太平洋戦争末期の1945年3月10日未明、米軍のB29爆撃機が現在の東京都江東区、台東区、墨田区などを対象に実施した無差別爆撃。下町の木造住宅の密集地域に大量の
更新日:
出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
1945年(昭和20)3月10日未明の東京下町(したまち)地区に対する爆撃を中心とする、アメリカ軍の大量無差別の航空爆撃作戦。沖縄戦や広島・長崎への原爆投下と並ぶ太平洋戦争中の日本における大戦災となった。米軍機の日本空襲は開戦翌年の1942年4月のドゥリットル中佐指揮のB-25中型爆撃機16機による奇襲が最初だった。日本軍の連勝中に、太平洋上の航空母艦から発進し、東京・名古屋・神戸を攻撃して中国浙江(せっこう)省の基地におりたこの奇襲は、被害こそ少なかったが、日本軍部に大衝撃を与えた。
本格的な本土空襲は1944年夏にアメリカ軍のマリアナ諸島占領によって始まった。日本本土がアメリカ軍の新鋭長距離超重爆撃機B-29の爆撃圏に入ったからである。アメリカ側は民間無差別攻撃によって日本国民の戦意をくじこうと、大都市に対する焼夷弾(しょういだん)爆撃を計画した。それに対する日本側の防空体制はいたって弱体なものであった。B-29は1944年11月24日、初めて東京を本格的に爆撃、同月29日には最初の夜間焼夷弾攻撃が行われ、以後、翌年にかけて敗戦の日まで連日のように空襲が続いた。9か月に及ぶ空襲は、延べ4900機により130回に及ぶもので、38万9000余発の焼夷弾と1万1000余発の爆弾が投下された。3月10日の大空襲は、ハンブルク爆撃(1943年7~8月)で有名なルメー少将の指揮によって準備された。下町地区がまずねらわれたのは、そこが家内工業の中心であり、日本の軍事工業を支えているとの認識がアメリカ軍にあったからである。午前0時8分から深川(ふかがわ)地区に始まったこの空襲の特徴は、夜間の超低空からのじゅうたん爆撃という点である。これは火災に弱い日本の都市構造や防空体制の弱点などをついたものであった。
2時間半の爆撃によって東京下町一帯は廃墟(はいきょ)と化した。約2000トンの焼夷弾を装備した約300機のB-29の攻撃による出火は強風にあおられて大火災となり、40平方キロメートルが焼失、鎮火は8時過ぎであった。焼失家屋は約27万戸、罹災(りさい)者数は100万余人に達した。死者は警視庁調査では8万3793人、負傷者は同じく4万0918人となっている。資料によって差異が大きいが、「東京空襲を記録する会」は死者数を10万人としている。
アメリカ軍はこの後、3月12日名古屋、14日大阪、17日神戸、19、20日名古屋、29日北九州、4月13日東京山手(やまのて)地区、15日東京・横浜・川崎と大都市への夜間空襲を続け、5月末の空襲ともあわせ、東京の市街地の50.8%が焼失し、国民の恐怖は極限に達した。その後、空襲は地方の中小都市へと移り、最後の空襲は1945年8月15日午前1時、東京西多摩郡に対して行われた。
[青木哲夫]
『東京空襲を記録する会編『東京大空襲・戦災誌』全5巻(1975・講談社)』▽『早乙女勝元著『東京大空襲』(岩波新書)』
(秋津あらた ライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1945年(昭和20)3月10日午前0時8分から午前2時37分にかけてアメリカの戦略爆撃機B29によってなされた東京への無差別爆撃。空襲は44年11月頃から始まっていたが,はじめは軍需工場・施設を目標とする高高度精密爆撃だった。45年になると国民の戦意を失わせることを目的として,市街地に対し超低空で焼夷弾爆撃を加えるようになった。3月10日もB29約300機が東京湾上を超低空で江東地区に飛来した。墨田・江東・台東の3区の死亡率は広島・長崎に近く,前後の空襲を含めると東京全域の死者は8万3000人から11万5000人と推定される。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…45年に入るとマリアナ諸島の司令官にC.E.ル・メイ少将が新任され,大都市への夜間焼夷弾絨毯(じゆうたん)爆撃を開始した。3月10日には東京大空襲が行われ,300機のB29が東京の下町に1665tの焼夷弾を投下し,折からの強風もあって40km2を焼き払い,死者は約10万人に達した。つづく10日間に名古屋,大阪,神戸,また名古屋が焼夷弾で焼き払われた。…
※「東京大空襲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加