斉民要術(読み)セイミンヨウジュツ(英語表記)Qí mín yào shù

デジタル大辞泉 「斉民要術」の意味・読み・例文・類語

せいみんようじゅつ〔セイミンエウジユツ〕【斉民要術】

中国の農業書。10巻。北魏賈思勰かしきょう撰。現存する完本としては中国農業書中で最古。それまでの農業書を集大成したもので、各種作物栽培法、家畜の飼育法などを体系的に記述。

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精選版 日本国語大辞典 「斉民要術」の意味・読み・例文・類語

せいみんようじゅつ‥エウジュツ【斉民要術】

  1. 中国の農書。一〇巻九二篇。後魏の賈思勰(かしきょう)撰。現存農書中最古の完本。アワを中心にした穀物類の栽培法から、野菜果樹、桑、麻の栽培、さらに家畜の飼育法、酒、みそ醸造法、南方物産などを体系的に述べた書。平安時代伝来

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改訂新版 世界大百科事典 「斉民要術」の意味・わかりやすい解説

斉民要術 (せいみんようじゅつ)
Qí mín yào shù

中国古代の基本的農書。撰者賈思勰(かしきよう)は北魏末・東魏の人。530-550年の間の成立と推測される。書名は平民に必要な生活技術書という意味。全10巻。本書は1巻総論(耕田法,種子採取法,アワの栽培法),2巻主穀栽培法,3巻蔬菜栽培法,4巻果樹栽培法,5巻有用植物栽培法,6巻畜産,7巻醸造,8巻調味料類の製造,9巻食品加工と貯蔵,10巻南方の珍しい植物の紹介,という構成である。その技術的内容は,華北の耕-耙-労の3段階の工程が明確に述べられ,現在の華北乾地農法の原則はほとんど含まれている水準の高いものである。かつ本書には《氾勝之書》《四民月令》ほか150種以上の典籍が引用されており,古代農書の集大成とも評せられ,古代の華北乾地農法の研究は《斉民要術》の研究から始まるというも過言ではない。賈氏は山東の豪族で本書は大土地経営の経験をふまえて著したものである。したがって賈思勰自身の筆になる部分は山東-泰山周辺における最高水準の技術を述べたものであって,本書の内容を広い華北全体に軽々に適用することは慎まねばならない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「斉民要術」の意味・わかりやすい解説

斉民要術
せいみんようじゅつ

中国の農書。著者は北魏(ほくぎ)の太守であった賈思勰(かしきょう)。532年ないし544年、北魏末から東魏の間のころ著された。完本として残る最古のもの。書名は「民の生活の技術」といった意味で、それまでの農業技術に関する文献を集大成し、新たに乾地農業についての農法を記している。10巻92編および巻頭雑説(これは原著者以外の添入)よりなり、巻一は耕種総論、巻二は耕圃(こうほ)作物、巻三は園圃蔬菜(えんぽそさい)・農家暦、巻四は果樹、巻五は栽植樹・養蚕染料作物、巻六は畜産・畜産加工・酪農・養魚・水菜、巻七は醸造のうち酒造、巻八は醸造のうち調味料・肉調理法、巻九は調理すなわち穀食・漬け肉・漬け物・飴(あめ)その他、巻10は塞外(さいがい)・淮河(わいが)以南・南方の物産、の構成である。全文は大字7万、小字注記4万である。

[福島要一]

『田中実他編『自然科学の古典をたずねて 上 斉民要術』(1978・新日本出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「斉民要術」の意味・わかりやすい解説

斉民要術
せいみんようじゅつ
Qi-min-yao-shu; Ch`i-min-yao-shu

中国の現存する最古の農業技術書。北魏賈思きょう (かしきょう) 著。 10巻。 92編から成り,五穀の種植法から酒,醤油の製法など農業生産物の加工までの広範囲に及ぶ農業技術を説く。正確精細で,東アジアの乾地犁耕農法の要点を尽している。西山武一,熊代幸雄の邦訳がある。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「斉民要術」の解説

『斉民要術』(せいみんようじゅつ)

北魏の賈思勰(かしきょう)が著した中国現存最古の農書。10巻。それ以前の農書をも引用する。農耕,牧畜から加工,販売,調理などまで,当時の山東省の農業経営の実情にもとづいて記してある。


『斉民要術』(さいみんようじゅつ)

『斉民要術』(せいみんようじゅつ)

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百科事典マイペディア 「斉民要術」の意味・わかりやすい解説

斉民要術【せいみんようじゅつ】

中国,北魏の賈思【きょう】(かしきょう)が選んだ,中国古代の総合的農書。10巻92編。530年−550年ころ成立。華北の農業を中心に,漢以来の耕作栽培,樹木,畜産,醸造,料理などを網羅。乾地農法の理論を確立して後世に影響を与えた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「斉民要術」の解説

斉民要術
せいみんようじゅつ

現存する最古の中国の農業書
北魏 (ほくぎ) の賈思勰 (かしきよう) の著。10巻。山東地方の事情に即して五穀・蔬菜 (そさい) ・果樹の栽培法,家畜の飼育法,酒・味噌のつくりかたなどを詳しく記した貴重な史料。

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世界大百科事典(旧版)内の斉民要術の言及

【園芸】より

…同時に雄性不稔の利用でコストダウンも図られている。
[中国]
 中国最古の総合農書の一つ《斉民要術》(6世紀半ばころまでに成立)は,10巻92編の大著で,ナツメ,カキ,モモ,スモモ,アンズ,ザクロ,ボケ,カブ,ダイコン,ニンニク,ラッキョウ,ネギ,ニラ,ショウガ,キュウリなどのように,現在中国で見られる主要な果樹,野菜の大半を取りあげ,その栽培法,利用について解説している。果樹の接木も,すでに当時確立していた。…

【酢】より

ビネガー
[歴史]
 前5000年ころのバビロニアにはビネガーがあったとされ,前3000年ころにはビール醸造の副産物としてビネガーの商業生産が行われていた。中国では周代に酢をつかさどる役人のいたことが知られ,6世紀の《斉民要術(せいみんようじゆつ)》は〈作酢法〉の章を設けて,20種あまりの製法を具体的に記述しているが,その中には,近代まで日本で行われていた方法とほぼ同じものも少なくない。日本の酢造りは酒とともに応神天皇の時代に伝えられたとされる。…

【農学】より

…南北朝時代の農学では,北魏の地方長官賈思勰(かしきよう)が,当時,華北で完成していた乾地農法を体系的に記録したことが特筆に値する。彼の農学はその著書《斉民要術》(6世紀初め)に集大成されており,その記述態度は老農の経験や農諺(のうげん)を採録し,みずからも実験してみるといった実際主義に基づいていた。また畜牧,染織,醸造,食品加工,家政方面のことにいたるまで細大もらさず記録し,後世の農学者たちに大きな影響を及ぼした。…

【農書】より

…農業に関する記事は最初はむしろ政治の四時の基準を示す立場での,あるいは為政者の立場からの記録に見られ,《夏小正》や《呂氏春秋》十二紀,《礼記(らいき)》月令等は前者で,《呂氏春秋》士容篇,《管子》地員篇等は後者である。 いわゆる農書(農作物,栽培技術の心得を中心に書かれた書)の成立は漢代ごろからと思われ,《氾勝之書》《四民月令》をへて,北魏の《斉民要術》(賈思勰(かしきよう)撰)10巻が出現した。本書は中国古代農書の集大成と評され,多数の書物を引用して古農書復原に寄与する一方,現在の華北の畑作の原則をふまえ,後の農書の畑作技術の部分にほとんど引用されてその基礎をなしており,中国農書の白眉である。…

【料理書】より

…料理書らしいものとしては《崔氏食経》《食饌次第法》《四時御食経》などの名が《隋書》経籍志に出ているが,完本はまったく伝わっていない。しかし,内容の一部が《斉民要術》と,平安時代の日本の医書《医心方》に引用されているので知ることができる。《斉民要術》は農書であるが,食物関係の記事が約40%あり,中国食物研究者必見の古典である。…

※「斉民要術」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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