ぶん【文】
〘名〙
①
外見を美しく見せるためのかざり。もよう。
あや。
※
新撰和歌(930‐934)序「抑夫上代之篇。義尤幽而文猶質」 〔礼記‐楽記〕
※
古事記(712)序「文
(ぶん)を敷き句を構ふるに」
③ 文学。
学問。
学芸。また、これらを励み修めること。
※保元(1220頃か)上「文にも非ず、武にもあらぬ四宮に、位を越られて」 〔書経‐大禹謨〕
④ みやびやかなこと。はでなこと。文雅。
※国歌八論(1742)歌源「故に古事記・日本紀の歌よりは文にして、古今集の歌よりは質なり」 〔論語‐雍也〕
※保元(1220頃か)中「非常の断は、人主専らにせよと云ふ文有り」
※造化妙々奇談(1879‐80)〈
宮崎柳条〉二編「仲雍髪を断
(きっ)て身を文
(ブン)にす」
※令義解(718)公式「五衛府。軍団及諸帯レ仗者。為レ武。自余並為レ文」
もん【文】
〘名〙
① 仏教の経文の一節や呪文のこと。
※観智院本三宝絵(984)中「諸の智徳名僧おどろきあやしみて、各文を出て問心みるに」
※太平記(14C後)二四「虚空に向ひ目を眠り、口に文(モン)を呪したるに」
② 経文以外で、よりどころとなるような、権威ある文章・文句。また、文字、文句。
※観智院本三宝絵(984)下「其間にあやしく妙なる事多かれども、文におほかれば、しるさず」
③ 銭貨の個数単位。のちに貨幣単位にもなった。中国に始まり日本にそのまま伝えられ、明治四年(一八七一)新貨条例により廃止された。もともと、唐の開元通宝一枚の重さが、一匁(もんめ)あったところからいう。一貫の千分の一に当たる。
※正倉院文書‐神亀三年(762)山背国愛宕郡雲上里計帳「輸調銭参拾陸文」
※浮世草子・日本永代蔵(1688)二「一つは弐文、二つは三文に直段を定め」
④ (一文銭を並べて数えたところから) 足袋の底の長さをはかる単位。一文は約二・四センチメートル。靴や靴下などにも通じて用いる。
※浮世草子・好色二代男(1684)七「美人両足は、八文(やモン)七分に定まれり」
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デジタル大辞泉
「文」の意味・読み・例文・類語
ぶん【文】
1 文字で書かれたまとまった一連の言葉。文章。また、詩文。「巧みな文」「文をつづる」
2 文法上の言語単位の一。一語またはそれ以上の語からなり、ひと区切りのまとまりある考えを示すもの。文字で書くときは、ふつう「 。」(句点)でその終わりを示す。センテンス。
3 学芸。学問。文事。「文武両道」⇔武。
4 外見を美しくするための飾り。あや。もよう。
「すなほなるを賤しくし、―を尊ぶ故に、人、―を学でいつはり多し」〈米沢本沙石集・一〇末〉
[類語]センテンス・文章・書き物・一文・散文・文言・編章・詞章・詞藻・文辞・文藻・文体・文面・章句・書面
もん【文】
1 《中国、唐の開元通宝1枚の重さが1匁あったところから》銭貨の個数・貨幣単位。1貫の1000分の1。「早起きは三文の徳」
2 《寛永通宝の一文銭を並べて数えたところから》足袋底の長さの単位。ふつう、1文は約2.4センチ。靴・靴下にも用いる。
3 文字。また、文章。ぶん。
「史書の―をひきたりし」〈徒然・二三二〉
4 呪文。経文。
「口に―を呪したるに」〈太平記・二四〉
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文【ぶん】
文法単位の一種。定義は一定しないが,外形的には,前後に必ず音の切れ目があって,終りに特殊な音調(イントネーション)があるとされ,内容的には,一つの統一した思想を表現し,完結性をもつものとされる。1語または2語以上の連結からなる。
→関連項目シンタクス|生成文法|単語|発話
文【もん】
(1)銭貨を数える単位。古代から使用され,江戸時代には寛永通宝1枚を1文とし,また金,銀,銭の3貨の交換基準は,金1両=銀60匁=銭4貫文と定められていた。(2)足袋(たび)の底の長さ(親指の先からかかとまで)をはかる単位。1文銭を並べてはかったのに由来。曲尺(かねじゃく)の0.8寸を1文とする。
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文
ぶん
sentence
単語とともに言語の基本的概念であるが,その定義はさまざまで定説はない。日本でも,陳述,統一性,完結性などを有するものと説かれてきたが,現在では,音形の面でイントネーションによってまとめられ,意味の面で完結しており,文法面で一つの独立した統合体となっているものといってよいであろう。一方,変形生成文法においては,文とは何かを問わず,いきなりS (センテンス) を立て,Sから一定の規則で生成されるものをすべて文としている。伝統的に,内容のうえから,平叙文,疑問文,命令文などに分類され,また,形のうえから,単文 (主述関係を1つだけ含むもの) ,重文 (単文が2つ以上等位接続詞で結合されたもの) ,複文 (従属節を含むもの) に分類される。
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ぶん【文】
日常生活では〈文〉と〈文章〉とをあいまいに使うことが多いが,言語学などでは,英語のsentenceにあたるもの(つまり,文字で書くとすれば句点やピリオド・疑問符・感嘆符で締めくくられるおのおの)を文と呼び,文が(あるいは後述の〈発話〉が)連結して内容のあるまとまりをなしたものを文章(テキスト)と呼んで区別する。文とは何かについては,文法学者の数だけ定義があるといわれるほどで,とりわけ日本の国語学では,ただ定義を論じるのみならず,文の文たるゆえんを問おうとするようないささか哲学的な論議も従来から盛んに行われてきた。
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文
もん
銭貨の貨幣単位。1000文を1貫文とする。10文を1疋ともいう。九六銭(くろくせん)のように100文未満の一定数を100文として通用させる省陌(せいはく)という慣行も広く行われた。銭貨1枚1文が原則だったが,江戸時代にはそれ以上の額面で通用する銭貨も発行された。1871年(明治4)円・銭の単位が制定され,貨幣単位としての使用を終えた。
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文
プログラム内で何らかの処理を行う、ひとつの完結した命令のこと。ステートメントとも呼ぶ。プログラムは文の集まりで構成されているともいえる。
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世界大百科事典内の文の言及
【散文】より
…定型や韻律をもった文章,すなわち韻文に対して,定型や韻律にとらわれず,屈折自在で端的に事実を記述する文章をいう。英語のプローズproseにあたるが,その語源はラテン語プロルススprorsusで,〈まっすぐ〉〈平明〉の意である。…
【シンタクス】より
…言語学の術語。単語が結びついて文を構成する場合の文法上のきまり,しくみ。また,それについての研究,すなわち文の文法的構造の研究。…
【生成文法】より
…1950年代中ごろにアメリカの言語学者N.チョムスキーが提唱し,以後,各国の多くの研究者の支持を集めている,文法の考え方。文法とは,〈その言語の文(文法的に正しい文)をすべて,かつそれだけをつくり出す(しかも,各文の有する文法的な性質を示す構造を添えてつくり出す)ような仕組み[=規則の体系]〉であるとし,その構築を目標とする。…
【日本語】より
…また,戦後日本の経済力が伸長するにつれてアメリカ,オーストラリア,アジア諸国などの間で,日本と日本語への関心がしだいにに高まってきていると言えよう。
〔現代日本語〕
以下,世界の他の諸言語との比較という観点も含みつつ,現代日本語の主だった特色につきまず略述したのち,さらに音声・音韻,文法等個々の面に即して,やや詳しくまたある部分は体系的な記述・説明を行う。
【概説――日本語の特色】
[音声・音韻面]
日本語では音節(拍)の構造が〈子音+母音〉を基調としているので,母音で終わる〈開音節〉の語が多い。…
【文型】より
…種々の具体的な言語表現(発話)から抽象して設定される,文の構造上のいくつかの類型をいう。(1)文の構造は,これを構成する成分(主語,述語,修飾語,独立語など)間の関係において考えられるが,これら各成分の結びつき方に種々の類型が認められるわけで,英文法で説くS+V,S+V+C,S+V+O,S+V+O+O′,S+V+O+Cという五つの型などもその一例である(Sは主語,Vは動詞,Cは補語,Oは目的語)。…
【文章】より
…一つの文(センテンス)またはある脈絡をもって二つ以上の文の連続したものが,一つの完結体として前後から切り離して取り上げられるとき,これを文章という。文もそれ自体完結したものではあるが,文章の脈絡の中においては,低次の部分をなすにすぎない。…
【文節】より
…日本語文法の用語。〈文を,言語として不自然にならない限りで,最も細かく区切った場合の各部分〉などと定義される。…
【文法】より
…
【概説】
[文法とは]
一般に文法と呼ばれているものは,当該の言語における,(1)単語が連結して文をなす場合のきまり(仕組み)や,(2)語形変化・語構成[派生語や複合語のでき方]などのきまり(仕組み),あるいはまた(3)機能語[助動詞・助詞・前置詞・接辞・代名詞等]の用い方のきまり(仕組み),とほぼいえるであろう。 たとえば,(A)〈ねこがねずみを食べた。…
※「文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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