の‐れん【暖簾】
〘名〙 (「のんれん」「のうれん」の変化したもの)
① (
もと、禅家で寒さを防ぐため簾
(す)の隙間をおおう布のと
ばりをいった)
日除けなどのため掛けつるす布。おもに
商家で
紺色の木綿地に
屋号などを染め抜いて
軒先に掛けた。また、
屋内の出
入口や部屋の仕切りに垂らす短い布。のうれん。のんれん。
※
日葡辞書(1603‐04)「Norenuo
(ノレンヲ) カクル」
② 一定の店舗の
多年の営業活動から生ずる
無形の経済的利益。また、その店の伝統や
信用。屋号・商号・看板などによって表わされることが多い。
得意先または仕入先関係、営業上の
秘訣、販売の機会、経営の内部的組織など。老舗
(しにせ)。
※安愚楽鍋(1871‐72)〈
仮名垣魯文〉三「旦那から
のれんをもらって出店をひらくのだぜ」
④ 他
企業を
買収または合併するにあたって譲り受ける個々の資金の合計額を超過して支払われた額。
のう‐れん【暖簾】
〘名〙 (「のう」は「暖」の
唐宋音「のん」の変化したもの)
※
壒嚢鈔(1445‐46)七「禅家には不共
(ふくう)の名目多く侍り。〈略〉暖簾
(ノウレン) 布
レ垂也」
※御伽草子・御曹子島渡(室町末)「大王扇取りなをし、錦ののうれんかきあげて」
※
随筆・吉原失墜(1674)「かたち心ざま大形なる上らうも、ちいんなくなりぬれば、くさげなるのうれんにたちまじりて」
[補注]「暖」の
歴史的
かなづかいを「なう」とする説もあったが、唐宋音「のん」の変化とする説に従う。
のん‐れん【暖簾】
※
尺素往来(1439‐64)「為
二室内之飾
一暖簾
(のんれん)。暖席」
※浮世草子・好色一代男(1682)三「柿ぞめの暖簾(ノンレン)かけて女の一人暮せり」
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デジタル大辞泉
「暖簾」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
暖簾
のれん
(1) 一般には,商店が宣伝用などに掛ける屋号や商品名を記した布製の店印をいう。もとは禅寺で冬季の隙間風を防ぐために簾の間を覆った垂れ幕のこと。すでに平安・鎌倉時代の絵巻物などに,家の出入口に下げたものがみられ,幌(とばり)と呼ばれていた。これが室町時代末期から暖簾(垂れむしろの意)と呼ばれるようになった。埼玉県川越市の喜多院蔵『紙本著色職人尽絵』の畳師の絵に図柄を見ることができる。桃山時代頃から屋号を意味するものを書くようになり,江戸時代になると,紺色以外のものやいろいろな長さのものも用いられるようになり,さらには暖簾が商店の信用を表すシンボルともなった。
(2) 多年にわたる営業の継続によって商人が得る無形の経済的利益。老舗(しにせ)ともいい,グッドウィル goodwillに相当する。その内容は得意先関係,仕入先関係,営業の名声,信用,営業上の秘訣などで,はっきりした権利とはいえないが,経済的価値のある事実関係である。会社法は暖簾について,組織再編行為において存続会社や事業の譲受会社などが支払った価格と,取得した資産および引き受けた負債に配分された額を超過した場合に計上することのできる差額概念ととらえている(会社計算規則11)。暖簾は 20年以内の合理的な方法で規則的に償却すべきものとされる(企業結合会計基準32項)。
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暖簾【のれん】
軒先につるして日よけや目隠しとした布の帳(とばり)。元来は禅家で冬の寒さを防ぐため簾(す)のすき間をおおった布。近世に普及し,屋号を染めぬいて商家の目印とした。これより転じて店の信用や営業権(企業権)を意味する言葉となり,番頭を務めあげた者が主家の屋号を分与され,別家して同業を営むことを暖簾分けといった。今日,営業において財産的価値のある事実関係(営業上の秘訣(ひけつ),得意先,名声等を含む)は暖簾と呼ばれ,営業とともに譲渡され,その侵害は不法行為となる。商法改正(1962年)で,暖簾を有償取得した場合は貸借対照表の資産の部に計上しうるに至った。
→関連項目看板|資産
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のれん【暖簾】
出入口などにかける帷(かたびら)。古くは幌(とばり)と呼び,室町時代から暖簾と変わったが,当時はノウレンとかナンレンといった。〈暖簾〉は禅林用語で,禅堂の入口に夏期かける涼簾に対し,冬期寒さを防ぐために簾といっしょにかける帷をいった。 暖簾は外暖簾と内暖簾とに分けられる。外暖簾は店暖簾ともいって日除けと看板を兼ね,店などで軒先や通りにわにかけるもので,古くは平安時代末ごろからあったと思われ,中世の絵巻物に描かれた町家にも散見する。
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のれん【暖簾】
➀商店で、商標や屋号などを染め抜き、軒先に日よけ用に吊るしておく布。
➁室内の目隠し・間仕切り・装飾用に出入り口などにたらす布。◆もとは禅寺で、冬の寒さを防ぐため、簾(すだれ)のすき間をおおうために重ねて用いた布をいった。
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暖簾
暖簾とは歴史や実績、顧客の愛顧などに裏打ちされた企業の信用のことをいう。あるいは株式時価総額と純資産額との差額に基づく無形資産価値のことをいう。
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暖簾
日本のポピュラー音楽。歌は男性演歌歌手、五木ひろし。1989年発売。作詞・作曲:永井龍雲。
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世界大百科事典内の暖簾の言及
【暖簾】より
…出入口などにかける帷(かたびら)。古くは幌(とばり)と呼び,室町時代から暖簾と変わったが,当時はノウレンとかナンレンといった。〈暖簾〉は禅林用語で,禅堂の入口に夏期かける涼簾に対し,冬期寒さを防ぐために簾といっしょにかける帷をいった。…
【暖簾】より
…出入口などにかける帷(かたびら)。古くは幌(とばり)と呼び,室町時代から暖簾と変わったが,当時はノウレンとかナンレンといった。〈暖簾〉は禅林用語で,禅堂の入口に夏期かける涼簾に対し,冬期寒さを防ぐために簾といっしょにかける帷をいった。…
【看板】より
…最も一般的な店の標示で,近世から現代にかけて,日本・中国・欧米諸国を主とし,広く全世界各地で発達したものである。日本では看板,中国では招牌(チヤオパイ)・望子(ワンズ)または幌子(ホワンズ)と呼ばれ,英語ではサインボードsignboard,あるいはサインsign,フランス語ではアンセーニュenseigne,ドイツ語ではツァイヘンZeichenと呼ばれている。看板は広告塔・はり紙などとともに屋外広告物に含まれ,常時または一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものとされている。…
【資産】より
…一般に,特定の実体によって所有されていて,その実体にとって有用性を有する物財および権利で貨幣価値のあるものをいう。現金は典型的な資産である。したがってまた現金への請求権(債権)も資産であり,さらに,現金と交換される物財,すなわち購入される物財も資産である。物財のみならず,地上権,借地権,特許権,商標権等の財産上の権利もまた資産である。会計的には,資産は特定の企業が有する現金,および現金支出の結果であって,将来において収益をもたらす潜在的能力をもつ物財および権利であり,企業総資本の具体的運用形態を表すものである。…
【のれん分け(暖簾分け)】より
…商家などで奉公人に別家を許すこと。17世紀以降,商人や職人の家屋の軒先に屋号,商品,商標などをデザイン化した暖簾を出すのが一般的になった。商人や職人が暖簾を重視するようになったのは,家業という特定の営業権や技術をもつ経営が成立していったことによる。…
※「暖簾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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