摂家将軍（読み）せっけしょうぐん

改訂新版　世界大百科事典

摂家将軍 (せっけしょうぐん)

鎌倉中期，摂関家出身の将軍で，九条頼経・頼嗣父子を指し，藤原将軍ともいわれる。1219年（承久1）将軍源実朝が暗殺されて後，左大臣九条道家の子の三寅が，源頼朝の遠縁にあたるという理由で，将軍として鎌倉に迎えられた。三寅は当時2歳であり，頼朝の後家の北条政子が政務を行ったが，25年（嘉禄1）政子の死後，三寅は元服して頼経と称し，翌年，正式に征夷大将軍に任命された。44年（寛元2）子の頼嗣に将軍職を譲って後も頼経は隠然たる勢力を持ち，46年北条時頼が執権となると，北条一門の名越光時が頼経に接近し，執権の地位を奪おうとする事件がおこり，頼経は京都に追放された（宮騒動）。この事件に座して，頼経の父道家も関東申次を罷免されて失脚した。51年（建長3）には僧了行の幕府転覆の陰謀に九条家が関係しているとの嫌疑が生じ，翌年，頼嗣も鎌倉を追われた。後嵯峨上皇の皇子宗尊親王が将軍として鎌倉に迎えられ，ここに摂家将軍に代わり，親王将軍が登場した。
執筆者：上横手 雅敬

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

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摂家将軍【せっけしょうぐん】

鎌倉時代，源氏将軍が絶えたあと，摂関(せっかん)家から迎えられた将軍。藤原将軍とも。1226年関白藤原道家(みちいえ)（九条道家）の子頼経(よりつね)が４代将軍となる。1244年子の頼嗣(よりつぐ)（５代）に譲位。形式的将軍であったが，頼経が隠然たる勢力を持つにおよび，1246年執権(しっけん)北条氏に追放され，頼嗣も1252年廃された。のち親王将軍（皇族将軍）となる。

出典　株式会社平凡社

山川 日本史小辞典 改訂新版

摂家将軍
せっけしょうぐん

鎌倉幕府将軍のうち，五摂家の一つである九条家から迎えられた4代頼経・5代頼嗣(よりつぐ)をいう。源実朝の死後，皇族将軍の東下を後鳥羽上皇に申しいれて拒否された幕府は，1219年(承久元)源頼朝と血縁にある九条道家の子三寅(みとら)(元服して頼経)を迎え，26年(嘉禄2)将軍とした。44年(寛元2)には子の頼嗣を後継としたが，52年(建長4)宗尊(むねたか)親王を迎えると，頼嗣は廃された。

出典　山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」

旺文社日本史事典 三訂版

摂家将軍
せっけしょうぐん

鎌倉幕府の将軍のうち，摂関家（九条家）出身の４代九条頼経とその子５代頼嗣 (よりつぐ) をいう
藤原将軍ともいう。３代源実朝が暗殺され源氏の嫡流が絶えたため，承久の乱（1221）後，北条氏によって京都から迎えられた。執権政治下にあって形式的な存在にすぎず，実権はなかった。

出典　旺文社日本史事典 三訂版

世界大百科事典（旧版）内の摂家将軍の言及

【鎌倉時代】より

…これら強硬な力の政策の波紋はそれにとどまらず，頼経の父の道家までが，公武の連絡にあたる関東申次（かんとうもうしつぎ）の地位を奪われて籠居を余儀なくされ，道家の子の実経も摂政を罷免されるなど，幕府の干渉は朝廷の政治にまで及んだ。52年(建長4)には頼経の子の将軍頼嗣も，陰謀を理由に鎌倉を追われ，ここに摂家将軍の時代は終りを告げ，親王将軍がこれに代わった。　九条家は勢威を失ったが，打撃を受けたのは九条家だけではなかった。…

【執権政治】より

…したがって幕政の改革は，25年の政子の死を契機に，執権泰時によって精力的に行われた。すなわち執権を2名に増員し(うち1名が連署)，評定衆を新設し，さらに頼経を元服させ，翌26年に頼経は征夷大将軍に任命される(摂家将軍)などであり，ここに執権政治が確立した。32年(貞永1)には最初の武家法典である《御成敗式目》が制定され，裁判の基準が定められた。…

【藤原頼経】より

…鎌倉幕府の第4代将軍。摂政九条道家の子。母は太政大臣西園寺公経の娘綸子。公経の妻全子，すなわち頼経の外祖母は源頼朝の姪。幼名三寅。1219年(承久1)3代将軍源実朝が殺され，源氏の正統が絶えたため，頼朝の遠縁にあたる頼経が鎌倉に迎えられた。25年(嘉禄1)元服，翌年征夷大将軍に任ぜられ(摂家（せつけ）将軍)，30年(寛喜2)源頼家の娘竹御所を妻とした。頼経が長く鎌倉にとどまり，御家人（ごけにん）とも親密となり，執権勢力に対抗するようになると，これを恐れた執権北条経時は，44年(寛元2)頼経に迫って将軍職を子の頼嗣に譲らせた。…

※「摂家将軍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」