書店(読み)しょてん

精選版 日本国語大辞典 「書店」の意味・読み・例文・類語

しょ‐てん【書店】

〘名〙 書物を売ったり、出版したりする店。本屋書肆(しょし)
随筆・秉燭譚(1729)四「近比書店にて」

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デジタル大辞泉 「書店」の意味・読み・例文・類語

しょ‐てん【書店】

書物を売る店。また、書物を出版する店。本屋。
[類語]本屋書房書林書肆

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「書店」の意味・わかりやすい解説

書店
しょてん

書籍、雑誌など出版物の小売業。本屋、書肆(しょし)ともいう。出版の長い歴史に比べて、小売専業の書店の発生は遅く、江戸末期である。江戸初期に誕生した版元(本屋、書肆)は、製作、卸、小売りを兼ねていたが、幕末から明治にかけて販売が独立・分離し、新規の卸専門業者や小売業者が誕生した。書店の役割が大きくなるのは明治中期以降である。売れ残り品返品自由の委託販売制、定価販売制の確立に伴って急増した。

[小林一博]

書店の現状

1985年(昭和60)、全国の書店数は二万数千店、うち日本書店商業組合連合会(日書連加盟は約1万3000店に達していたが、日本経済のバブル崩壊とともに中小書店の休・廃業が始まった。1989年(平成1)から2000年までの11年間の休・廃業店合計は、約1万店と推定されている(2000年4月現在の日書連加盟店は9406店)。一方この間、大規模小売店舗法の緩和、取次間のシェア競争、出店コストの低下などにより、大規模な売場面積をもつ店舗の出店が相次ぎ、大型店出店ブームを起こした。全国書店の出版物売上占有率は、1950年代までは90%以上を占有していたが、スタンド・ルート、生協ルート、訪問販売、コンビニエンス・ストア、宅配便業者の参入、インターネットでの注文・販売など新規販売ルートの多発によってシェアは低下中である。

 書店の取引の基本は、委託制と再販売価格維持契約(再販制)による定価販売制である。買切り品もあるが比率は低く、一部を除いて買切り品も返品される慣習がある。商品は出版社から取次会社経由で配本され、粗利益率は通常、定価の18~25%。価格競争、仕入れリスクはほとんどないが、大量販売してもスケール・メリットは少ない。反面、経営が安定しているため新規参入しやすい。1970年代後半から郊外型書店、大規模書店の増加により、書店全体の売場面積は、中小書店の休・廃業続出にもかかわらず増大が続いている。通産省(現経済産業省)の統計によると、全国書店の売場面積合計は1972年(昭和47)の約24万坪(79万8423平方メートル)が、97年(平成9)には約95万坪(315万1692平方メートル)に拡大した。2000年秋には1店舗で約2500坪の売場をもつ超大型店も誕生した。それでも、出版点数と発行量増加への対応は十分でないといわれている。しかも、書店は書籍・雑誌以外に、ビデオ(レンタルおよび販売)、CD、ゲーム、文具などの関連商品を扱う新しい業態の複合店が増えている。

[小林一博]

インターネット書店

また、インターネット時代に入って、書店はさらに大きく変貌(へんぼう)しようとしている。1975年(昭和50)ごろから問題化しながら改善が遅れ、客の不満が集中していた注文品調達の遅れが、インターネットの発達によって解決されそうになってきたのである。それらの書店は、インターネット上で受注・販売するもので、オンライン書店、インターネット書店、バーチャル書店、サイバー書店などともよばれているが、いずれも1995年(平成7)に開設されたアメリカのネット通販最大手アマゾン・ドット・コムAmazon.comの急成長に刺激されたものである。まず、洋書輸入・販売の大手、丸善と紀伊國屋書店がオンライン書店を開設。以後、八重洲ブックセンター、三省堂、文教堂、ジュンク堂、旭屋書店などが続いた。1986年(昭和61)から無店舗書店として成長を続けてきた宅配業のヤマト運輸(クロネコヤマト)と取次の栗田(くりた)出版販売との合弁によるブックサービスも、96年にオンライン書店を開設した。また取次各社も、単独、あるいは数社合弁で、e-hon(トーハン)、本やタウン(日販)、本の問屋さん(大阪屋)などを設立している。そのほかに、トーハン、ソフトバンク、セブン‐イレブン・ジャパン、ヤフーなどの出資による「イー・ショッピング・ブックス」、図書館流通センター、日経BP、アスクル、富士通、日本経済新聞社、電通などによる「ブックワン」、文教堂、オリコン、角川書店、講談社、マイクロソフト、トーハンなどによる「ジェイブック」など多数のオンライン書店が誕生した。また、2000年6月、ドイツの大手メディア企業ベルテルスマンの子会社BOLと日販ほかとの提携による「ビー・オー・エル・ジャパン」が活動を始め、同年11月には大阪屋との提携によりアマゾン・ドット・コムも日本市場に参入した。2000年現在、一部を除いてその大半は投資とサービス拡充の段階で、採算軌道に乗るのは時間がかかるであろう、との指摘もあるが、オンライン書店は今後とも拡大を続けるものとみられる。

 なお、日書連が提唱してきた書店のSA(ストア・オートメーション)化は、1983年(昭和58)にスタートし、取次各社のオンライン・システムも84年に着手されているが、2000年時点で全国の書店を網羅するには至っていない。

[小林一博]

『清水英夫・金平聖之助・小林一博著『書店』(教育社新書)』『能勢仁著『本大好き人間のブックストア経営の本』(1985・中経出版)』『村上信明著『書店業新時代』(1994・新文化通信社)』『能瀬仁著『書店業のいまを読む――出版流通の現状と業界活性化への視点』(1994・実務教育出版)』『「新文化」編集部編『列島書店地図――激戦地を行く』(1998・遊友出版)』『永江朗著『菊地君の本屋』(1999・アルメディア)』

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図書館情報学用語辞典 第5版 「書店」の解説

書店

図書,雑誌などの出版物を直接読者に販売する小売り商.出版物の小売り店のことで,本屋,書肆ともいう.書店は,新刊出版物を扱う新刊書店のことを指すのが一般的な用法であり,古本を扱う古書店とは区別される.歴史的に見ると,江戸時代の書肆,明治前期の書店は,現在の出版社と書店を兼ねた存在であり,この名残が例えば岩波書店などの名称に残っている.その後,明治中期以降,現在の書籍取次が書店からの分離を開始している.例えば,東京堂書店は現在は書店であるが,第二次大戦前は,取次も兼ねていた.日本の出版物の販売制度の特徴は,委託販売制と定価販売(再販制)にあり,このもとで読者への店頭での展示販売を受け持つ書店は,諸外国と比べて著しく充実しているといわれている.

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世界大百科事典 第2版 「書店」の意味・わかりやすい解説

しょてん【書店】

書籍・雑誌などの小売業。本屋ともいう。江戸期初め民間で出版活動がはじまってから明治初期までは,板元(はんもと)(版元,書肆(しよし),本屋)が編集から製作,卸,小売,古書の売買を一手におこなっていた。したがって,書店とは本来,出版社,取次店,新刊本小売店,古書店の総称であり,現在も出版社,取次店が書店を名のるのはそのなごりである。 小売専業の書店は明治維新の前後に発生した新しいメディアである新聞・雑誌の誕生,鉛活字による近代印刷術や洋紙,洋式製本術の輸入による出版の近代化の開始,そして政府による中央集権化や1872年(明治5)の〈学制〉頒布による教育制度の改革などがすすみ,読み書き能力の向上とともに出版点数,出版量が増大するなかで小売専業店は増えていった。

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世界大百科事典内の書店の言及

【出版】より

… 日本の出版流通はたいへん効率よく組織されている。いわゆる正常ルートと呼ばれる,出版社→取次店(問屋)→小売書店,のチャンネルによって,総出版物の半ば以上が,自動的に全国に流れ,読者の目に触れるしくみになっており,流通費(流通部門のとるコミッション)は,相対的には世界で最も安い。しかし近年出版物の消費化(マスプロ・マスセール化)が進み,後に述べるような種々の問題を生じたため,正常ルート以外に,生協(大学生活協同組合)ルート,月販(割賦(かつぷ)販売)ルート,即売(スタンド)ルート,直販ルート(ダイレクト・メール,ブッククラブなど),コンビニエンスストア・ルート,鉄道弘済会ルート,教科書ルートなど新旧各種の販売チャンネルが開発され,多様化を進めている。…

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