がら【柄】
[1] 〘接尾〙 (「から(柄)」と同語源)
名詞の下に付いて、その
物事の
本来持っている
性質、
品格、
身分などの意、また、それらの性質、品格、身分などにふさわしいこと、また、その状態の意などを表わす。「
人柄」「
家柄」「
身柄」「
続柄」「
国柄」「場所柄」「声柄」「時節柄」などと用いられる。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「なほ同じやうにわびしく侍るは、ところからにも侍らず」
[2] 〘名〙 ((一)が、独立して用いられたもの)
①
体つき。なり。
大小という面からいう場合に用いる。
※蟹工船(1929)〈小林多喜二〉九「身体(ガラ)の小さい女蟹ばかり多くなったので」
② その人に本来そなわっている、また、その人の身なりや態度から感じられる品や
性格。現代では多く、その人の現在の身分、
地位、生活態度などにふさわしいかどうかという面からいわれる。→
柄にもない。
※承応神事能評判(1653)加茂「ただおしたての位を専とす、一番の柄(ガラ)をよく、物やさしく舞を本とす」
※諷誡京わらんべ(1886)〈
坪内逍遙〉五「寧
(むし)ろ虚喝
(ほら)の方が持質
(ガラ)にあるかナ」
[
補注](二)②は「
ひん(品)」に類似するが、「品」はその人の内面的に備わっているものをいい、「品がある/ない」という。それに対して「がら」は外に表われた
印象からいうもので、「柄が良い/悪い」という。
から【柄】
① 同じ血のつながりを持つこと。
血縁関係にあること。「うから(族)」「やから(族)」「はらから(
同胞)」などと用いられる。
② その物に本来備わっている性質、性格。
本性。また、そのものの由来するところ。「国柄
(くにから)」「神柄
(かむから)」「山柄
(やまから)」などと用いられる。
※万葉(8C後)三・三一五「み吉野の 吉野の宮は 山可良(カラ)し 貴くあらし 川可良(カラ)し 清(さや)けくあらし」
[2] 〘名〙 ((一)②から転じて) 原因、理由。→
からに。
※万葉(8C後)二〇・四三五六「我が母の袖もち撫でてわが可良(カラ)に泣きし心を忘らえぬかも」
へい【柄】
[1] 〘名〙 本質。根本。
※谷川士清宛本居宣長書簡‐明和二年(1765)八月四日「方今吾道之柄在二足下手一焉」 〔易経‐楚辞下〕
[2] 〘接尾〙 手に握り持つ、刀剣・槍・如意・扇などを数えるのに用いる。
※西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780)「金銅四王像四躯〈〈略〉各着大刀一柄、三柄着別〈略〉又毘沙門天王横佩一柄〉」
※随筆・孔雀楼筆記(1768)四「中等扇三柄(ヘイ)、某先生携帰」
え【柄】
〘名〙 (枝(え)から転じたものといい、「え」は元来ヤ行のエ) 手で持つために、器物に取り付けた棒状の部分。取手(とって)。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「豈に法の庭に斧(をの)の柄(エ)、朽ちざらめや」
※枕(10C終)二〇一「ひさげのえの倒れ伏すも、耳こそとまれ」
※平家(13C前)一二「太刀のみね長刀(なぎなた)のゑにてうちなやしてからめとり」
かい かひ【柄】
〘名〙 基本となるもの。もとい。もと。
※古文孝経建久六年点(1195)序「孔子之世に当て周、其柄(カヒ)を失ひ」
かび【柄】
〘名〙 器具などについている、手で持ったり握ったりするところ。つか。え。〔観智院本名義抄(1241)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「柄」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
柄
つか
刀剣の手で握る部分の名称。『古事記』に「十握剣(とづかのつるぎ)」の記述があり、これは10の手で握れるほど柄の寸法の長い剣という意味であるが、鎬造湾刀(しのぎづくりわんとう)の日本刀が完成する平安中期以前の直刀(ちょくとう)の柄は、中国大陸のものと同じく片手で握る寸法であり、それ以後双手(もろて)で握る寸法となった。奈良、平安時代のものは、一部には刀身と柄を共造りにした例もあるが、多くは刀身の茎(なかご)を木で覆い、鮫皮(さめかわ)を着たものになる。なかには金銅の薄板を張ったもの、革や布を着せて漆を塗ったもの、錦(にしき)を着せたものもある。桃山時代までの太刀(たち)、打刀(うちがたな)の柄は、木に鮫皮を着せて黒漆で塗り、糸または革で巻き、兜金(かぶとがね)や縁金物(ふちかなもの)を施すのが基本であった。江戸時代には装飾性が重視され、柄巻も平巻、菱(ひし)巻、片手巻、つまみ巻、捻(ねじ)り巻などくふうがなされ、色も黒、白、紫などの単色のほか数色の組合せも行われ、縁頭(ふちがしら)や目貫(めぬき)などにも凝った細工が施された。西洋の剣には双手柄は特殊なもの以外にはなく、ほとんどすべて片手柄で、銅または金銀の撚(よ)り線で巻いたもの、金属の柄に金銀を象眼(ぞうがん)したもの、さらに宝石を散らしたものなどもある。
[小笠原信夫]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
つか【柄】
刀剣を握りつかむ部分。奈良時代の蕨手刀(わらびでのかたな)や平安時代の毛抜形太刀(けぬきがたのたち)など,一部には刀身と柄を共造りとしたものもあるが,一般には刀身の茎(なかご)を木で覆い,鮫皮(さめかわ)を着せ,革や組糸で柄巻(つかまき)を施したものが多い。古墳時代には頭を環頭,頭椎(かぶつち),圭頭(けいとう)にして金銅板で包んだ柄を見るが,奈良時代では正倉院のものに木地のままとしたのがある一方,金銀鈿荘唐大刀のように鮫皮を着せ,柄頭(つかがしら),縁金物(ふちかなもの),手抜緒(てぬきのお)を付けたのもあって,後世の儀仗用の飾大刀(かざりたち)の範となったものもすでに存在していた。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報