改訂新版 世界大百科事典 「政党支持の自由」の意味・わかりやすい解説
政党支持の自由 (せいとうしじのじゆう)
労働組合が組織として特定政党を支持する行為や活動を行わず,構成員たる組合員個々人が,所属労働組合による統制を受けることなく,自由に政党支持活動を行うことが可能なこと。日本では現在,総評系の多くの組合が社会党支持の方針を明確化し,同盟系の多くの組合が民社党支持の方針を明確化しており,他方,共産党と総評・同盟系の組合の一部は,政党支持の自由を主張している。政党支持の自由がとくに問題となるのは,特定政党支持方針を堅持している組合において,これに反する行為や活動を組合員個々人が行った場合,それを組織統制処分の対象とすることがあるからである。主として選挙時に問題となるが,その顕著な例は1974年の参議院選挙をめぐって動労で生じた。この選挙を前に,前委員長を社会党公認で立候補させるため,動労は選挙資金として臨時組合費の徴収を決定した。しかし,札幌地本を中心とした一部組合員は,政党支持の自由を主張して,納入を拒否した。この問題は紛糾して組織問題となり,札幌地本指導部ほかの組合員が除名処分を受けたことをきっかけに,被処分者や政党支持の自由を主張する組合員は,動労から分裂して全動労を結成した。労働組合が社会保障立法を求めたり安保条約廃棄を求めたりする政治活動と,組合員個々人の政党支持の自由とは区別して考えられる必要がある。しかし両者の関係をめぐっては,さまざまな議論が行われている。
執筆者:遠藤 公嗣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報