日本大百科全書(ニッポニカ) 「株式交換」の意味・わかりやすい解説
株式交換
かぶしきこうかん
A社がB社を買収する場合に、B社の株主がもつB社株とA社株等とを交換することで、B社をA社の100%子会社とする方法。1999年(平成11)の商法改正によって導入された。また、2006年の会社法制定によって、A社がB社株主に対して交付する対価が多様化され、A社株のみならず、社債、新株予約権、現金、他社株などと交換することが可能となった。
株式交換を行うには、A・B両社の株主総会を開いて株式の交換比率等について特別決議(議決権総数の過半数にあたる株主たちの出席を得て、その出席者の議決権の3分の2以上の賛成を得る決議)を得る必要がある点や、反対する株主に株式買取請求権(自己の株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求できる権利)が付与される点など、合併と同様の手続を経ることが必要となる。ただし、合併の場合は、A社とB社が一つの会社に統合され、それらの財産も一体化されるのに対し、株式交換の場合は、A社とB社は別法人として存続し、単にA社とB社が完全親子会社(親会社が子会社の株式の100%を保有する関係)として経済的に一体化されるにすぎない。したがって、株式交換の場合には法律上財産の移転が生じないことから、合併とは異なり、原則として会社債権者を保護する規定は設けられていない。
A社が株式を発行する際に、B社の株主にB社株を現物出資してもらえればB社を100%子会社にすることは不可能ではないが、この方法が成功するためには、B社の株主全員の協力が必要になる。それに対し、株式交換の場合は、株主総会での承認があれば、A社やB社の株主のなかに多少の反対者がいても実現可能な点で便利である。
[野村修也]
『垂井英夫著『株式交換・株式移転の活用と税務』(2001・税務経理協会)』▽『新日本監査法人編、江見睦生・西田裕志著『株式交換・移転 実務ハンドブック』(2002・中央経済社)』▽『新日本監査法人編『株式交換・移転の会計・税務』第3版(2007・中央経済社)』