主として和歌に用いられる修飾句。通常は一句五音で、一首の主想表現と直接の意味的関連がなく、被修飾語(被枕詞)だけを修飾する。被修飾語へのかかり方は慣習的、固定的で、一定の枕詞が一定の語にかかるのを普通とするが、類似の語に拡大してかかる場合もある。古くは和歌に限らず、諺(ことわざ)や神託などにおいて、神名、人名、地名にかかる例があり、それがもっとも原初的なものと思われ、本来被枕詞を呪的(じゅてき)にほめたたえる詞であったらしい。それが徐々に呪性を失い、意味もわからなくなってゆくにつれて、二義的に解釈され単なる修飾句や声調を整えるための修辞となったのであろう。万葉時代はほぼ二義的段階のもので、平安時代以後はいちだんと形式化してゆき、種類も少なくなる。
その分類は、(1)枕詞と被枕詞との接続関係によるもの、(2)被枕詞の性質によるもの、(3)枕詞の性質によるもの、とする3種が考えられているが、(1)が一般的である。(1)はさらに〔1〕形容、比喩(ひゆ)、説明など意義に関するもの―「葦(あし)が散る 難波(なにわ)」「沖つ鳥 鴨(かも)」など、〔2〕懸詞、同音反復など、音に関するもの―「玉櫛笥(たまくしげ) 二上山(ふたかみやま)」「ちちのみの 父」などに分ける。(2)は被枕詞を、〔1〕固有名詞―「そらみつ 大和(やまと)」、〔2〕普通名詞―「あしひきの 山」、〔3〕用言―「咲く花の うつろふ」、などに分けてみて、枕詞の修飾機能や時代を重視する分類である。(3)は枕詞の素材がいかなる性質のものかによる分類である。(1)~(3)を相互に関連させつつ、その起源、本質などが考えられている。
[橋本達雄]
『福井久蔵著『枕詞の研究と釈義』(1927・不二書房/再版1960・有精堂出版)』▽『土橋寛著『古代歌謡論』(1960・三一書房)』
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…主想部のある語句を導き出すために機能しつつ,一首中で主としてイメージ,音楽性の面を分担する。機能,役割は〈枕詞〉によく似ているが,〈枕詞〉が原則的に5拍であるのに対して,〈序詞〉は7拍以上または2句以上からなり,さらに,〈枕詞〉が慣用的,固定的であるのに対して,創造的,個別的である点で異なる。つまり〈序詞〉は,一首の勝負のしどころ,個性の発揮のしどころであって,その点で修辞法の一つとはいえ,歌人たちがその開発,発明に多大の努力を費やしてきた,和歌の本質にかかわる重要な部分なのである。…
※「枕詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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