有平糖(読み)アルヘイトウ

デジタル大辞泉 「有平糖」の意味・読み・例文・類語

アルヘイ‐とう〔‐タウ〕【有平糖】

《アルヘイは〈ポルトガル〉alfeloa砂糖菓子の意)から》砂糖水飴みずあめを加えて煮詰め、冷やして引き伸ばしたり彩色したりした菓子。棒状のもののほか、花・果物の形に細工して飾り菓子にする。室町時代ヨーロッパから伝来。アリヘイ糖。アルヘイ。

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精選版 日本国語大辞典 「有平糖」の意味・読み・例文・類語

アルヘイ‐とう‥タウ【有平糖】

  1. 〘 名詞 〙 一六〇〇年頃ヨーロッパから伝わった砂糖菓子の一つ。砂糖に飴を加えて煮つめたもの。引き伸ばして白くしたり、色素で色をつけたりする。棒状のもののほか、いろいろな形に細工して祝い物や供物の飾り菓子とする。アルヘイ。アリヘイとう。
    1. [初出の実例]「下戸には、かすていら、ぼうる、かるめひる、あるへい糖、こんぺい糖などをもてなし」(出典:太閤記(1625)或問)
    2. 「長い煙突 あるへい糖 つながる函(はこ)はチョコレイト」(出典童謡・お菓子の汽車(1920)〈西条八十〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「有平糖」の意味・わかりやすい解説

有平糖
あるへいとう

16世紀後半から17世紀初めごろまでの南蛮交易時代に、ポルトガル船によって日本にもたらされた南蛮菓子一種ポルトガル語アルフェロアalfeloa、つまり「砂糖菓子」であるから、「有平糖」では「糖」が重言になっている。またアルヘル、アリヘイともいう。製法について1718年(享保3)刊の『古今名物御前菓子秘伝抄』に、「上々氷砂糖一返(いっぺん)洗ひ捨て、砂糖一斤に水一、二升入れ、砂糖の溶け申す程煎(せん)じ、絹にてこし、其(その)後煎じつめ、匙(さじ)にて少しすくひ、水に冷し、うすく伸ばしぱりぱりと折れ申す時、平銅鍋(なべ)に胡桃(くるみ)の油を塗り、その中へうつし、鍋こしに水に冷し、手につき申さぬ程にさまし、その後成る程引伸ばし候へば白くなり申候を小さく切り、いろいろに作るなり」と記されているが、『和漢三才図会(ずえ)』(1715)には、円形で胡桃のような筋のある菓子、と説明され、単純な形状であったようである。いろいろに細工され、紅白黄緑に彩色されて妍(けん)を競うようになるのは、文化・文政(ぶんせい)年間(1804~1830)以降である。とりわけ京菓子司による細工物は風流典雅を極め、干菓子仲間入りをして、桃の節供の飾り菓子や茶席での添え菓子、祝儀菓子として今日まで珍重されてきた。

[沢 史生]


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改訂新版 世界大百科事典 「有平糖」の意味・わかりやすい解説

有平糖 (あるへいとう)

室町末期に伝えられた南蛮菓子の一種。ポルトガル語のアルフェロアalfeloa(砂糖菓子,糖みつ菓子)のなまりで,アルヘイ,アルヘル,アルヘイルとも呼ばれた。江戸初期から文献に名が見られ,1689年(元禄2)刊の《合類日用料理指南抄》はじめ数種の料理書に製法が記載されている。現在では,砂糖に水あめと水を加えて煮つめ,急冷して固いあめにするもので,冷めきらぬうちに細工して,雛祭の飾菓子などにする。梅干しあめ,鰹節あめなども,この一種である。
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百科事典マイペディア 「有平糖」の意味・わかりやすい解説

有平糖【あるへいとう】

砂糖で作る飴(あめ)菓子の一種。室町末期に渡来した南蛮菓子で,ポルトガル語のアルフェロア(砂糖の意)が語源という。砂糖に水を入れ水飴を少量加え煮つめて作る。精巧な細工や着色をして雛祭(ひなまつり)などの飾菓子とする。
→関連項目菓子干菓子

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「有平糖」の解説

アルヘイとう【有平糖】

砂糖に水あめを加え、煮詰めて作る菓子。着色して花などの形に細工し、祝儀菓子や茶席の干菓子として用いる。◇南蛮貿易期にポルトガルから伝わった「アルフェロア(alfeloa)」もしくは「アルフェニン(alfenim)」という砂糖菓子が原形とされる。「有平」と略す。

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