文明論之概略(読み)ぶんめいろんのがいりゃく

精選版 日本国語大辞典 「文明論之概略」の意味・読み・例文・類語

ぶんめいろんのがいりゃく【文明論之概略】

評論福沢諭吉著。明治八年(一八七五)刊。明治初頭の急激な西洋事物の輸入に伴う進歩主義儒教流の保守主義の確執動揺を打破するために、儒教主義を徹底的に批判し、西洋思想のもつ精神独立科学重要性を認識しながら、文明とは何か、文明の目的本旨を論述した警世策・文明批評

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デジタル大辞泉 「文明論之概略」の意味・読み・例文・類語

ぶんめいろんのがいりゃく【文明論之概略】

福沢諭吉著書。6巻。明治8年(1875)刊。西洋・日本の文明の特徴を論じ、日本のとるべき道を示した明治初期啓蒙思想代表作

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「文明論之概略」の意味・わかりやすい解説

文明論之概略
ぶんめいろんのがいりゃく

日本最初の文明論福沢諭吉の最高傑作。1875年(明治8)刊。福沢が『学問のすゝめ』の啓蒙(けいもう)家的態度反省を加え始めたときの作品である。日本文明を歴史的に反省して、その停滞性は権力偏重にあると批判し、それを克服して自由な交流・競合を図るなかに文明は発達すると指摘、文明を野蛮・未開・文明の発達段階論でとらえた史観を提示するとともに、さしあたっては西洋文明を目的にすべきだと説きつつも、西洋文明もまた発達途次のものであるとした。ことに西洋文明を他国の侵略のうえに築かれた存在であるとする指摘には瞠目(どうもく)させられるが、また今日では国家独立のためにやむをえぬと国家エゴイズムの容認をも示している。

[広田昌希]

『『文明論之概略』(岩波文庫)』

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世界大百科事典 第2版 「文明論之概略」の意味・わかりやすい解説

ぶんめいろんのがいりゃく【文明論之概略】

1875年に刊行された福沢諭吉の主著。彼の著作のうち最も理論的組織的で緻密だが,それを生み出したのは福沢の危機意識であり,全編を通じ新しい精神の提唱が古いそれへの批判と織り合わされて,まれに見る現実感と説得力をもたらしている。〈文明開化〉賛美の風潮のさなかに,国際社会への編入と文化接触が日本における国民国家の形成を阻害しているのを見抜いた福沢が,社会的激動と思想的混乱を突破して日本における〈文明〉の〈始造〉を導く自前のプログラムを構想したのが本書である。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「文明論之概略」の解説

文明論之概略
ぶんめいろんのがいりゃく

福沢諭吉の著した啓蒙的文明論。6巻。1874年(明治7)から執筆し,75年8月刊。文明とは国民一般の智徳の進歩であるとし,日本の文明を発達させるために,より進歩した西洋文明の精神を学ぶことを求めた。従来政治権力の干渉や儒教・仏教の徳治主義が文明を停滞させたと批判。日本の文明を西洋文明の程度にまで発展させ,文明を手段にして西洋近代国家と競合しうる「国の独立」を達成すべきことを主張した。「福沢諭吉全集」「岩波文庫」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「文明論之概略」の解説

文明論之概略
ぶんめいろんのがいりゃく

明治初期,福沢諭吉の代表的啓蒙書
1875年刊。6冊。古今東西の文明の発達を概観し,自国の自主独立には,進んだ西洋文明を摂取し,これを範として自国の文明の発達をはかることが急務であると説いた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文明論之概略」の意味・わかりやすい解説

文明論之概略
ぶんめいろんのがいりゃく

福沢諭吉著。6巻。 1875年刊。文明とは何か,文明に進む目的は何かを古今東西の事跡を通じて述べたもの。第1章の「本位を守る事」から第 10章「自国の独立を論ず」にいたる 10章から成る。

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世界大百科事典内の文明論之概略の言及

【学問のすゝめ】より

…この主題をめぐって,日用に役立たない旧来の学問を否定して,〈実学〉が提唱されたり,人間平等の観念や契約説的国家論が説かれたり,政府が暴政を行う場合,人民はいかに行動すべきかが論じられたり(日本でこの問題を最初に論じたのは本書であろう),西洋の文物を導入する際,文明の外形ではなくて,文明の精神を摂取する必要があると説かれ,西洋の文物思想を盲目的に崇拝することが否定されたりしている。本書は同じ福沢の《文明論之概略》とともに,明治初年の啓蒙思想を代表する傑作である。【植手 通有】。…

※「文明論之概略」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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