文芸雑誌。1933年(昭和8)11月~1944年7月。改造社発行。全129冊。復刊、1944年11月~。河出書房(現、河出書房新社)発行。いわゆる「文芸復興」の機運のなかで『文学界』『行動』に1か月遅れて創刊された。純文学ばかりでなく大衆文学や海外文学にも力を入れるなど昭和10年代のもっとも権威ある総合文芸雑誌としての役割を果たした。初代編集長は上林暁(かんばやしあかつき)。石坂洋次郎『麦死なず』、高見順『如何(いか)なる星の下に』などの長編をはじめ、伊藤整『幽鬼の街』、中野重治(しげはる)『空想家とシナリオ』、織田作之助『夫婦善哉(めおとぜんざい)』などの名作や問題作が掲載された。太平洋戦争開戦以後はしだいに軍国色を強め、1944年7月の改造社解散によって廃刊。同年11月から河出書房(1957年河出書房新社と改称)によって復刊され、野田宇太郎、杉森久英(ひさひで)、巌谷大四(いわやだいし)(1915―2006)、坂本一亀(かずき)(1921―2002)らが編集長として腕を振るい、戦後の新しい文学の舞台として数々の大作、傑作が発表された。また、別冊として『現代文豪読本』『別冊文芸』『特集文芸』なども刊行した。『文芸』は1957年3月号で休刊、1962年3月に復刊し、その後1986年春季号より季刊となる。おもな掲載作品として野間宏『青年の環(わ)』第二部・第三部、中村真一郎『空中庭園』、井上光晴(みつはる)『地の群れ』、高橋和巳(かずみ)『悲の器』、埴谷雄高(はにやゆたか)『闇(やみ)の中の黒い馬』、石原慎太郎『行為と死』、古井由吉(よしきち)『杳子(ようこ)』など、戯曲では山崎正和(まさかず)(1934―2020)『世阿弥(ぜあみ)』、三島由紀夫『喜びの琴』など、評論では中村光夫『風俗小説論』などがある。
[東郷克美]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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