精選版 日本国語大辞典 「東海道四谷怪談」の意味・読み・例文・類語
とうかいどうよつやかいだん ‥ダウよつやクヮイダン【東海道四谷怪談】
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歌舞伎(かぶき)脚本。世話物。5幕。通称「四谷怪談」。4世鶴屋南北(なんぼく)作。1825年(文政8)7月江戸・中村座で、3世尾上(おのえ)菊五郎のお岩・小平(こへい)・与茂七(よもしち)、7世市川団十郎の伊右衛門(いえもん)、5世松本幸四郎の直助権兵衛(なおすけごんべえ)らにより初演。別名題(なだい)『いろは仮名四谷怪談』『形見草(かたみぐさ)四谷怪談』など。江戸四谷左門町に寛文(かんぶん)(1661~73)ごろから伝わる田宮家の怨霊(おんりょう)話や、密通のため戸板に釘(くぎ)付けされた男女の死体が神田川に浮かんだという話、主(しゅ)殺しの罪で同日に処刑された直助と権兵衛の話、姦婦(かんぷ)に謀殺された俳優小平次の話など、巷談(こうだん)と実話を取り混ぜ、読本(よみほん)の『近世怪談霜夜星(しもよのほし)』や作者の旧作から趣向を生かして脚色。初演のとき『仮名手本忠臣蔵』の二番目狂言として上演されたので、「忠臣蔵」の世界で書かれている。
序幕―塩冶(えんや)家浪人民谷伊右衛門は、妻お岩の父四谷左門を浅草田圃(たんぼ)で殺し、お岩の妹お袖(そで)に横恋慕する薬売り直助は、お袖の夫佐藤与茂七を討とうとして、同じ場所で人違いの奥田庄三郎(しょうざぶろう)を殺す。2幕目(伊右衛門浪宅)―民谷の隣家に住む高師直(こうのもろなお)の重役伊藤喜兵衛は、伊右衛門に懸想した孫娘お梅の恋をかなえようと、お岩に毒薬を贈り、ために容貌(ようぼう)の醜く変わったお岩は按摩(あんま)宅悦(たくえつ)に事情を知らされて憤死。伊右衛門は、旧主の病気を治したさに秘蔵の薬を盗んだ下男小仏(こぼとけ)小平を殺し、お岩と小平の死骸(しがい)を戸板の表裏に釘付けにして川へ流し、お梅と祝言するが、2人の怨霊にたたられ、お梅も喜兵衛も殺してしまう。3幕目(砂村隠亡堀(すなむらおんぼうぼり))―伊右衛門が釣りをしていると、覚えの戸板が流れ着き、お岩と小平の亡霊がこもごも恨みを述べる。4幕目(深川三角(さんかく)屋敷)―お袖は鰻(うなぎ)かき権兵衛と改名した直助と名目だけの夫婦になっていたが、父・夫・姉の仇(かたき)を討ってもらいたさ、ついに直助の自由になると、死んだはずの与茂七が訪れるので、身を恥じて直助・与茂七と同時に手引きし、2人の手にかかって死ぬ。直助は、お袖が実の妹であり、人違いで殺したのが旧主の子庄三郎だったことを知り、因果におびえて自殺する。大詰(蛍狩(ほたるがり)・蛇山庵室(へびやまあんしつ))―伊右衛門はお岩の亡霊にさんざん悩まされたすえ、与茂七に討たれる。
怪談狂言の代表作というばかりでなく、江戸後期の下層社会の世相と人間の心理を鮮やかに描いた傑作で、南北の名を不朽にしたもの。お岩の役は尾上家の家の芸として、3世から5世の菊五郎、6世尾上梅幸(ばいこう)へ継承され、「浪宅」で髪の毛が抜けて変貌する「髪梳(かみす)き」の手順や、「隠亡堀」の怪異な戸板返しが鮮やかな世話だんまりに一変する手法、「蛇山」で幽霊の出没する仕掛けなど、演出が洗練された。第二次世界大戦後は新劇や前衛演劇でも上演されている。
[松井俊諭]
『郡司正勝校注『新潮日本古典集成 東海道四谷怪談』(1981・新潮社)』▽『河竹繁俊校訂『東海道四谷怪談』(岩波文庫)』
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歌舞伎狂言。4世鶴屋南北作。1825年(文政8)7月江戸中村座初演。四谷左門の姉娘お岩と民谷伊右衛門,妹娘お袖と直助の二組の夫婦の破滅を描く。毒薬を飲まされて相好が変わったお岩の髪梳(かみすき)の場面や,戸板の裏表にお岩と小平の死骸が釘付けにされ隠亡堀に流れついて口をきく場面は有名。「忠臣蔵」の世界にお岩の怨霊(おんりょう)話や直助権兵衛の実説などをとりいれた生世話(きぜわ)物の代表。
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…上方では4世市川小団次・市川斎入(さいにゆう)(右団次)系の亡霊の芸が残された。著名な怪談物には《東海道四谷怪談》,《彩入御伽艸(いろえいりおとぎぞうし)》(小幡小平次),《実成金菊月(みのりよしこがねのきくづき)》(皿屋敷),《東山桜荘子(ひがしやまさくらそうし)》(佐倉宗吾)などがある。怪談物の眼目の一つにはケレン(トリック)の演出があり,観客の意表をつく仕掛物や早替りの技術が発達した。…
…南北の生世話は写実に終始するものではなく,時代物的な様式性をも併せ持つ世界である。生世話たる《東海道四谷怪談》は,〈忠臣蔵〉という時代物の世界にお岩・伊右衛門の〈四谷怪談〉をないまぜて構成されており,時代世話混淆の重層構造を持っている。このように筋がからみ合う複雑な仕組(しぐみ)を駆使して,現実の実相を鋭く描き出してみせるところに南北の生世話の真骨頂があるといえる。…
…初期の若衆歌舞伎時代に見世物芸との提携がなされて以来,元禄歌舞伎をはじめ,いつの時代にも写生的な演技の一方に,この種の演技・演出が行われてきた。《東海道四谷怪談》における〈仏壇返し〉〈提灯抜け〉〈戸板返し〉,《義経千本桜》河連法眼館の場の〈階段の打返し〉〈高欄渡り〉〈欄間抜け〉などといった演出は,幽霊や狐の演技として効果をあげている。とくに大道具に見世物的な仕掛物を見せる意図が強く,それに役者の演技としての〈綱渡り〉や〈宙乗り〉などが加わってケレン芝居が生まれる。…
※「東海道四谷怪談」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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