精選版 日本国語大辞典 「星雲」の意味・読み・例文・類語
せい‐うん【星雲】
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銀河系内にあるガスとダスト(塵(ちり))からなる星間物質が、さまざまな原因で光って見えたり、逆に光を吸収して暗く見えたりするもの。双眼鏡や小型望遠鏡で見ると、星のような点光源とは違ってぼんやりと広がって見える。歴史的な経緯から、単に「星雲」とよばれてきたが、あいまいさが残るので、現在では、各種の星雲の性質を反映した分類ごとにつけられた名称が用いられることが多い。全体を総称する場合には、ガス星雲ということもある。
[岡村定矩]
天体望遠鏡の性能が悪かった時代には、はっきり星とわかる点光源以外の、ぼんやりと淡く見える天体をすべて星雲とよんでいた。星の集まりは星団とよばれていたが、実際には星団であってもぼんやりとしか見えなかったものは星雲とされることもあった。このようなぼんやりとした「星雲」は、彗星(すいせい)(ほうき星)と紛らわしいので、当時のコメットハンターには困りものだった。フランスのコメットハンターであったC・メシエは、1771年から1784年にかけて、彗星と紛らわしいこのような天体103個を収録した『メシエ・カタログ』を出版した。このカタログに掲載された天体はメシエ天体とよばれ、カタログ番号の頭に記号Mをつけて、M31などとよばれる。
この後1856年には、F・W・ハーシェルの息子のJ・F・W・ハーシェルが、約5000個の星雲と星団を含むGeneral Catalogue『一般カタログ』を出版した。ドライヤーはこれを増補改訂して、1888年に7840天体を含むNew General Catalogue of Nebulae and Clusters of Stars『NGCカタログ』を編纂(へんさん)し、さらに、5836天体を含む二つのIndex Catalogue『ICカタログ』を1895年と1905年に出版した。これらのカタログにある天体は、カタログ番号の頭にそれぞれNGCとICをつけて、NGC224やIC10などのようによばれる。
その後、NGCカタログやICカタログで星雲と分類された天体には、天球上の分布に大きな違いのある二種類のものがあることがわかった。一つは天の川に沿って分布し、もう一つは天の川を避けるように分布していた。性能のよい望遠鏡で見ると、後者の中には渦巻き模様が見られるものがあり、それらは渦巻星雲とよばれるようになった。
20世紀初頭になっても、宇宙の大きさとその中での太陽の位置はまだよくわかっておらず、渦巻星雲の正体もわかっていなかった。天文学者の考えには大きく二つのものがあった。天の川は多数の恒星の集団であることは共通していたが、一つの考えでは、太陽はその集団の端にあり、渦巻星雲はその集団の中で星がガスから誕生しているようすであるとした。もう一つの考えでは、太陽は集団の中心近くにあり、その外にも同じような規模の恒星の大集団(島宇宙)が多数あって、渦巻星雲はそれらの姿であるとした。
1920年に、これら二つの考え方の代表者であるシャプリーとカーチスHeber Doust Curtis(1872―1942)が、アメリカ国立科学院でそれぞれの主張を戦わせる公開討論会が行われた。これは後に、The Great Debate(大論争)とよばれるようになった。ここでは決着がつかなかったが、1923年にハッブルが渦巻星雲(M31)にセファイドとよばれる変光星を発見して論争の決着がついた。セファイドが見つかると距離を測ることができ、その結果M31は天の川恒星集団のはるか外にある島宇宙であることがわかった。
島宇宙は銀河系外星雲とよばれた時期もあるが現在では銀河(galaxy)とよばれている。天の川恒星集団も一つの銀河であるが、われわれの住む銀河ということで、銀河系とよんで区別している。これに対して、天の川に沿って分布する星雲は、銀河系内の星間物質が光るものである。これらは銀河系外星雲に対して銀河系内星雲とよばれた時期もあるが、現在ではあまり使われない。
[岡村定矩]
散光星雲あるいはガス星雲とよばれるものには、反射星雲と発光星雲がある。反射星雲は、ガスに混じっているダストが近くの星からの光を反射・散乱して光っているものである。発光星雲はHⅡ領域(あるいは電離水素領域)ともよばれ、水素ガスが高温度星から放たれる紫外線で熱せられて発光しているものである。低温度のガスが濃く集まっているところは、ガスに混じっている濃いダストが背後から来る光を遮るので、空の上で周辺より暗く(黒く)見える。これは暗黒星雲とよばれる。反射星雲、発光星雲(HⅡ領域)、および暗黒星雲は、星間物質の分布状態とそれを照らす星との関係によって、星間物質が可視光で異なった見え方をするものに対してつけられた名前であるので、星生成領域ではそれらが複雑に絡み合って共存しているようすがよく見られる。
惑星状星雲は、低質量星の進化の最終段階で星から噴き出されたガスが中心の高温度星からの紫外線に照らされて光るものである。また、大質量星の進化の最後に起こる超新星爆発で吹き飛ばされたガスが光っているものは超新星残骸とよばれる。
それぞれの星雲についてのより詳しい説明は、当該項目を参照されたい。
[岡村定矩]
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(土佐誠 東北大学教授 / 2007年)
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…その多くは我々の銀河系の外側,はるか遠方にあるために,比較的近距離のマゼラン銀河やアンドロメダ銀河でも,肉眼や小望遠鏡に淡い雲のようにしか映らない。かつてはその見かけによって〈星雲nebula〉として一括されていたが,1925年にE.ハッブルによって〈アンドロメダ星雲〉を含む3個の〈星雲〉にセファイド型変光星が同定され,その距離が推算されるに及んで,星雲の一部がわれわれの太陽系を包む巨大な恒星の集りである銀河系の外にあって,銀河系と同等の規模をもつことが明らかになった。このため,銀河系外星雲extragalactic nebulaと呼んで輝線星雲,散光星雲,惑星状星雲などの銀河系内星雲と区別される。…
…1光年は約9.5兆km)。 空には惑星や恒星のほかに,星雲と呼ばれるぼんやりしたかすかな天体が多数見られる。フランスでC.メシエが103個の星雲や星団の表を作成した(1781)のに続き,ハーシェル父子をはじめ多くの観測者がさまざまな星雲表を発表した。…
…その多くは我々の銀河系の外側,はるか遠方にあるために,比較的近距離のマゼラン銀河やアンドロメダ銀河でも,肉眼や小望遠鏡に淡い雲のようにしか映らない。かつてはその見かけによって〈星雲nebula〉として一括されていたが,1925年にE.ハッブルによって〈アンドロメダ星雲〉を含む3個の〈星雲〉にセファイド型変光星が同定され,その距離が推算されるに及んで,星雲の一部がわれわれの太陽系を包む巨大な恒星の集りである銀河系の外にあって,銀河系と同等の規模をもつことが明らかになった。このため,銀河系外星雲extragalactic nebulaと呼んで輝線星雲,散光星雲,惑星状星雲などの銀河系内星雲と区別される。…
…こうして生まれたばかりの星を原始星という。星間空間にあるガスと星間塵の雲は,星に照らされて散光星雲として見えたり,あるいは背後の星を隠して暗黒星雲として観測される。とくに密度の高いガス雲の内部では,水素分子,一酸化炭素や,より複雑な有機分子が形成されていて,電波でわかる雲として観測される。…
※「星雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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