(読み)シバ

デジタル大辞泉 「柴」の意味・読み・例文・類語

しば【×柴】

山野に生える小さい雑木の総称。また、それを折って薪や垣とするもの。そだ。しばき。
[類語]小枝若枝わかえ若枝わかえだ・痩せ枝・枯れ枝・徒長枝・万朶粗朶枝葉枝振り枝変わり

さい【柴】[漢字項目]

人名用漢字] [音]サイ(漢) [訓]しば
〈サイ〉小さい雑木。しば。「柴門
〈しば〉「柴山小柴
難読柴垣ふしがき

ふし【×柴】

しば。
「しながどる、や、猪名ゐなの―原」〈神楽・猪名野

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精選版 日本国語大辞典 「柴」の意味・読み・例文・類語

しば【柴】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 山野に生える小さい雑木。また、それを切って、薪にしたり、垣根を作ったりするもの。灌木。そだ。しばき。ふし
    1. [初出の実例]「巫覡(かむなき)等、枝葉(シハ)を折り取りて、木綿を懸掛(してか)けて」(出典日本書紀(720)皇極二年二月是月(岩崎本平安中期訓))
  3. しばいぬ(柴犬)」の略。
    1. [初出の実例]「柴の雑種でかしこく、いつも彼の方に向って土間に坐っている」(出典:ひとつの青春(1967)〈大原富枝〉五)

ふし【柴】

  1. 〘 名詞 〙
  2. しば(柴)
    1. [初出の実例]「即ち其の船を踏み傾けて、天の逆手を青柴垣に打ち成して、隠りき。〈柴を訓みて布斯と云ふ〉」(出典:古事記(712)上)
  3. 冬に、水中につけておいて、魚が集まるようにする束ねた柴。
    1. [初出の実例]「小ばえつどふ沼の入江の藻の下は人つけおかぬふしにぞあける」(出典:山家集(12C後)下)

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改訂新版 世界大百科事典 「柴」の意味・わかりやすい解説

柴 (しば)

柴とは特定の樹種をさすのでなく,山野に生えているあまり大きくない雑木やその枝をいう。どこでも容易に入手でき,燃料とするほか,《万葉集》に〈阿須波(あすは)の神に木柴さし吾は斎(いは)はむ〉とうたわれているように,神をまつるのにも用いられる。昔話で,爺が山へ柴刈りに行ったと語られるのは,燃料とする柴のことである。最近では柴を燃料とすることはほとんどなくなったが,柴を根元のほうからかまどに入れると逆児ができるとか,貧乏するといわれた。祭祀用には,おもに常緑の柴が神の依代(よりしろ)とされたり神に手向(たむけ)るのに使われた。峠や村境の路傍には〈柴立て〉〈柴折り〉という所があり,ここに柴を挿して旅や行路の安全を祈る風があった。高知県では〈柴折り様〉に柴を供えて通れば〈ひだる神〉に憑(つ)かれないという。峠には旅の病死者などの霊が現れるという信仰があり,そうした不業の死をとげた霊をなぐさめるために柴を手向けるのである。このことから峠の語源は手向であるという説も生まれた。また柴で囲って神域を示したり,悪霊から身を守ったりもした。山野で野宿する際には,四隅に柴を挿して山の神から地面を借りる風があり,こうしないと神のたたりをうけるという。頭屋神事では,祭場の中心に神の依代として柴を立てたり,祭場の境に柴を立てて神域とした。大隅半島の村々では正月に〈柴祭〉という狩猟始めの儀礼が行われ,柴を四隅に挿して儀礼を行ったり,柴アケ,柴フセといって儀礼の始めと終りを表示した。〈柴垣〉というのは,青葉をつけた柴を束ねて垣根としたもので,青葉の霊に守られた神聖不可侵の安住の世界であることを表したものであり,屋敷林を〈樫の小柴〉とよんでいる所もある。
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動植物名よみかた辞典 普及版 「柴」の解説

柴 (クヌギ)

学名Quercus acutissima
植物ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物

柴 (シバ・フシ)

植物。山野に自生する雑木または雑草の称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【山口祭】より

…平地の農民が山中に立ち入って狩猟,伐木その他山林の資源を採取するに際して,山林に立ち入る通路の入口で山の神を祭り,行動の安全と立入りの許可を祈願すること。山口にある大木や岩石を山の神の座にみたて,ここにを折ってさし,酒などを注いで祈ることは,現在でも伐木業に従う人々が行っている。狩人ももとは山口で柴を折って手向け,または頭を垂れて獲物があることを願った。…

※「柴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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