動作に失敗する、などの意を表わす。誤る。しくじる。しそんじる。「言いそこなう」「行きそこなう」など。
    1. [初出の実例]「書きそこなひつとはぢて隠し給ふを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)

そく‐な・う‥なふ【損】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙 ( 「そこなう」の変化した語。多くは動詞の連用形に付けて用いる ) =そこなう(損)
    1. [初出の実例]「染(そめ)そくなった唐くさアみるよふな」(出典:洒落本・まわし枕(1789))
    2. 「跡の替り目も見損(ソク)なったよ」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)二)

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