数える(読み)カゾエル

デジタル大辞泉 「数える」の意味・読み・例文・類語

かぞ・える〔かぞへる〕【数える】

[動ア下一][文]かぞ・ふ[ハ下二]
数量順番を調べる。勘定する。「人数を―・える」「指折り―・える」
一つ一つ挙げる。列挙する。「理由は種々―・えられる」
数がそれだけのものになる。「蔵書は五万冊を―・える」
その中の一つに加える。数に入れる。「候補者一人に―・えられる」
拍子をとって歌う。
「別れの白拍子をぞ―・へける」〈義経記・六〉
[下接句]死んだ子の年を数える隣の宝を数える鼻毛を数える星を数うるごと
[類語]カウント列挙枚挙数え上げる数えたてる

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精選版 日本国語大辞典 「数える」の意味・読み・例文・類語

かぞ・えるかぞへる【数・算】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]かぞ・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
  2. 順番や数量を勘定する。計算する。
    1. [初出の実例]「出でて行きし日を可俗閇(カゾヘ)つつ今日今日と吾(あ)を待たすらむ父母らはも」(出典:万葉集(8C後)五・八九〇)
  3. 一つ一つ並べ上げる。数え上げる。
    1. [初出の実例]「なにがし、これがしとかぞへしは」(出典:青表紙一本源氏(1001‐14頃)夕顔)
  4. ある範囲内の一つとして数に入れる。数え入れる。
    1. [初出の実例]「なほ親しき家人の中にはかぞへ給ひけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)関屋)
  5. あれこれとはかり考える。商量する。
    1. [初出の実例]「諸の食封(へひと)有る寺の所由を商量(カソヘ)(〈別訓〉はかり)て、加すべきは加し、除(や)むべきは除めよ、とのたまふ」(出典:日本書紀(720)天武八年四月(北野本訓))
    2. 「こころざしのおもむきに随ひて、あはれをもわき給へ。労をもかぞへ給へ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)胡蝶)
  6. 白拍子(しらびょうし)をうたう。白拍子のように無伴奏で、歌謡を拍子をつけてうたう。
    1. [初出の実例]「白拍子を、まことにおもしろくかぞへすましたりければ」(出典:平家物語(13C前)一〇)

数えるの語誌

( 1 )古くは、の意味で「よむ」と類義関係にある。上代中古の「かぞえる」には「手を折りて(かぞふ)」など、指を使って計算している表現が見られるが、「よむ」にはそのような例は見られない。「かぞえる」は専ら数を計算すること自体に意味の中心があったと考えられる。
( 2 )の意味は、「かぞふ」の、一つ一つ数え上げ並べ上げてたどっていくという意味から派生した用法と考えられる。それは、「よむ」が、声を上げてひとつひとつ(数や文字を)区切りながら読みあげていくという原義から派生して、定型である和歌を「詠む」という意味を持つようになったことと類似した派生関係にある。→よむ(読)
( 3 )類似形「かずふ」(下二段)の確例は中古以降のものであり、方言形「かずえる」は西日本に限られるところから、「かずふ」は、「数」からの類推で後に新しく生まれたものかと考えられ、口頭語的・俗語的な性格を強めながら、規範的・文章語的な「かぞふ」と併存したものと思われる。
( 4 )室町時代頃から、ヤ行にも活用して「かぞゆ」(終止形は多く「かぞゆる」)が使われた。したがって、室町以降の連用形の例はヤ行かハ行か明らかでないが、明瞭なものだけを「かぞゆ」の項にあげた。

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