新派(読み)しんぱ

精選版 日本国語大辞典 「新派」の意味・読み・例文・類語

しん‐ぱ【新派】

〘名〙
① 新しい流派。新しい風潮。また、それをとりいれている人。
※俳句問答(1896)〈正岡子規〉「新派の勢力は斯る老人に迄及びたるにや」
東京日日新聞‐明治三九年(1906)一月四日「彼の新派と称するものは、脚本供給乏しき(寧ろ絶無?)に苦みて、材を小説に獲るに」

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デジタル大辞泉 「新派」の意味・読み・例文・類語

しん‐ぱ【新派】

芸道芸能などの、新しい流儀・流派。⇔旧派
新派劇」の略。
[類語]党派派閥旧派分派別派

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百科事典マイペディア 「新派」の意味・わかりやすい解説

新派【しんぱ】

明治中期に興った政治宣伝劇に始まり,大衆的な現代風俗劇として発展してきた演劇歌舞伎を旧派というのに対して新派または新派劇といわれる。その初期には壮士芝居書生芝居・新演劇と呼称したが,川上音二郎の日清戦争劇の上演で主流演劇であった歌舞伎と対抗,1900年ごろから《不如帰(ほととぎす)》《己が罪》など家庭小説劇化したものが〈新派悲劇〉と呼ばれ全盛時代を迎えた。高田実伊井蓉峰河合武雄喜多村緑郎らが輩出。一時不振に陥り昭和初期に《二筋道》で挽回(ばんかい),花柳章太郎らの新生新派や,井上正夫の中間演劇の動きがあったが,戦後は喜多村,花柳,水谷八重子を中心に合同し今日に至る。
→関連項目伊藤熹朔婦系図家庭小説川上貞奴川口松太郎新劇新生新派角藤定憲高田実藤沢浅二郎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新派」の意味・わかりやすい解説

新派
しんぱ

明治 30年代に確立した家庭悲劇,花柳物を主とする演劇。これに対して歌舞伎は旧派と呼ばれる。明治 20年代に角藤定憲 (すどうさだのり) の「壮士芝居」や,川上音二郎の「書生芝居」をはじめ,伊井蓉峰の済美館,山口定雄一座,福井茂兵衛一座などの新演劇が各地で興り,相馬事件を扱った『又意外』の連作や日清の戦争劇で基礎を築いた。その後離合集散のうちに際物 (きわもの) 性を脱皮して,小説の脚色上演で演技面でも新境地を開き,団菊左 (9世市川団十郎,5世尾上菊五郎,1世市川左団次の明治期を代表する歌舞伎俳優3人の通称) の没後,本郷座時代と呼ばれる新派全盛期を迎えた。大正末期から昭和初期にかけて衰えたが,1930~31年頃瀬戸英一の『二筋道』連作で起死回生花柳章太郎らの新生新派,井上正夫の演劇道場,喜多村緑郎らの本流新派などに分れていたが,第2次世界大戦後,大同団結して劇団新派となる。喜多村,花柳,大矢市次郎,英太郎ら没後は水谷八重子が座頭となった。 79年の水谷の死後,水谷良重,波乃久里子らの女優中心となり,女形の芸を核とする特色も薄れ,加えて人気作家川口松太郎に匹敵するような新たな作者を得られず,かつてほどの勢力はない。

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世界大百科事典 第2版 「新派」の意味・わかりやすい解説

しんぱ【新派】

演劇ジャンルの名称。〈新派劇〉という言い方をすることも多い。もともとは歌舞伎を〈旧派〉と呼ぶ対照からきた名称だが,いつ,だれがそのように呼び始めたのかはよくわかっていない。しかし,今日われわれが〈新派〉と呼びならわしている演劇ジャンルの発端は次の二つの動きの中に見ることができる。一つは1888年12月3日,大阪の新町座で自由党壮士角藤定憲(すどうさだのり)が〈日本改良演劇〉を名乗り,《耐忍之書生貞操佳人(こらえのしよせいていそうのかじん)》などを上演し,また遅れて91年2月5日,堺の卯(う)の日座で川上音二郎が新演劇の旗揚げをした,いわゆる壮士芝居,書生芝居の運動である。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「新派」の解説

新派
しんぱ

新派劇とも。日本演劇の一部門。明治期には,演劇のみならず文学・美術の各分野で在来の表現形式を旧派とよび,新しい表現形式を求めるのを新派と称した。演劇では明治20年代の角藤(すどう)定憲・川上音二郎らの壮士芝居が新演劇とよばれ,一方伊井蓉峰(ようほう)らが男女合同演劇で話題となった。その後,高田実・喜多村緑郎(ろくろう)・河合武雄らも人気を集め,日清・日露両戦争をへて旧派(歌舞伎)に対する新派という呼称が定着し,明治末には小説の劇化によって最盛期を誇った。大正期に一時人気が衰えたが,昭和期に花柳章太郎の存在もあって盛り返し,水谷八重子の参加を得て,第2次大戦後も1960年代まで大きな位置を占めた。両優の没後も命脈を保ち,豊富な演目群は大きな財産といえる。

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世界大百科事典内の新派の言及

【鶴八鶴次郎】より

…大正中期の東京下町の人情を背景に,愛しあいながら結ばれない芸人の悲哀を描いた〈芸道物〉の代表作。作者の脚色で38年1月,明治座で花柳章太郎・水谷八重子主演により初演,以後新派の当り狂言となった。同年成瀬巳喜男監督により,長谷川一夫・山田五十鈴で映画化もされ人気を博した。…

【日本映画】より

…翌10年にはこれに福宝堂が加わって,4社による映画の輸入・製作・配給がいよいよ盛んになった。各社とも撮影所をもったため,風景や戦争や白瀬中尉の南極探検などの実写作品のほかに,劇映画が多くつくられるようになり,それらも歌舞伎劇や新派劇をほとんどそのまま実写したようなものではあったが,弁士の説明によるドラマ性の盛上げもあって,多大の観客を集め,そのなかから最初のスター尾上松之助を生み出すとともに,日本映画の主流は実写作品から劇映画へと移っていった。
【牧野省三と日活――映画企業の始まり】

[松之助映画のブーム]
 1912年,吉沢商店,横田商会,Mパテー商会,福宝堂の4社が合併して,日本活動写真株式会社(日活)が誕生した。…

【花柳章太郎】より

…新派俳優。本名青山章太郎。…

※「新派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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