民法が規律の対象としている権利を時間の面から分類するならば,現在の権利と将来の権利に分けることができる。前者は現在すでに発生(存在)している権利であり,後者は将来発生することが予定されてはいるものの現在時点ではまだ発生(存在)していない権利である。取引の対象とされ,また法的保護の対象となるのは原則として現在の権利であるが,将来の権利もその発生が確実である場合はもちろん,たとえ不確実な場合でも,その発生(取得)に対する期待は法的保護の対象とするに値する場合がある。法がこのような期待ないし期待的地位を保護しているときに,これを〈期待権〉という。民法が条件付法律行為(例,将来息子が結婚すれば不動産を贈与するとの契約)から生ずる〈相手方の利益〉(128条)とか〈当事者の権利〉(129条)の保護および処分・相続などの可能性を認めているのは,期待権を認めている典型例である。
→条件付権利
執筆者:奥田 昌道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
将来一定の事実が発生すれば一定の法律上の利益を受けることができるであろうという希望ないし期待を内容とする権利。希望権ともいう。すなわち、権利を発生せしめる要件事実のうち、その一部が発生し、他がまだ発生していない、という状態にあって、将来、権利を取得できるであろうという期待ないし希望をもつに至る場合、このような期待ないし期待的地位に対して、法によって与えられる保護を期待権とよんでいる。
期待権の例としては、条件付き権利、期限付き権利、相続開始前における推定相続人の地位などがあり、それぞれ一定の法的保護が与えられている。民法は、期待権の典型とされる条件付き権利について、条件付き法律行為の各当事者は、条件の成否未定の間は、条件成就によってその行為から生じる相手方の利益を害してはならない(不可侵性、128条)と規定している。しかし、期待権に対する法的保護の内容は、期待権の内容によって異なる。
[淡路剛久]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新