政基公旅引付(読み)まさもとこうたびひきつけ

百科事典マイペディア 「政基公旅引付」の意味・わかりやすい解説

政基公旅引付【まさもとこうたびひきつけ】

戦国時代に前関白九条政基が記した日記。文亀1年(1501年)3月から永正1年(1504年)12月まで家領(けりょう)の和泉国日根荘(現大阪府泉佐野市)に下向(げこう)した時の日記で,原題に〈旅引付〉とある。私的な内容も含まれるが,日根荘で荘園領主として実際に荘務に携わったため,その際の証拠的記録としての性格が強い。政基は縁故関係にあった管領(かんれい)細川氏の力を背景に,自ら現地に下向し,武士押領(おうりょう)などによって危機的状態にあった荘園の回復を直務(じきむ)支配というかたちで図ろうとしていた。内容は,荘園をめぐる荘園領主室町幕府守護などの動向,当時の惣村(そうそん)の日常生活の具体的様子,惣村の一揆逃散(ちょうさん)などによる支配者への抵抗の動きなどが詳細に記述される。荘園領主が4年間現地に滞在し,自らの目で捉えたことを記述したという点で,戦国時代の荘園の様相を知ることのできる稀有な史料とされている。→九条家

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改訂新版 世界大百科事典 「政基公旅引付」の意味・わかりやすい解説

政基公旅引付 (まさもとこうたびひきつけ)

前関白九条政基が,1501年(文亀1)3月より04年(永正1)12月まで,家領の和泉国日根野荘(ひねののしよう)(日根荘)に下向し,荘務を行った際に記した自筆の日記。全5冊。原題に〈旅引付〉とあるように,日次記(ひなみき)の形式をとり私的な記述もまじえるが,荘務のための証拠的機能をもつ記録としての性格が強い。政基は,和泉守護細川氏と紀州根来寺(ねごろじ)との争乱のなかで消滅しかかった日根野荘を,縁故関係にあった管領細川氏の力を背景に,在荘,直務というかたちで回復しようとした。そのため,この日記には,戦国時代の荘園をめぐる幕府,守護,守護被官,荘民などの動向が,公的文書の流れ,機能,効力の実態とのかかわりで記述されるとともに,惣村の実態が領主の目で直接に記されることとなった。地下請(じげうけ),地下検断,一揆・逃散(ちようさん)などの抵抗,戦乱飢饉,祭などの行事などが克明に記されており,戦国時代の稀有の史料とされている。《図書寮叢刊》所収。
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世界大百科事典(旧版)内の政基公旅引付の言及

【日根荘】より

…1501年(文亀1)荘園領主九条政基は日根荘に下向し,入山田村大木の長福寺を居所として04年(永正1)11月まで直務(じきむ)支配を行った。その間の日記《政基公旅引付(まさもとこうたびひきつけ)》によって,16世紀初頭の村落生活の諸相,九条家の姿勢,守護勢力や根来(ねごろ)寺の動向など,さまざまな姿がとらえられる。しかし天文期以降は他の本所領と同じく九条家領としての実体は失われていった。…

※「政基公旅引付」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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