教養(読み)キョウヨウ

デジタル大辞泉 「教養」の意味・読み・例文・類語

きょう‐よう〔ケウヤウ〕【教養】

[名](スル)
教え育てること。
「君の子としてこれを―して呉れ給え」〈木下尚江良人の自白

学問、幅広い知識精神修養などを通して得られる創造的活力や心の豊かさ、物事に対する理解力。また、その手段としての学問・芸術・宗教などの精神活動。
社会生活を営む上で必要な文化に関する広い知識。「高い教養のある人」「教養が深い」「教養を積む」「一般教養
[類語](2知識知見がく学問学識学殖がくしょく蘊蓄うんちく素養見識知性常識造詣博識博学碩学篤学有識該博博覧強記

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精選版 日本国語大辞典 「教養」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ようケウヤウ【教養】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 教え育てること。教育。
    1. [初出の実例]「男子二十一人、女子五人あり、故にその子を教養する事備らず」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉七)
    2. [その他の文献]〔後漢書‐鄧禹伝〕
  3. 学問、知識などによって養われた品位。教育、勉学などによって蓄えられた能力、知識。文化に関する広い知識。
    1. [初出の実例]「我等は我等の教養を釈迦に〈略〉カントに求むる」(出典:三太郎の日記(1914‐18)〈阿部次郎〉三)
    2. 「辺見は、教養ある男らしかった」(出典:自由学校(1950)〈獅子文六〉触手)
  4. きょうよう(孝養)
    1. [初出の実例]「但令給物家女命以後可進退。又居屋東庇、教養者に可充給状如件」(出典:伊勢光明寺古文書‐文治五年(1189)二月一八日・大中臣某処分状案)

教養の語誌

( 1 )中世の文献や古辞書類に見られる「教養」は、現代のそれとは別語で、死者の後世を弔うという意の「孝養(けうやう)」の別表記である。「和漢通用集」には「孝養 けうやう おやにかうかうの義」「教養 けうやう 先祖の仏事」とあり、中世後期には「孝養」と「教養」とに意味分担があったと思われる。
( 2 )の意の使用は、古く「書紀‐神代上」に「其中一児最悪、不教養」(丹鶴本訓 をしへ)と見えるが、日本語として定着せず、明治初期に、近世中国語の影響で、英語 education・educate の訳語として中国から伝わったものであろう。
( 3 )現代のの意味での使用は大正時代以降か。

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改訂新版 世界大百科事典 「教養」の意味・わかりやすい解説

教養 (きょうよう)

教養とは,一般に人格的な生活を向上させるための知・情・意の修練,つまり,たんなる学殖多識,専門家的職業生活のほかに一定の文化理想に応じた精神的能力の全面的開発,洗練を意味する。英語のculture(耕作・養育の意),ドイツ語のBildung(形成・教化の意)の訳語である。前者はふつう〈文化〉と訳される語であるが,たとえばキケロが〈cultura animi(魂の耕作・養育)が哲学である〉と言った場合,またこれを受けて中世で広くcultura mentis(心の耕作・養育)の語が用いられた場合の〈精神的教化・教育〉の意義は,この訳語〈教養〉によってよく示されている。日本でこの教養の語が広く用いられるにいたったのは,しばしば明治の〈修養〉に対する大正の〈教養〉などと言われるように,大正中期の文化主義思潮の中でのことである。三木清も〈大正時代における教養思想は明治時代における啓蒙思想--福沢諭吉などによって代表されてゐる--に対する反動として起ったものである〉(《読書遍歴》1941)としているが,文化主義思潮そのものがドイツ理想主義哲学の大きな影響下に生まれたものであり,物質的・実利的〈文明〉に対する精神的・価値的〈文化〉の力説に主眼があったのだから,〈教養〉にも同じ刻印が押されていることは否めない。実利主義的,立身出世的,政治的な明治の〈修養〉概念に対して,大正の〈教養〉には内面的,精神的,非ないし反政治的,人格主義的等々のニュアンスが強く帯びさせられているわけである。これが日本で教養という言葉のもっている歴史的含蓄であるとすれば,教養主義的偏向が強く戒められねばならないのはもとよりであるが,しかし他方,たとえば専門課程と一般教養課程とに分けられている現代日本の大学教育のカリキュラムにおいて顕著に見られる後者の軽視・蔑視などにはその裏返しの傾向も認められる。訳語としての教養という言葉,およびその実質的内容が,いまだ日本では安定を得るほどに深く根ざすにいたっていないということであろう。
教養小説 →自由七科
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「教養」の意味・わかりやすい解説

教養
きょうよう

人間の精神を豊かにし、高等円満な人格を養い育てていく努力、およびその成果をさす。とかく専門的な知識や特定の職業に限定されやすいわれわれの精神を、広く学問、芸術、宗教などに接して全面的に発達させ、全体的、調和的人間になることが教養人の理想である。教養はとくに専門的、職業的知識を意識した場合、「一般教養」と表現されることがある。教養ということばの原語である英語やフランス語のcultureがラテン語のcultura(耕作)からきていることからわかるように、土地を耕して作物を育てる意味だったものを「心の耕作」に転義させて、人間の精神を耕すことが教養であると解されている。その「心の耕作」cultura animiという表現を初めて用いたのは古代ローマのキケロである。

 心を耕して豊かにするための素材は、時代や社会によって異なって展開されてきたが、ヨーロッパでは古代ギリシア・ローマ的な教養の概念が受け継がれてきている。ギリシアでは精神と肉体が調和した全人的教養人が理想とされ、そのために学ぶべき知識が学科目として提示され、それがやがて自由七科へと発展、継承されていった。古代の教養の概念はルネサンス人文主義のなかによみがえり、さらに18世紀後半にドイツの新人文主義運動のなかで、古典文化の精神を学び直し、それを新たに創造、展開し直すという形でとらえ直された。しかし、教養は古典的、学問的に偏り、それ自身が目的となるきらいがあるため、科学・技術が急速に発達し、社会生活も大幅に変化した現代では、教養の新しい内容が求められている。

[諏訪内敬司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「教養」の意味・わかりやすい解説

教養
きょうよう
culture

精神文化一般に対する理解と知識をもち,人間的諸能力が全体的,調和的に発達している状態。教養の内容は,その所有者が存在する社会の文化によって異なる。またそのような状態に教え導くことをさすこともある。今日の大学では,人文科学,社会科学,自然科学を内包する一般教養と,それを基礎としてそのうえにそれぞれの専門領域における専門教養とを体得させることを目指している。また教職教養を身につけることを要求している。

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普及版 字通 「教養」の読み・字形・画数・意味

【教養】きようよう

学問。

字通「教」の項目を見る

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