精選版 日本国語大辞典 「核力」の意味・読み・例文・類語
かく‐りょく【核力】
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原子核の構成粒子である核子(陽子と中性子の総称)の間に働く力。自然界の四つの基本的相互作用(強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用、重力相互作用)のなかの強い相互作用に属する。原子核は核力のもたらす引力的効果で結合している。核力の本性についての理解は、1935年(昭和10)湯川秀樹(ひでき)の中間子論によって開かれた。二つの核子の間で中間子(まず第一にπ(パイ)中間子)が交換されることによって核力が生じる。核力の到達距離は、πのコンプトン波長約1.4フェムトメートル(1フェムトメートルは1000兆分の1メートル)であり、それ以遠は1個のπの交換で生じる力による。近距離になると、2個以上のπおよびこれらが共鳴してできる重い中間子の交換の力が重要となる。さらに至近距離になると、核子を構成するクォークが関与した力が働く。核力は、クーロン力のように距離だけで決まる力でなく、2核子の状態(角運動量、パリティなどの量子数)に依存する。他方、核力では荷電独立性が成り立つ。すなわち、2核子系の同じスピン・パリティの状態では、核力は電荷によらず同じであるという近似的対称性を示す。
原子核を結合させる核力ポテンシャルの平均的な様相は、約1フェムトメートルで約1億電子ボルトの引力、至近距離で芯(しん)状の斥力(反発しあう力)という特徴を示す。内側で強い斥力と引力の効果が相殺する傾向があるため、原子核の結合には、湯川中間子論の与える1個ないし2個のπ中間子の交換による核力が重要となる。このような性質と短距離力であることから、核力は強いが、運動エネルギーに比して結合力は強くないので、原子核は、ヘリウム原子の系と同様に、量子効果の大きい系である。
2007年に、核子間に働く力のポテンシャルを格子ゲージ理論のコンピュータ・シミュレーションで導く研究が行われた。結果は湯川中間子論でのπ中間子の交換による核力のポテンシャルとおおよそ一致している。すなわち、核子が遠くにあるときはπ中間子を1個交換する寄与が、互いに近づくと複数のπ中間子の交換が利き、さらに至近距離では大きな斥力の芯が再現されている。
核力をもっと広義にとらえ、核子の同族であるハイペロンを加えたバリオンの間に働く力とすることもできる。ハイペロンは核子にはない奇妙さ(ストレンジネス)の自由度をもつので、広義の核力はこの量子数にも依存し、その多様性も増す。しかし、二つのバリオンで結合状態をつくるのは、陽子と中性子よりなる重陽子(ジュウテロン)のみである。
[玉垣良三・植松恒夫]
『玉垣良三「核力の多面性」(中村誠太郎監修『大学院原子核物理』所収・1996・講談社)』
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核子間にはたらいて原子核結合をもたらす力.核子対のうち,陽子-陽子間にはクーロン力が斥力としてはたらくが,核力はこれに比べて十分強い.核力の作用半径は~2 × 10-15 m で非常に短く,核半径と深い関連を示す.核力はさらに飽和性をもっている.したがって,核力は作用しあう核子対のアイソスピン,スピン座標,位置座標などを交換することにより生じる交換力をも含んでいると考えられる.これは最初,W.K. Heisenberg(1932年)が水素分子イオンなどの化学結合との類推から指摘した.湯川(1936年)は交換力の場に,ある粒子(π中間子)が関係づけられ,その質量が作用半径に結びつけられるという核力の中間子論をたてた.交換力の場合には,粒子対のいろいろな状態に応じて引力がはたらいたり斥力がはたらいたりする結果として,核力の飽和性が表れる.
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