正称は,〈暴力行為等処罰ニ関スル法律〉という。集団による暴力行為および常習的暴力行為を重く処罰しようとする法律である。1926年公布。本法は,大正末期に混乱した世相を反映して博徒等による悪質な集団的暴力行為が多発したため,これに対処すべく,刑法典・警察犯処罰令を補充,強化する目的で制定されたものである。しかし,この法律の制定に際しては,反対論も存在していた。それは,この法律が,暴力団対策にだけでなく,労働運動・大衆運動を弾圧するためにも使われるのではないかという危惧から生ずるものであった。これに対して,立案にあたった当時の政府委員は,この法律にはそのような意図はまったくないと答えていた。しかしながら,実際には,この法律は小作争議や労働運動にも適用されてきた。昭和30年代に入り,集団的暴力行為が多発・広域化するようになり,それに対応するため,64年,本法は一部改正された。それは,本法の射程距離を延ばしかつ刑も重くするという内容であった。これに対しては,強い反対論があった。それは,この法律が労働運動や大衆運動にも適用されてきたとの事実を踏まえたもので,強大なものであった。このことが反映してか,この改正が実現するまでには3年の期間を必要とした。本法は3ヵ条と付則からなり,その処罰の対象とされているのは,集団的または常習的な暴行,脅迫,毀棄,面会強請,強談威迫,常習的傷害,銃砲刀剣類を用いた傷害,一定の集団,常習犯罪の実行に関する金品などの供与等である。
執筆者:大越 義久
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