有無(読み)ウム

デジタル大辞泉 「有無」の意味・読み・例文・類語

う‐む【有無】

あることとないこと。あるなし。「在庫有無を問い合わせる」
承諾することと断ること。承知不承知。「事ここに立ち至ればもはや有無はあるまい」
仏語存在するものと存在しないもの。また、存在することと存在しないこと。

ゆう‐む〔イウ‐〕【有無】

うむ(有無)

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精選版 日本国語大辞典 「有無」の意味・読み・例文・類語

あり‐なし【有無】

  1. 〘 名詞 〙
  2. あるかないか、また、いるかいないかということ。うむ。
    1. [初出の実例]「これにてこそ心ざしありなし見えはじめ給はめ」(出典:落窪物語(10C後)二)
  3. 存在が認められるかどうか、勢威があるかないか、ということ。
    1. [初出の実例]「わが世にありなしはこの惟方、経宗にあり」(出典:愚管抄(1220)五)
  4. ようやくその程度にあること。あることはあるがわずか。
    1. [初出の実例]「有物とては居宅諸道具弐十貫目が物はありなし也」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)京)
  5. ( 形動 ) あるかないか、また、いるかいないかわからないさま。また、それほどかすかなこと。
    1. [初出の実例]「北の方年老い給て、ありなしにて聞えなどすめれど」(出典:栄花物語(1028‐92頃)様様のよろこび)
    2. 「月の光もありなしに静かなるをりふし」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)四)
  6. ( 形動 ) あるかないかわからないほどに軽く取り扱うこと。あってもかいのないさま。
    1. [初出の実例]「保科弾正親子と右之両人おば、有なしにして、其方と我等ばかりなる共、出ば出させ給へと申されければ」(出典:三河物語(1626頃)三)
  7. ありなし(有無)の日」の略。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「有無(アリナシ)、月廿五日也。村上天皇御宇に始」(出典:俳諧・誹諧初学抄(1641)中夏)
  8. 百韻形式の連句で、恋、春、秋の句を三句または四句と続けた場合、それ以後は、続けても続けなくてもよいとすること。恋、春、秋の句は三~五句続けるのが百韻形式の定法。〔俳諧・誹諧名目抄(1759)〕

ある‐なし【有無】

  1. 〘 名詞 〙
  2. あることと、ないこと。あるかないかということ。うむ。
    1. [初出の実例]「地獄や極楽の有なしを沙汰したり」(出典:談義本・銭湯新話(1754)二)
    2. 「芝居のある無しに係らず直ぐ師匠の家へ行って」(出典:腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉一四)
  3. あるかないかがわからないほどにかすかである様子。あるかなきか。
    1. [初出の実例]「呉王の時はどこもかしこもののめいたりしが今は其旧迹さへあるなしにて」(出典:三体詩幻雲抄(1527)二)
    2. 「丁度眉毛が一本一本生えているように、あるなしの細い筋を引きながら」(出典:面影(1969)〈芝木好子〉一)
  4. ( 形動 ) 「あるなし」に関係のないさま。まったく構わないこと。
    1. [初出の実例]「父母をばあるなしにあいしらひ」(出典:翁問答(1650)上)
  5. ( 数を表わす語につけて ) その数まで達するか達しないかくらいの意を表わす。だいたい…くらい。
    1. [初出の実例]「二十人あるなしの子供を対手に、〈略〉アイウエオを教へて居る」(出典:酒中日記(1902)〈国木田独歩〉五月三日)
  6. あるない(有無)
    1. [初出の実例]「一と月ならずは三日でも米びつのあるなしを聞ずにゐたいと思ひますに」(出典:合巻・正本製(1815‐31)初)

う‐む【有無】

  1. 〘 名詞 〙
  2. あることとないこと。あるかないか。ありなし。
    1. [初出の実例]「ただし往生の得否は信心の有無によるべし」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    2. [その他の文献]〔書経‐益稷〕
  3. 否と応。承知と不承知。諾否。
    1. [初出の実例]「申申、うむの御せ事を仰られい」(出典:虎明本狂言・瓜盗人(室町末‐近世初))
  4. 生死、黒白、成不成、勝敗など、対立する二つの概念をさす。
    1. [初出の実例]「河中島にて有無の合戦有けり」(出典:義残後覚(1596)二)
  5. 仏語。実在することと実在しないこと。すべての存在するものとしないもの。または存在するものの存在と非存在をいい、後者についてその一方を固執するかたよった考え方をもさす。→有無の二見(にけん)
    1. [初出の実例]「如来既達三世、有無双照」(出典:法華義疏(7C前)序品)

うに‐むに【有無】

  1. 〘 副詞 〙 がむしゃらに。なにがなんでも。むやみに。
    1. [初出の実例]「其の返報として、有(ウ)二無(ム)二、我れを鉄砲でなりともなんでなりとも打殺さうと云はれた」(出典:こんふえっしょなりうむ(懺悔録)(1632)五番のまんだみえんとに就いて)

うや‐なや【有無】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 互いにうまくゆくさま。円満なさま。〔俚言集覧(1797頃)〕
    1. [初出の実例]「とても死ぬ迄和義和順(ウヤナヤ)にくらすことはならねへから」(出典:人情本春色辰巳園(1833‐35)四)

ある‐ない【有無】

  1. 〘 名詞 〙 ( あるかないかで心配する意からか ) 米びつの米。飯米(はんまい)
    1. [初出の実例]「内の有ないの世話を忘れて後生咄しするのがほんの極楽」(出典:浄瑠璃・本田善光日本鑑(1740)四)

ゆう‐むイウ‥【有無】

  1. 〘 名詞 〙 あることとないこと。ゆうぶ。うむ。
    1. [初出の実例]「親睦するが開化の第一で、すなはち有無(イウム)を通ずる世界の公法じゃ」(出典:文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉二)

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普及版 字通 「有無」の読み・字形・画数・意味

【有無】ゆう(いう)・むうむ

存在と非存在。〔老子、二〕無相ひ生じ、易相ひり、長短相ひ形(あら)はれ、高下相ひ傾き、聲相ひ和し、後相ひ隨ふ。

字通「有」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有無」の意味・わかりやすい解説

有無
うむ
bhāva-abhāva

仏教用語。存在と非存在。仏教では存在するものはすべて一時的な仮のものであり,諸条件によって生滅するものであるから,存在それ自体に不変常住な固定的実体はないと考える。存在に固定的実体を認めるのが「有」の見解である。逆に,すべての存在を否定してしまうのを「無」の見解という。仏教は,すべてが諸条件によって生滅するという事実に立って,「有」と「無」という両極端の見解に陥ることを戒めている。この立場が仏教の「中道」である。

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