改元(読み)かいげん

精選版 日本国語大辞典 「改元」の意味・読み・例文・類語

かい‐げん【改元】

〘名〙 (「元」は元号で、年号のこと) 年号を改めること。改号
続日本紀‐天平神護元年(765)一月己亥「改元天平神護」 〔文中子中説‐問易〕

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デジタル大辞泉 「改元」の意味・読み・例文・類語

かい‐げん【改元】

[名](スル)年号(元号)を改めること。改号。「昭和改元して平成となった」→年号
[補説]行われる理由により、代始だいはじめ改元(天皇代替わりに行う)、祥瑞しょうずい改元(珍しい自然現象天意とみて行う)、災異改元災害などに際して行う)、革命改元讖緯しんいに基づき辛酉しんゆう甲子かっしの年に行う)の四つに分けられる。
[類語]改号

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「改元」の意味・わかりやすい解説

改元
かいげん

それまで用いられていた年号を廃して新しい年号にすること。改元には次の五つの場合がある。

(1)天皇の代始による改元。奈良時代の霊亀(れいき)(元正(げんしょう)天皇)、神亀(じんき)(聖武(しょうむ)天皇)など即位当日の改元例もあるが、一般には即位や践祚(せんそ)の翌年に改元される。

(2)祥瑞(しょうずい)の出現による改元。白雉(はくち)の出現による大化(たいか)からの改元を初例として、大宝(たいほう)・慶雲(きょううん)・和銅(わどう)など、飛鳥(あすか)・奈良時代に多い。

(3)天変地異疫疾、兵乱などの厄災を避けるための改元。彗星(すいせい)(永祚(えいそ))、地震(天慶(てんぎょう))など。

(4)讖緯説(しんいせつ)による辛酉(しんゆう)革命、甲子(かっし)革令の年にあたってその難を避けるための改元。延喜(えんぎ)以後は恒例となった。

(5)その他、室町時代以後将軍の代始に行われた改元など。

 改元にあたってはまず年号勘者を定め、各人から幾通りかの新年号案を提出させ、公卿(くぎょう)の審議(難陳)を経て天皇が決定し、詔書をもって公布された。新年号はその年の年首にさかのぼって用いられた。中世には幕府の干渉を受けた場合が多く、江戸時代には幕府の事前の承認が必要とされ、新年号は幕府によって全国に公布された。明治の改元にあたって一世一元と定められ、旧皇室典範の規定により、践祚と同時に枢密院に諮詢(しじゅん)し、天皇が勘定して、即日施行された。日本国憲法に基づく新皇室典範には年号に関する規定が省かれたため、1979年(昭和54)に元号法が制定され、践祚があったときに限り内閣が定めることになった。

[岡田芳朗]

中国

天子、諸侯は即位の翌年に踰年(ゆねん)改元して治世年次を数えたが、のち治世の途中で改元することがおこり、これに名号をつけることは漢の武帝が紀元前140年を建元元年としたことに始まる。その7年を元光と改めたのが改元の初例である。中国においても代始、祥瑞、災異、革命革令などによって改元されたが、元(げん)以後はおおむね代始改元のみで一世一元制が守られた。

[岡田芳朗]

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普及版 字通 「改元」の読み・字形・画数・意味

【改元】かいげん

元号を改める。〔漢書、律暦志下〕光武皇~景の後、高九世の孫を以て、命を受けて中興す。を復し、改元して武と曰ふ。

字通「改」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「改元」の解説

改元
かいげん

元号を改めること。改元の理由には大きくわけて代始(だいはじめ)・祥瑞(しょうずい)・災異・革年の四つがある。代始改元は天皇の践祚(せんそ)(即位)に伴う改元で,践祚の翌年に改元する踰年(ゆねん)改元が原則であった。祥瑞改元は珍しい自然現象や動植物などの出現による改元で,奈良時代に多い。災異改元は彗星・地震・旱魃・洪水・飢饉・疫病・火災・兵乱などの天変地異や人災による改元。革年改元は辛酉(しんゆう)・甲子(かっし)の年には変乱が多いとする辛酉革命・甲子革令(かくれい)説にもとづく改元。そのほか,平安時代には陰陽思想で厄年にあたる年の改元もあった。改元は本来天皇の権限であったが,室町時代以降には武家政権の発議・主導による改元が多くなった。明治改元の際に一世一元の制度が採用され,以後,改元は天皇の代始に限られている。

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百科事典マイペディア 「改元」の意味・わかりやすい解説

改元【かいげん】

年(元)号を改めること。中国では魏の恵王がその治世の36年を改めて元年とし,秦の恵文王が14年を改めて元年とした中途改元に始まり,漢の武帝は即位の翌年を建元1年(前140年)とした。その後,瑞祥災禍あるごとに改元され,1年間に4度も行われた例もある。明清に至り一世一元となる。日本では大化改新(645年)の際の大化が元号の初めとされるが,元号が連続して制定されるようになったのは,701年に始まる大宝以後である。→元号

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世界大百科事典 第2版 「改元」の意味・わかりやすい解説

かいげん【改元】

年号(元号)を改定する国家行事。日本における年号の使用は645年の大化に始まるが,その後断続があり,継続的に使用されるのは8世紀初頭の大宝,慶雲以降であって,改元行事もこのころから制度化したと考えられる。改元の理由にはおおよそ(1)代始(だいはじめ)改元,(2)祥瑞(しようずい)改元,(3)災異改元,(4)革命改元の4種がある。(1)は天皇の死もしくは譲位によって帝位の交代が行われた際のもので,即位改元ともいう。

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世界大百科事典内の改元の言及

【元号】より

…大化以前において法隆寺金堂の釈迦三尊像の光背の銘や《伊予国風土記》逸文の道後温泉の碑文などによって法興という年号のあったことが知られるが,これは公式に定められたという徴証がなく,逸年号もしくは広い意味で私年号というべきであろう。650年(大化6)白雉と改元されたが,654年(白雉5)孝徳天皇の没後年号はとだえ,天武天皇の末年に朱鳥の年号が定められたが,これもあとが続かず,701年(文武5)に至り,対馬から金が貢上されたのを機に大宝の年号が建てられた。この建元と同日に新たに制定された令(いわゆる大宝令)の一部が施行された。…

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