明く(読み)アク

デジタル大辞泉 「明く」の意味・読み・例文・類語

あ・く【明く/開く/空く】

[動カ五(四)]
(開く)
㋐隔て・仕切り・覆いなどが、動かされて除かれる。閉じていたものがひらく。「窓が―・く」「かぎが―・かない」⇔閉まる
㋑営業が始まる。営業が行われる。「店は何時まで―・いていますか」⇔閉まる
㋒開票がはじまる。「票が―・く」
(明く)
衣服の襟などが、ひらかれている。「この服は襟ぐりが―・きすぎている」
㋑閉じていた目や口がひらいた状態になる。「小犬の目が―・く」
物忌みや契約などの、一定の期間が終わる。「喪が―・く」「年季が―・く」
(空く)今までそこを占めていたもの、ふさいでいたものが、除かれたり、なくなったりする。
㋐穴ができる。「胃壁に穴が―・く」
㋑そこにいた者やあった物がなくなり、からになる。「―・いている部屋はありますか」「席が―・く」
㋒空間・空白・余地ができる。間隔が広がる。「行間が―・いている」
㋓器の中のものが全部使われてからになる。「瓶が―・く」「―・いた銚子をかたづける」
㋔仕事が終わり、暇になってゆとりができる。「からだが―・く」「手が―・く」
㋕用が済んで、当面使わなくなる。「―・いたら貸してください」
欠員になる。「課長のポストが―・く」
(開く)あける。「口を―・く」
[補説]2㋑は「開く」、3は「明く」とも書く。
[動カ下二]あける」の文語形
[下接句]穴のあくほど片目が明く地獄のかまふたも開く手が空く手が空けば口が開く幕が開く水が空くらちが明く
[類語](1ひら開ける始める起こす創始する開業する始業する/(3すく減る欠けるぽっかりぱっくりぱくりぽかりあんぐりあんごりけるけっぴろげ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「明く」の意味・読み・例文・類語

あ・く【明・開・空】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. 隔てや覆いなどが、とり除かれる。閉じていたものが開く。
      1. [初出の実例]「たてこめたるところの戸、すなはちただあきにあきぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. そこを占めていたものがなくなる。
      1. (イ) 詰まっているものが除かれたり間が広がったりして、空間ができる。
        1. [初出の実例]「あける隙もなくまもらす」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「穴のあきたる中より出づる水の」(出典:更級日記(1059頃))
      2. (ロ) 中にはいっているものがなくなる。からになる。
        1. [初出の実例]「ウツワモノノ コトゴトク aitauo(アイタヲ) ミテ」(出典:天草本伊曾保(1593)蜜作りの事)
      3. (ハ) 官職、地位などに欠員ができる。
        1. [初出の実例]「ないしのかみあかば、なにがしこそ望まんと思ふを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
      4. (ニ) 収入より支出が多くなる。欠損になる。
        1. [初出の実例]「二度の節季の帳まへたび毎に三五の十八はらりと違て次第ましの不足、積れば大きに虚(アク)ところありて」(出典:浮世草子懐硯(1687)二)
    3. 差し止められていたことが、してよいことになる。解禁になる。→方(かた)あく
      1. [初出の実例]「方あきなばこそは、まゐりくべかなれと思ふに」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    4. ある一定の期間が終わりになる。
      1. [初出の実例]「ものいみも、けふぞあくらんと思ふ日なれば」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    5. ( 時間、場所、品物などについて用いる ) 使われない状態になる。
      1. (イ) 仕事をしないでいられる時間ができる。
        1. [初出の実例]「ヒマガ aqu(アク)〈訳〉時間を持つ。または、場所があく」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. (ロ) 使われていない状態になる。必要でなくなる。
        1. [初出の実例]「うつくしゐのが二三人、あいてけへりやしたが、すぐにでやした」(出典:洒落本・仕懸文庫(1791)二)
    6. ( 入り口が開く意から ) 人が出入りできるようになる。多く、商店などが営業を始める、また、営業していることにいう。→口があく
      1. [初出の実例]「ヲヤままだ明(アカ)ね、明ね、明ねか。あ、あひやね(朝寝)なべやぼ(べらほう)だぜ」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)前)
    7. 壁や建物などにさえぎられないで、外が見える。また、見通しのいい状態になる。
      1. [初出の実例]「其処(そこ)は南と西の開(ア)いた広い座敷だったが」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉兄)
    8. ( 「らちがあく」の意 ) 物事がうまくいく。かたがつく。→あかぬあかん
      1. [初出の実例]「大かたは八つの鐘がなれども、あかずすぐにはかへらず」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)二)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙 ふさいでいるものや閉じているものなどを開く。
    1. [初出の実例]「メヲ aqumo(アクモ) フサグモ コチノ ママデ アル」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙あける(明)[ 一 ]
  4. [ 4 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙あける(明)[ 二 ]

明くの語誌

この語は、下二段自動詞「あく(明)(→下一段「あける」)」と同源と考えられているので一項で扱ったが、「明く」は明るくなる、「開(空)く」は閉じているものが開いてすきまができる、が原義であること、また、前者は四段他動詞「あかす」と対になるのに対し、後者は下二段他動詞「あく(→下一段「あける」)」と対になる点などによってこれを疑問視するむきもある。確かに「あく(明)」は「くる(暮)」と対義語であり、これは「あか(赤)」と「くろ(黒)」との対に対応しており、さらに明度にかかわる「あかる」「あかるし」「あきらか」「あきらけし」「あきらむ」などと関係する点でも、「開(空)く」とは差があるようである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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