日中漁業協定
にっちゅうぎょぎょうきょうてい
1972年(昭和47)の日中国交正常化に伴い、それ以前の民間漁業協定にかわる「日本と中華人民共和国との間の漁業に関する協定」(日中漁業協定)が75年12月に締結された。この日中漁業協定は、適用水域を、中国が渤海(ぼっかい)入口に設定している「軍事警戒ライン」および中国沿岸に設定している「機船底引網禁止ライン」以東で、また台湾付近の「軍事作戦ライン」以北の黄海・東シナ海の水域(領海を除く)とし、違反に対して旗国が管轄権を有すること、日中漁業委員会の設置等を定め、同協定付属書Ⅰで、休漁区・保護区の設定、漁船の統数(定置網の一つである、建て網を数える単位)、集魚灯の光度、体長、網目の制限による規制措置を定め、Ⅱでは避難港等を規定した。
1997年(平成9)に署名された「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」(日中漁業協定)は、適用水域を日本の排他的経済水域と中国の排他的経済水域とし、規制は沿岸国が取締り権をもつとした。しかし北緯30度40分から27度の海域は、両国から52海里沖合いまでの水域を除いて暫定水域として共同管理し(取締りは旗国)、北緯27度以南の一定海域は従前の漁業秩序を維持する(取締りは旗国)こととされた。2000年2月に北京(ペキン)で開かれた日中閣僚協議で、暫定水域の北側(北緯30度40分以北)で相互に許可なく操業することができる海域の東端を東経127度30分、西端を124度45分とすること、2000年、2001年の東シナ海の排他的経済水域における相手国船の操業隻数、協定発効を2000年6月1日とすること、で合意した。
[水上千之]
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「日中漁業協定」の意味・わかりやすい解説
日中漁業協定【にっちゅうぎょぎょうきょうてい】
北緯27°以北の東シナ海,黄海での漁業に関する日中両国の協定。中国沿岸の底引禁止区域に沿い共同漁区を設け,網目制限や海難救助等も協定。1955年民間協定として初締結。1958年長崎国旗事件を機に中国が破棄。1963年再締結され,1975年政府間協定として発効。新たに漁船の馬力制限が設けられ,高性能漁船を排除するなどの操業規則,休漁区の設定,海難救助,緊急避難措置などが取り決められた。なお,日中両国間は200カイリ排他的経済水域について協議を進め,1997年11月,同問題を棚上げし東シナ海の一部を共同で管理する暫定措置水域を設ける漁業協定に調印した。
→関連項目漁業
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知恵蔵
「日中漁業協定」の解説
日中漁業協定
1997年11月に調印、2000年6月に発効した協定。正式名称は「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」。主な内容は、(1)両国の排他的経済水域(EEZ)は沿岸国主義による相互許可入漁とし、沿岸国が相手国の操業条件や漁獲割当量などを決め取り締まる、(2)尖閣諸島の領有権問題が絡むEEZの境界画定交渉は継続するが、画定までの暫定的措置として、北緯30度40分から北緯27度の間で、東西が両国から52カイリにあたる線に囲まれた東シナ海の水域を、暫定水域として両国で共同規制措置を導入する、(3)暫定規制水域の北側に相手国の許可なしに操業できる中間水域を定める、(4)暫定水域と中間水域の資源管理措置は日中漁業共同委員会を設置し引き続き協議する、というもの。
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にっちゅうぎょぎょうきょうてい【日中漁業協定】
1975年日本国政府と中華人民共和国政府との間で締結された,漁業資源の保存とその合理的利用および安全操業等に関する協定。中国沿岸,東海(東シナ海),黄海は太平洋戦争以前から中国を基地とする日本の機船底引網漁業が行われ,戦後も西日本の同漁業にとって主要漁場として注目されていた。太平洋戦争の敗戦後マッカーサー・ライン内操業に限定された日本漁業は,サンフランシスコ講和条約によってマ・ラインが撤廃され,以後多数漁船の出漁が行われたが,中国による銃撃事件が頻発した。
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日中漁業協定
にっちゅうぎょぎょうきょうてい
東シナ海,黄海における漁業の安全操業と資源保護を目的に,1975年日本,中国両国政府間に結ばれた協定。この協定は,55年に日中漁業協議会と中国漁業協会との間に締結された民間協定を 72年の日中共同声明に従って,新たに政府間の実務協定としたもの。協定は,対象水域,資源保護のための共同漁業規則,安全操業の確保,違反漁船の取締りなどについて規定している。条約の有効期間は3年で,78年 12月,当初の有効期限を迎えた。このため同月日中漁業共同委員会臨時会議が開催され,協定の自動延長が決められ,協定付属書が修正された。
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