木場(読み)きば

精選版 日本国語大辞典 「木場」の意味・読み・例文・類語

き‐ば【木場】

[1] 〘名〙 江戸時代、木材需要の多い大都市に設けられた貯木場、およびその近くの材木屋街。江戸の深川、名古屋の堀川端、大坂立売堀(いたちぼり)などが著名
※俳諧・吾妻錦(1769)「蔵と名の付いた斗りの木場の蔵」
[2]
[一] 東京都江東区中西部の地名。江戸時代、幕府の御用材を扱う材木問屋が集まり、材木屋街を形成。貯木場は、昭和四九年(一九七四)以降に区東南部、東京湾岸の新木場移転した。
[二] (江戸深川の木場に隠居したところから) 四代目市川団十郎をいう。木場の親玉。木場の親父
洒落本傾城買指南所(1778)「三升どのと相手になってしているやうには思れぬ。やっぱり、きばとしているやうだ」

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デジタル大辞泉 「木場」の意味・読み・例文・類語

こ‐ば【木場】

切り出した木材を、一時集めておく山間平地木木場きこば馬場まば馬止まどめ。
山間の農作地。また、焼き畑。

きば【木場】[地名]

東京都江東区中部の地名。元禄年間(1688~1704)江戸幕府許可で材木市場が開かれてから発展近年、貯木場は南部の新木場に移転した。

き‐ば【木場】

材木の集積場。貯木場。また、材木市が開かれ、材木商の多い地域。

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日本歴史地名大系 「木場」の解説

木場
きば

よこ(大横川)河口に位置し、深川永代ふかがわえいたい浦とよばれ、元禄一〇年(一六九七)から江戸市中の塵芥をもって築立てられた地。

〔木場の成立〕

天正一八年(一五九〇)江戸入りした徳川家康は、江戸城の改修と江戸市街地の整備に着手し、慶長九年(一六〇四)必要な資材を調達するため、駿河・遠江・三河・尾張などから材木商人を呼寄せ、神田、日本橋・本八丁堀ほんはつちようぼり(現中央区)辺りに住まわせた。寛永一八年(一六四一)の大火を契機に、それまで大川(隅田川)西岸河口付近にあった材木置場を佐賀さが町の東方続きに移転した。元禄一二年に同地が御用地として収公され、代地として深川築地つきじ(現平野・木場一帯)が与えられたが、干拓が進んでいなかったため、猿江さるえ(現大島・猿江)を代替地とした。この地もまた同一四年に御用地となったため再び深川築地へ移転し、一五名の材木問屋が築立てを行った。同一六年木場町の成立と同時に周辺の町も成立し(御府内備考)、以後約三〇〇年にわたり木材の集散地として機能する木場地域が誕生した。

〔問屋〕

延宝元年(一六七三)にはそれまで区別されていなかった問屋と仲買が分離した(御府内備考)。享保―延享期(一七一六―四八)頃には問屋も整備された。問屋には木場町を開発した一五人の材木商が結成した木場材木問屋のほか、板材木問屋・熊野問屋・川辺問屋がある。板材木問屋と熊野問屋は宝永年間(一七〇四―一一)に合併し、板材木熊野問屋となり(材木問屋旧記)、木場材木問屋とともに下り荷物を中心に扱っていた。

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百科事典マイペディア 「木場」の意味・わかりやすい解説

木場【きば】

東京都江東区木場,平野,冬木一帯。掘割や池が多く貯木に適していたため,元禄年間日本橋の材木問屋が木置場として以後問屋,製材所が集中,木場千軒といわれるほど繁栄した。角乗りの技術が伝わる。1970年代に地盤沈下等のため夢の島に南接する埋立地に新木場をつくり移転。
→関連項目木場(林業)深川

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木場」の意味・わかりやすい解説

木場
きば

東京都江東区中央部にある地区。元禄年間 (1688~1704) に江戸幕府の許可を得て,この地に材木市場が開かれたのが起りで,数多くの材木商が集中し,貯木場,製材所が独特の街区を形成していた。当時の風習を伝える「角乗り」「曲乗り」などの伝統技術,「木遣り」などの伝統芸能が残り,東京都無形民俗文化財に指定されている。近年地盤沈下や道路の渋滞で機能が低下し,貯木場は東京湾岸の埋立て地の新木場へ移転し,材木商や製材所の多くも新木場に移った。木場の跡地 (現木場4丁目,平野4丁目) には 1992年都立木場公園が開設された。

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世界大百科事典 第2版 「木場」の意味・わかりやすい解説

きば【木場】

木材の集散に便利な地点に設けられる貯木場。江戸時代には多く運材河川の河口付近,または海運によって各地の木材が集中する都市内に成立した。秋田杉の米代川〈能代(のしろ)〉,伊那榑(くれ)・遠州杉の天竜川〈掛塚〉,木曾ヒノキの木曾川〈桑名,熱田白鳥〉,熊野・北山杉の熊野川〈新宮〉などは前者の例,江戸の〈深川〉,大坂の〈立売堀(いたちぼり)〉,名古屋の〈堀川筋〉は後者の例であるが,大量の木材を収容する木場は,陸続きの海面または河川の水面をも貯木場に利用した。

きば【木場】

東京都江東区の地名。1878‐1947年は深川区に属した。江戸時代より最近まで材木の貯木池や問屋が集中していた。江戸時代までは海岸沿いの土地であったが,明治以後,干潟の干拓が進み,沖合に塩浜,枝川,潮見,辰巳の埋立地が次々と完成し,さらにこれらの埋立地の南東側に夢の島,新木場,若洲などの埋立地もできた。とくに新木場埋立地の完成は古くからの木場にきわめて大きな影響を与え,1974‐76年にかけて木場の貯木場の大部分が新木場に移転した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「木場」の解説

木場
きば

貯木場のこと。江戸時代以前の木場では山城国木津川の木津,鎌倉の材木座などが有名。江戸時代に木材流通が盛んになり,日本各地に成立。出羽国能代(秋田杉),尾張国熱田の白鳥(しろとり)(木曾檜),紀伊国新宮(吉野北山杉),江戸深川,大坂の立売堀などがある。運送される河川の河口付近,海運による集散地,木材の消費都市にでき,材木問屋・仲買の商人が存在した。

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世界大百科事典内の木場の言及

【木場】より

…木材の集散に便利な地点に設けられる貯木場。江戸時代には多く運材河川の河口付近,または海運によって各地の木材が集中する都市内に成立した。…

【木場】より

…木材の集散に便利な地点に設けられる貯木場。江戸時代には多く運材河川の河口付近,または海運によって各地の木材が集中する都市内に成立した。…

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