教皇権(読み)きょうこうけん

世界大百科事典 第2版 「教皇権」の意味・わかりやすい解説

きょうこうけん【教皇権】

使徒ペテロの後継者・ローマ司教としての教皇がもつ,ローマ・カトリック教会内の最高司牧権。カトリックの教理によれば,ペテロがキリストから,使徒団の中で特別の使命権限を受けたことは,3テキスト(《マタイによる福音書》16:13~19,《ルカによる福音書》22:31~32,《ヨハネによる福音書》21:15~17)の総合的理解から証明される。また,キリストは使徒らに裁治,教導する権能(《マタイによる福音書》18:18,28:18~20)を与えたが,〈世の終りまで,すべての国民に宣教せよ〉との派遣の言葉(《マタイによる福音書》28:19~20)に従い,この使徒らの権能は後継者に継承され,ペテロの受けた司教の権能と全教会に対する首位権も,ローマ司教に受け継がれたとされる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内の教皇権の言及

【異端審問】より

…グレゴリウス9世が当初の審問官に任じたのは,ドミニコ会修道士であり,のちにフランシスコ会修道士も加わった。彼らは異端にたいする闘争を通して,カトリック教会内の教皇権の整備と強大化を推進したことになる。異端審問はしたがって,中世教会における教皇権のあり方と,密接に結びついている。…

【コンスタンティヌスの寄進状】より

…作成の事情に関しては異見が多く,ピピン3世の754年のローマ教会への寄進に関連して,または800年のカール大帝の戴冠を正当化するためにローマで作成されたとする説が有力であるが,9世紀前半フランク王国成立説もある。内容は,コンスタンティヌス1世(大帝)が癩病を時のローマ司教シルウェステル1世(在位314‐35)の洗礼によって治癒してもらったことに感謝して,ローマ司教とその後継者がアンティオキア,アレクサンドリア,コンスタンティノープル,エルサレムの四主教座の上に支配権を有すること,またローマ市を含む全イタリア,西方属州,地区および都市をローマ司教の支配にゆだねることを述べており,教皇権の世俗権,皇帝権に対する優越を主張したものとされる。その偽書たることは15世紀にニコラウス・クサヌスおよび最終的にはバラによって論証された。…

【宗教改革】より

…中世いらい,キリスト教はヨーロッパの社会,政治,文化,思想など,生活の諸分野と密接に結びつき,これを深く規定していたため,この変革と,それを通じて成立したプロテスタンティズムは,ルネサンスと並んで,近代ヨーロッパ世界の形成にとって,重要な意義をもつこととなった(図1,図2)。
[改革の先駆け]
 宗教改革の一般的前提をなしたものは,ローマ教皇権の動揺に象徴せられるごとき,中世カトリック教会体制の内部的な構造変化である。カトリシズムは,中世ヨーロッパの封建制度とのからみ合いの中で,一個の巨大な法的・権力的秩序をつくりあげていた。…

※「教皇権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

インボイス

送り状。船荷証券,海上保険証券などとともに重要な船積み書類の一つで,売買契約の条件を履行したことを売主が買主に証明した書類。取引貨物の明細書ならびに計算書で,手形金額,保険価額算定の基礎となり,輸入貨...

インボイスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android