明ける(読み)アケル

デジタル大辞泉 「明ける」の意味・読み・例文・類語

あ・ける【明ける/開ける/空ける】

[動カ下一][文]あ・く[カ下二]
(明ける)あるひと続きの時間・期間・状態が終わって、次の時間・期間・状態になる。
㋐朝になる。「夜が―・ける」⇔暮れる
㋑年が改まる。「年が―・ける」⇔暮れる
㋒ある期間が終わる。「喪が―・ける」「梅雨つゆが―・ける」
(空ける)今までそこを占めていたもの、ふさいでいたものを、取り除いたり、なくしたりする。
㋐穴をつくる。「きりで穴を―・ける」
㋑使っていた場所から他へ移り、そのまま使わないでおく。あったものを出し、新たに入れないで、からの状態にする。「一〇時までに部屋を―・けてください」
㋒すいている空間や空白をつくる。間隔を置いたり、広げたりする。「間を―・ける」「一行―・けて書く」
㋓器の中のものを出したり、他の器や他の場所へ移したり、また、使い尽くしたりしてからにする。「水筒の水をバケツに―・ける」「大ジョッキを―・ける」
㋔ある時間を、拘束なしに使えるようにしておく。暇な時間をつくる。「その日は君のために―・けておく」
留守にする。「旅行で家を―・ける」
(開ける)
㋐隔てや仕切りになっているものを取り除く。閉じていたものを開く。「窓を―・ける」「封を―・ける」「かぎを―・ける」「目を―・ける」⇔閉める
㋑営業を始める。営業を行う。「午前一〇時に店を―・ける」⇔閉める
[補説]2は「明ける」とも書く。
[用法]あける・ひらく――「窓を開ける(開く)」は相通じて用いられる。◇「開ける」は空間をふさいでいる仕切りや覆いなどを取り除く意で、「ふたを開ける」「かばんを開ける」のように用いる。◇「開く」は「包みを開く」「本を開く」のように、重ねて結び合わせたり、折り畳んだりしてあるものを広げて、中が見えるようにすること。◇「開く」はまた、「運命を開く」「心を開く」など物事をよい方向に進めていこうとする意で比喩的に用いられることもある。◇「口を開ける」「目を開ける」は、上下の唇やまぶたを離し広げることであるが、また「話しはじめる」「自覚する、知識を得る」の意にもなる。また、「道をあける」は邪魔になるものを除いて通れるようにすることだが、「道を開く」は新しく道を作ることであり、さらに「問題解決への道を開く」のようにも用いられる。
[下接句]穴をあける風穴かざあなを開ける手を空ける泣く子も目を年季が明けるふたを開ける水をあける夜も日も明けないらちを明ける
[類語](2ぽっかりぱっくりぱくりぽかりあんぐりあんごりけっぴろげ/(3ひら始める起こす創始する開業する始業する

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「明ける」の意味・読み・例文・類語

あ・ける【明・開・空】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]あ・く 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙 物事の、ある期間が終わって、次の新しい状態になる。
    1. 夜が終わって朝になる。明るくなる。→あくる
      1. [初出の実例]「愛(は)しけくも いまだ言はずて 阿開(アケ)にけり 我妹(わぎも)」(出典日本書紀(720)継体七年・歌謡)
      2. 「暮るとあくと目かれぬものを梅花いつの人まにうつろひぬらん〈紀貫之〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・四五)
    2. 時が経過して、年月日や季節があらたになる。次の年になる。→あけてあくる
      1. [初出の実例]「あくる年の春より」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. 「式部卿宮、あけん年ぞ五十になり給ひける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
    3. ある一定の拘束を伴う期間が終わりになる。満期になる。
      1. [初出の実例]「親討たれぬれば孝養(けうやう)し、忌(いみ)あけて寄せ」(出典:平家物語(13C前)五)
      2. 「誰が年(ねん)明けたと足袋屋聞て見る」(出典:雑俳・柳多留‐七二(1820))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]あ・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
    1. へだてや、おおいなど、ふさいであるものを除く。閉じてあるものを開く。
      1. [初出の実例]「わが思ひを人に知るれや玉匣(たまくしげ)開き阿気(アケ)つと夢にし見ゆる」(出典:万葉集(8C後)四・五九一)
      2. 「この戸あけたまへとたたきけれど」(出典:伊勢物語(10C前)二四)
    2. そこを占めているものを取り除く。
      1. (イ) ふさいでいるものを除いたり、間を広げたりして空間や時間の間隔をつくる。「四時間以上あけて服用のこと」
        1. [初出の実例]「心なし、道あけ侍りなんよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
        2. 「此櫃を、刀のさきして、みそかにあなをあけて」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一〇)
      2. (ロ) 中に入っているものや人を外に出す。出してからにする。また、器の中のものを他に移す。
        1. [初出の実例]「ウツワモノヲ aquru(アクル)〈訳〉容器をからにする」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        2. 「此方の家さへあけてくださるれば」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)四)
      3. (ハ) 外出して留守にする。
        1. [初出の実例]「此間からチョイと明けた様だが余り女房のに心配させちゃ不可ねへぜ」(出典:落語・三軒長屋(1894)〈四代目橘家円喬〉)
      4. (ニ) 隔てを置く。また、間隔を広げる。
        1. [初出の実例]「彼女はあらかじめそれを知ってゐるかのやうに、先に距離をあけてしまふのだ」(出典:秘密(1955)〈安岡章太郎〉)
    3. 使わないようにする。
      1. (イ) 仕事をしないでいられる時間をつくる。
        1. [初出の実例]「ヒマヲ aquru(アクル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        2. 「今日は一日空(ア)けてあるんです」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉七)
      2. (ロ) 使わない状態のままにする。
        1. [初出の実例]「座敷を明けて置いても無駄だから」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉七)
    4. 商売、芝居などを始める。公開する。
      1. [初出の実例]「もうお客が来て休む時分だのに、お見世も明(アケ)なひで」(出典:人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四)
      2. 「春匆々あけるって芝居をそんなことでどうするんだ」(出典:春泥(1928)〈久保田万太郎〉むほん)
    5. ( 心の中が見えるようにひらく意から ) 隠さないで話す。うちあける。
      1. [初出の実例]「例へ心にどう思うても、明(ア)けて云はぬが廓の花」(出典:歌舞伎傾情吾嬬鑑(1788)序幕)
    6. ( 「らちをあける」の形で ) 物事がうまく行く方法などを見つける。
      1. [初出の実例]「ラチヲ aquru(アクル)〈訳〉道、方法をあきらかにする、またはひらく」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    7. 芸妓などが客席から帰る意の花柳界の語。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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