早稲(読み)ワセ

デジタル大辞泉 「早稲」の意味・読み・例文・類語

わせ【早稲/早生】

(早稲)早くに成熟する品種の稲。8月に穂が出て9月には刈りとられる。 秋》「―の香や分け入る右は有磯海芭蕉」→晩稲おくて中手
早生同種作物の中で早く成熟するもの。「―のミカン
[類語]早生そうせい中手晩稲おくて晩生ばんせい

わさ【早稲/早】

《「わせ」の交替形》他の名詞の上に付いて複合語をつくり、早熟の稲、または、早熟の意を表す。「―田」「―瓜」「―物」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「早稲」の意味・読み・例文・類語

わせ【早稲・早生】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「わさ」の変化した語 )
  2. ( 早稲 ) 稲の品種のうちで早く成熟するもの。また、その米。わせいね。わせよね。⇔晩稲(おくて)中稲(なかて)。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「少女らに行相の速稲(わせ)を刈る時に成りにけらしも萩の花咲く」(出典:万葉集(8C後)一〇・二一一七)
  3. ( 「早生」と書くことが多い ) 一般に、他の同種のものより生長が早いこと。普通より早熟なこと。また、そのもの。穀物や果物などについていう。転じて、早熟な子どものたとえ。⇔奥手(おくて)中手(なかて)
    1. [初出の実例]「花に約きては先(ワセに)(さ)く花中(なかてに)披く花後(おくてに)披く花有り」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
    2. 「そろそろと歩む事、あまりの早稲(ワセ)なりと、人々舌を巻きて驚きし由」(出典:今弁慶(1891)〈江見水蔭発端)

早稲の語誌

「万葉集」では仮名書き例は「可豆思加和世」〔三三八六〕のみで、他は「速稲」「早稲」をワセと訓み、「早田」「早芽子」「早穂」をワサダ、ワサハギ、ワサホと訓んでいる。なお「正倉院文書」に見える「和左々酒」もこれらと関係があり、複合語の一要素となっている。「わさごめ」「わさなへ」などの語も後世見られ、「わせ」「わさ」のいずれの形を原形とするかは決しがたいが、単独形としては「わせ」であろう。


わさ【早稲・早】

  1. 〘 名詞 〙わせ(早稲)」のこと。他の語に冠して複合語を作り、植物などが早く熟する意を表わす。「わさ飯(いい)」「わさ瓜」「わさ米」「わさ酒」「わさ物」など。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「早稲」の解説

早稲 (ワセ・ワセイネ)

植物。早期種子の熟す稲の品種の類称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の早稲の言及

【早田】より

…早熟の稲を植えた田をいう。早稲田(わせだ)のこと。〈はやた〉ともいう。…

【大唐米】より

…〈たいとうごめ〉ともいい,太米(たいまい),秈(とうぼし),赤米(あかごめ)などとも称した。インドシナ半島の南東部にある占城(チャンパ)原産の早稲(わせ)の種類。11世紀の初頭,北宋政府により長江(揚子江)沿岸地帯に移植され,晩稲(おくて)との組合せで,この地方に二毛作による豊作をもたらしたという。…

【早米】より

…早熟の稲すなわち早稲(わせ),または,その早稲を玄米などにして領主に一定期限内に年貢として納入したものをいう。〈そうまい〉とも読む。…

※「早稲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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