撮棒(読み)さいぼう

精選版 日本国語大辞典 「撮棒」の意味・読み・例文・類語

さい‐ぼう【撮棒・材棒】

  1. 〘 名詞 〙 破邪寿福の棒として柊(ひいらぎ)などで作った災難除けの棒。堅木の材で鋲(びょう)筋金を打って武器に用いたものは鉄撮棒(かなさいぼう)などという。
    1. [初出の実例]「いとすくやかげなる法師、物の具はせで、只大きなるさいはうばかり持ちたる、とほり侍ぬ」(出典:古今著聞集(1254)一二)

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改訂新版 世界大百科事典 「撮棒」の意味・わかりやすい解説

撮棒 (さいぼう)

邪気穢気をはらう呪力を持つとされた長い木の棒。鉄製突起などをつけたものを鉄撮棒(かなさいぼう)という。先を丸くくびれさせた形状からみて,陽物をかたどったものと推定される。従僧法師警固のために担う棒,祇園会のさい犬神人(いぬじにん)が持つ棒,刑吏としての放免が担ぐ鉾,非人の長吏の突く棒など,みな撮棒あるいはその変形である。《峯相記》や《太平記》は撮棒・鉄撮棒を駆使する悪党・悪僧を描いているが,これは飛礫(つぶて)と同様,撮棒の持つ破邪の力が武器として用いられたもので,中世後期,その呪力が衰えるとともに,棒を使う兵法,棒術がそこから生まれてくる。長刀や〈かぶき者〉の持つ大刀もその流れをくむものと思われる。一方,それは子どもたちが若い女性,嫁の尻を打ち歩くときの〈山の神のさいでん棒〉や〈さいまる棒〉,綱引競技に若者頭が手に持つ〈ざいふり棒〉などとして,民俗の世界に長く生命を持ちつづけている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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