日本大百科全書(ニッポニカ) 「方硫カドミウム鉱」の意味・わかりやすい解説
方硫カドミウム鉱
ほうりゅうかどみうむこう
hawleyite
カドミウムの単硫化物。六方晶系の硫カドミウム鉱と同質異像関係にあり、本鉱は閃亜鉛鉱(せんあえんこう)のカドミウム置換体に、硫カドミウム鉱はウルツ鉱のカドミウム置換体に相当する。ごくまれであるが、ウルツ鉱との中間物も存在する。閃亜鉛鉱系を形成する。自形は未報告。これまで知られたものはすべて粉末状あるいは不定形集合である。
各種亜鉛鉱床、あるいは他種の元素の鉱床でも、随伴的に閃亜鉛鉱を含む鉱床でその分解物として産し、あるいは地表付近の循環水によって輸送されたと思われる産状、すなわち割れ目の壁面上などに着生する。日本では岐阜県恵那(えな)市河合鉱山(閉山)のタングステン鉱床に伴われる閃亜鉛鉱の分解物として産する。なお、共存する閃亜鉛鉱はほとんど例外なく比較的鉄分に富む色の黒いものである。
同定はカドミウムイエローの粉末状物質。硫カドミウム鉱とは肉眼的に識別できない。英名はカナダ、キングストンにあるクイーンズ大学の教授であったジェイムズ・エドウィン・ホーリーJames Edwin Hawley(1897―1965)にちなむ。
[加藤 昭]