精選版 日本国語大辞典 「核融合」の意味・読み・例文・類語
かく‐ゆうごう ‥ユウガフ【核融合】
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軽い原子核の衝突によって、より重い原子核をつくる原子核反応のことを核融合反応、あるいは単に核融合という。軽い原子核、すなわち質量数の小さな原子核には、陽子1個からなる質量数1の水素(H)、陽子と中性子1個ずつからなる質量数2のジュウテリウム(重水素ともいう。Dまたは2Hで表す)、陽子1個と中性子2個からなる質量数3のトリチウム(三重水素ともいう。Tまたは3Hで表す)、陽子と中性子2個ずつからなる質量数4のヘリウム(4He)などがある。ウランなどの重い原子核が分裂して、より軽い原子核をつくる原子核反応である核分裂と同じく、核融合でも大きなエネルギーが放出される。太陽のように輝いている恒星のエネルギーは、内部でおこっている核融合によるものである。核融合反応を制御してエネルギー源として利用することは、まだ実現されていないため、一般に原子力、原子力エネルギーという場合、核分裂によるエネルギーをさすことが多いが、本来は核分裂だけではなく、核融合も含めた原子核反応によって放出されるエネルギーを核エネルギー、原子力エネルギー、原子力などという。
[加藤幾芳]
核融合や核分裂など原子核反応に伴って放出されるエネルギーは、燃焼などの化学反応に伴うエネルギーと比較するとおよそ100万倍で、化学反応によるエネルギーがeV(電子ボルト)の単位で測られるのに対し、原子核反応によるエネルギーはMeV(メガ電子ボルト。M=メガは100万倍を意味する)の単位で測られる。原子核反応で放出されるエネルギーの大きさは、反応前の原子核を構成している核子(陽子、中性子)の結合エネルギーと、反応後の原子核の核子の結合エネルギーとの差で決まる。原子核の核子あたりの結合エネルギーは、
のように、鉄(Fe)やニッケル(Ni)など中程度の質量数の原子核では大きく、水素(H)など質量数の小さな原子核や、ウラン(U)など質量数の大きな原子核では小さい。結合エネルギーの小さな原子核から結合エネルギーの大きな安定な原子核をつくる核融合や核分裂の原子核反応によって、結合エネルギーの差に伴うエネルギーが放出され、MeVの大きさになるのである。また、ウランなど重い原子核の核分裂に比べ、水素やヘリウムなど非常に軽い原子核の核融合が、より大きな1核子当りのエネルギーを放出することも、 から明らかである。核融合反応は、加速器などを用いて原子核どうしを衝突させることでも実現できるが、それはわずかな量の原子核の核融合であり、エネルギー源としては適当でない。燃料として利用できるように物質を核融合させるには、まず、電気的に中性の原子から電子をはぎ取り、プラスの電荷をもつ原子核だけの状態がつくられなければならない。これをイオン化といい、イオン化した原子核のガス状態をプラズマという。恒星の内部では、重力によってつくられる高温・高圧のもとで、原子どうしの衝突によって電子がはぎ取られた原子核だけのプラズマ状態が自然につくられているが、エネルギー源としての核融合を地上で実現するためには、人工的に高温・高圧のプラズマを安定に長時間つくらなければならない。また、プラズマ状態にある原子核どうしには、衝突する時に電気的な反発を生むクーロン力(電荷と電荷の間の電気力)が働く。この反発するクーロン力のもとで核融合反応をおこすには、反発力を超えるような大きなエネルギーで原子核どうしを衝突させる必要がある。そのためには、できるだけ高温のプラズマ状態をつくり閉じ込めておかなければならない。たとえば、太陽の中心は2400億気圧、1600万K(ケルビン)のプラズマ状態となっていて、ゆっくりと核融合反応が進行している。このように高温・高圧状態のプラズマによる核融合反応を熱核反応という。
地上で高温・高圧のプラズマ状態を瞬間的につくり、わずかな時間の間に核融合をおこさせるのが水素爆弾などの核融合爆弾である。この場合は、ウランなどを用いた核分裂によって高温・高圧の状態をつくり、周りに配置したジュウテリウムやトリチウムなどの原子核を核融合させ、核分裂よりもいっそう大きなエネルギーを発生させるのである。
[加藤幾芳]
核融合反応にはさまざまなものがあるが、将来、利用可能な反応は次の二つの反応である。nは中性子(ニュートロン)、pは陽子(プロトン)を表す。3Heはヘリウムの同位元素ヘリウム3である。
(1) D+D→3He+n+3.27MeV
→3H+p+4.03MeV
(2) D+T→4He+n+17.58MeV
(1)をDD反応、(2)をDT反応とよぶ。DD反応のほうが、ジュウテリウムを海水から得ることができるなど資源的に優れているが、核融合をおこさせる高温・高圧のプラズマの条件を実現しやすいDT反応の利用が考えられている。核融合によるエネルギーの利用は、有害な核分裂生成物を生成しないことや燃料となる水素や重水素が海水に含まれておりほとんど無尽蔵であることから、魅力ある未来のエネルギー源として期待されている。
[加藤幾芳]
恒星の内部で生じている核融合反応についても、星の大きさや質量によってさまざまな反応がおこっている。たとえば、太陽の場合、大部分が水素であり、ppチェイン(ppチェーン、pp連鎖反応とも)とよばれる次の連鎖反応がおこっている。
上の表において、γ(ガンマ)はγ線、e+は陽電子、e-は電子、ν(ニュー)はニュートリノである。また、放出エネルギーでの2倍の因子は2回反応がおこることを示している。
つまり、2個の陽子(p)が衝突してジュウテリウム(D)の原子核をつくり、これに陽子が衝突してヘリウムの同位元素であるヘリウム3(3He)になり、ヘリウム3の原子核どうしが衝突してヘリウム4(4He)の原子核となる。結局、4個の陽子で1個のヘリウムをつくる核反応がおこっている。この過程で多量のエネルギーが発生し、γ線が放射され、ニュートリノ(ν)が放出される。この連鎖反応を模式的に表すと、
のようになる。なお、それぞれの反応平均時間は、温度1300万Kでは、(1)が140億年、(2)が10-19秒、(3)が5.7秒、(4)が100万年である。実際、太陽は最初の反応がゆっくり進行するため、水素が燃えつきるまであと63億年は燃え続ける。しかし、1秒当りおよそ3.6×1036個の水素が核融合し、膨大なエネルギー(3.8×1026J)が放出されている。[加藤幾芳]
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二つ以上の原子核が核反応を起こして融合し,反応前よりも質量数の大きな原子核を生成する現象.核融合を起こさせるためには,クーロン反発に打ち勝って原子核どうしを接近させる必要があるので,大きなエネルギーで原子核どうしを衝突させなければならない.実験室的には,加速器によって原子核を加速して核融合を起こさせる.大規模には数億度の超高温を実現して裸の原子核どうしを衝突させることができれば,核融合が起こるはずである.核融合は原子番号の小さな元素で起こりやすい.たとえば,水素の同位体である重水素(2H)とトリチウム(3H)は,核融合によって 4He と中性子にかわり,そのとき多量のエネルギーを放出する.反応物質の単位質量当たりに発生するエネルギーを比較すると,ウランの核分裂で発生するエネルギーは石油の200万倍程度であるが,上述の水素の核融合で発生するエネルギーはさらに多く,核分裂の数倍になる.宇宙に存在する重い元素は,水素などの軽い元素が核融合を起こして生成したと考えられている.また,太陽などの恒星は,その内部で水素などが核融合を起こしながら,エネルギーを宇宙空間に放出している.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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…この種の反応は非弾性散乱などとともに核構造を調べるのにきわめて有力な手段になっている。また原子力で主要な役割を演ずる核反応,すなわち核分裂と核融合も,別種の組替えである。核分裂は,例えば,ウランの原子核が入射中性子を吸収して,ほぼ同じ大きさの二つの原子核に分裂する反応である。…
※「核融合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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