精選版 日本国語大辞典 「枕」の意味・読み・例文・類語
まくら【枕】
まくら・く【枕】
まくら‐・する【枕】
まくら‐・す【枕】
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座臥(ざが)具の一種。就寝あるいは体を横たえたときに、頭をのせる道具。わが国では古墳時代からみられ、『万葉集』には草枕、木枕のことが詠まれている。奥州平泉(岩手県)の中尊寺には、藤原一門の錦(にしき)包みの枕が残されている。木枕は杉、朴(ほお)、黄楊(つげ)、沈(じん)などでつくられ、草枕は茅(かや)、菅(すげ)、篠(しの)、薦(こも)、稲などでつくられた。長方形をした木枕が、後世には湯治場や寄席(よせ)などで用いられたが、一方では安土(あづち)枕(安土形の台の上に小さな括(くく)り枕をのせたもの)、箱枕、船底枕、引出し付きのものなどに変わっていった。草枕は括り枕に変わっていくが、その途中において、方形の木片を左右に、その中央を棒でしっかりと留めて、周囲を布で包み、ひえ、そば殻を入れて両端を閉じたものが、公家(くげ)や武家の間で用いられた。中尊寺の遺物は裂(きれ)でつくった錦作りの枕で、平安時代以降絵巻物のなかに長方形の枕が描かれている。さらに華麗な蒔絵(まきえ)を施した枕、髪に香をくゆらせる装置をした香枕、高級織物を使った枕、あるいは頭を冷やす陶枕(とうちん)などが考案され使用された。
髪形が江戸時代になって男性に本多髷(まげ)、女性に兵庫髷、島田髷、勝山髷などが新しく登場するようになると、枕にも変化が生じ、括り枕よりも箱枕のほうが便利なので、その需要が高まった。ことに女性の場合は、元禄(げんろく)時代(1688~1704)になると鬢(びん)が左右に張り出したり、髱(たぼ)が大きく背後に出た結果、箱枕をせねばならなくなり、また、安土枕のように底が平らなものより、船底枕のように動くもののほうが、寝返りを打つのにも便利であった。また引出し付きの箱枕は、ちょっとした小物、小銭をしまうのにも便利であったから、江戸時代末期になると、使用が増えた。箱枕は、箱の上に円筒形の括り枕をのせるようにしたもので、括り枕は絽(ろ)、木綿でつくり、中入れとしてそば殻、もみ殻、小豆(あずき)などを入れ、それを枕台に結び付けたのである。そして、髪油で布が汚れないように括り枕の上に紙を置き、これを毎日取り替えた。宿屋、廊(くるわ)など人出の多い所では、たくさんの枕を収める枕箱(入れこ枕)があった。また小僧、丁稚(でっち)をたくさん抱えた大店(おおだな)では、丸太を枕にし、起こすときには丸太の一端をたたいたものである。
明治以後、欧米文化がもたらされて、寝具にも新風が吹き込まれた。パンヤ、羽毛などの高級品や、ゴム、スポンジを用いたり、旅行には空気枕、病気のときには氷枕など、文化の発展につれて、いろいろなものがくふうされ今日に至っている。
[遠藤 武]
枕の語源説の一つに、頭は魂の宿るところだから、それを置くタマクラ(魂の容器)とするのがあるように、『万葉集』の時代から枕は魂が寄り付く、もしくは宿るという観念があり、粗末に扱わぬものとされ、踏んだり、けったりすることを忌み嫌った。
北枕は死者がするもので縁起が悪いとするのは全国的な迷信だが、古墳時代から北枕に埋葬される例がもっとも多い。
枕の伝説は、寝ていると枕の位置を変えられる「枕返し」や、寝ている旅人の頭を砕いて金品を奪ったという「石枕の里」などがある。悪夢を食うという空想上の獏(ばく)という動物を枕に描いたり、節分や正月の夜に宝船の絵を枕の下に敷き吉夢をみようとしたり、端午の節句に菖蒲(しょうぶ)の葉を枕の下に敷き邪気を除き、菊の花を乾燥して枕に入れれば長命を保つとする俗信も中世以降に盛んであった。「寿命三寸 楽四寸」という枕の高さを示す江戸時代の諺(ことわざ)があるが、健康的には少し低い枕がよいという。
[矢野憲一]
『遠藤武著『類聚近世風俗志』(1934・更生閣)』▽『矢野憲一著『枕の文化史』(1985・講談社)』
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…しかしこのような規定は女に離婚権のない中国法を直接継受した結果で,当時の離婚の実態はそれと大きく異なっており,婚姻決定権を婚姻の当事者が保持していたことの当然の帰結として,離婚は男女双方から自由に行いえた。当時の離婚の特徴はその容易さとあいまいさだが,その表示法としては,男の〈夜離(よがれ)〉〈床離〉,女の男への〈閉め出し〉(通いの場合),男の同居時の自己の調度類,とくに枕の取り戻し,女によるその送り返し,(妻方居住の場合)などがあったが,夫提供の独立居住婚の場合には妻が夫家を出た。なお自己の結婚の決定権を失う10世紀以降の貴族の女性に,女性側からの積極的離婚を示す例がほとんど消失する事実が注目される。…
…日本の芸能の用語。区切りを表す一般語彙(ごい)を応用したものであるが,種目によって厳密にはその規定する内容が異なる。(1)雅楽では,近代では,1曲を章・節・段と細分したときの最小単位に用いる。これは文章の細目用語の応用で,楽章・楽節・楽段とも用い,そのまま洋楽のmovement,phrase,periodの訳語にも用いる。ただし楽段という訳語の用い方は場合によって一定していない。【平野 健次】(2)能でも,脚本構成の単位として,〈シテ登場ノ段〉などと,区切られた部分の呼称として用いられることもあるが,古くは,《海人(あま)》の〈玉ノ段〉のように,クセやキリなどの類型に入らない特殊な構造と性格をもつ部分を,とくに取り出していう場合に用いた。…
…日本音楽の用語。手の派生語で,手練(てれん)手管(てくだ)などと同義の一般語彙(ごい)でもあるが,音楽用語としては,とくに地歌・箏曲で限定された意味で用いられる。本来は,手ないし本手が,地歌の規範的楽曲である三味線組歌ないしこれに準ずるもの(長歌など)をいうことから,その総称として手事といったもので,まだ地歌という言葉が成立していなかった以前において,盲人音楽家が扱う三味線音楽そのものを指していった場合もある。…
※「枕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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