地球の公転に基づいて測られる時系。地球の自転に基づく自転時に対して公転時といわれる。1952年国際天文学連合第8回総会で、地球の公転周期の恒星年をもって暦表時を定義したが、1955年の同総会は恒星年よりさらに基本的な意味をもつ太陽年を採用することにし、翌1956年の国際度量衡委員会第10回総会で暦表時の秒が時間の単位として採用された。暦表時は万有引力の法則に基づく天体力学が成り立つような時系であり、暦表時を使えば、太陽・月・惑星ほかの天体の位置は天体位置表の示す位置に観測されるはずであるが、実際には自転時である世界時によって観測するから、世界時と暦表時の差だけ天体の位置は違ってくる。暦表時と世界時のずれの修正値は、太陽の運行の観測から求めることは困難で、月の運行の観測から求められるが、この方法では時間がかかり、現在の用に役だたない。そのためセシウム原子標準の固有振動数が暦表時の1秒に対する値として定められており、原子時計が表示する原子時によって暦表時を代行させることができる。
[渡辺敏夫]
月,太陽,内惑星などの公転軌道上の位置の観測結果に,それらの天体暦に比べて奇妙な食違いのあることが大問題となったのは19世紀後半のころからである。その後20世紀半ば近くになってこの問題はすべて解明された。観測の時刻スケールであった世界時が地球自転速度変動によって一様性を欠くことが主因であった。結局,諸惑星に関する天体暦は正しかったことが立証された。ただ月の運動には,地球との間の潮汐結合を通してさらに別の要因がある。これらを考慮した新しい月の暦が作り直された。太陽の天体暦が正しければ,太陽の黄道上の位置を観測し,この結果をその天体暦に照らして,逆にその位置にあるべき時刻を決めることができる。これが暦表時,つまり天体暦を表す時刻システムである。別名天体力学時とも呼ばれる。太陽の黄道上の動きは遅く,したがってその位置の観測精度は悪い。そこでこの30倍近くも角速度の速い月の位置を観測し,これをその新しい月の暦に照らして暦表時を求める。これが現実にとられている観測方法である。1956年までつづいた平均太陽日による秒定義は,世界時の変動のため放棄され,この暦表時に基づく秒定義へ代わった。しかしこれも67年には現在のセシウム原子振動に基づく定義により置き換えられた。暦表時は理論的に一様な天文時ではあるが,現在は天体暦の時刻スケールだけに使われている。現用の〈セシウム秒〉はこの暦表時の秒に由来している。
執筆者:飯島 重孝
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