本地(読み)ホンジ

デジタル大辞泉 「本地」の意味・読み・例文・類語

ほん‐じ〔‐ヂ〕【本地】

菩薩ぼさつが人々を救うために神の姿となって現れた垂迹すいじゃく身に対して、その本来の仏・菩薩本地仏
本来の姿。本体
「人はまことあり。―尋ねたるこそ、心ばへをかしけれ」〈堤・虫めづる姫君
本性本心
「酔ひても―忘れずとて」〈伽・酒呑童子
漆器下地で最も堅牢なもの。

ほん‐ち【本地】

この土地当地
もとの土地。本国
「帰陣已後、―にて呼べるかたありつれど、これを受けず中国に蟄居したりけるが」〈色道大鏡・一五〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「本地」の意味・読み・例文・類語

ほん‐じ‥ヂ【本地】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。本地垂迹説によるもので、世の人を救うために神となって垂迹したその本の仏・菩薩をいう。神はこの世に仮に姿を表わした垂迹身で、仏・菩薩をその真実身である本体とするもの。たとえば、天照大神の本地は大日如来だとする。
    1. [初出の実例]「智恵の前には本地をあらはし」(出典:発心集(1216頃か)八)
    2. 「当山権現は本地阿彌陀如来にてまします」(出典:平家物語(13C前)一〇)
  3. もとの姿。本体。物の本源。
    1. [初出の実例]「人はまことあり、ほんちたづねたるこそ、心ばへをかしけれ」(出典:堤中納言物語(11C中‐13C頃)虫めづる姫君)
  4. 本性。本心。正気。
    1. [初出の実例]「酔ひてもほんぢ忘れずとて」(出典:御伽草子・酒呑童子(室町末))
  5. 漆下地の最も丈夫なもの。のり、水を用いず生漆だけで練り合わせたものを下地に用いる。
  6. 謡曲拍子の一種。地拍子の基本的拍子で、七・五調一二文字の一句を八拍子にはめてうたうもの。平ノリ・中ノリ・大ノリのいずれもこの一連を基本とする。
  7. ほんち(本地)

ほん‐ち【本地】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ほんち(本知)
    1. [初出の実例]「日根野殿さまの御本地計にては御座なく候」(出典:政基公旅引付‐文亀三年(1503)七月二六日)
  3. ( 「ほんぢ」とも ) もとの土地。本国。本土本知
    1. [初出の実例]「こうぼう大しのははごと申は、此くにの人にてましまさず、くにを申さばたいたう、ほんちのみかどの御むすめなるか」(出典:説経節・説経苅萱(1631)中)
  4. 話題になっている、この土地。当地。
  5. ほんじ(本地)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「本地」の意味・わかりやすい解説

本地
ほんじ

垂迹対句神道の神々の根本真実身のこと。それぞれの神の本地は,いずれかの仏または菩薩と考えられた。 (→本地垂迹説 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の本地の言及

【説経節】より

…本来の説経節の特徴や魅力をうかがわせるのは,明暦以前の正本である。
[詞章と特徴]
 明暦以前の説経節をかりに古説経と呼ぶなら,それらの作品の冒頭には,〈国を申さば丹後国,金焼(かなやき)地蔵の御本地(ごほんじ)を,あらあら説きたてひろめ申すに〉(《山荘太夫》)といった本地語りがある。この詞章を見ると,七五調またはその変形を単位として語られることがわかり,丹後を信濃に,金焼地蔵を親子地蔵に変化させると《苅萱》の本地語りにも転用できることがわかる。…

【本地垂迹】より

…日本の神祇と仏菩薩の関係を説くために考え出された理論を本地垂迹説という。本地垂迹の語はもと《法華経》寿量品にあり,永遠不滅の理想的釈迦を本地とし,歴史的現実の生身となって布教した釈迦を垂迹とするもので,これを神仏の関係に転用したのである。…

※「本地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」