格付け
かくづけ
rating grading inspection
経済・金融分野で、債券などの元本・利息がきちんと払えるかどうかの安全度を「AAA」「BB」といった簡単な記号で表すこと。信用格付け。また、公共工事入札で、入札する企業の施工能力を分類する際にも適用される。
投資家に債券などの信用度をわかりやすく表示しようとする目的からアメリカで定着し、日本でも、国債、社債、地方債、コマーシャルペーパー(CP)などのほか、大学や医療機関などが発行する債券にも適用される。財務状況や収益力などを基準にランク付けされ、高い格付けを得るほど、市場から低コストで資金を調達できる利点がある。
格付け会社では、アメリカのスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、欧米系のフィッチ・レーティングスなどが有名で、日本では格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)などがある。格付けは原則的に企業などの依頼を受けて有料で実施するが、格付け会社が有価証券などを基に独自に実施する「勝手格付け」もある。
2008年の世界金融危機の契機となったサブプライムローンについては、信用度が低いにもかかわらず、格付け会社が同ローンを裏づけとする証券化商品に高い格付けを与えていたことが問題となった。このため主要国首脳会議(サミット)などは、格付け会社の規制を強化する方針を打ち出し、日本でも登録制度の導入や検査・監督強化が検討されている。
公共工事の入札格付けは、施工能力の足りない企業が応札しないように利用されてきたが、談合事件を受けた入札改革で、格付けを見直す動きもあり、これが事業の品質低下といった問題につながっているとの指摘も出ている。
[矢野 武]
『三國仁司著『Q&A格付けの仕組み――“準公共財”としての格付けのゆくえ』(2009・金融財政事情研究会)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
知恵蔵
「格付け」の解説
格付け
投資対象としての債券について、元本償還と利払いの確実性の度合いを簡単な記号で示したもの。発行する会社が有償で格付け会社に依頼する。格付け会社は、市場やマクロ経済動向、業務内容、財務状況などを総合的に判断して格付けを行う。例えば、スタンダード&プアーズ(S&P)社の例では、元本償還と利払いが最も確実とみられる債券をAAA(トリプルエー)、以下最も不確実と見られるDまで10段階で評価し、それぞれに強弱を示す+または-の記号が付く。BB(ダブルビー)以下はデフォルト・リスクの高い投資不適格とされる。一般に、その国で最も格付けの高い債券は国債だが、日本では国債の格付けが下げられたことで、これを上回る格付けの事業会社が多数ある。なお、国債の格付けは格付け会社が独自の分析と判断で行うため、「勝手格付け」と呼ばれる。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
かくづけ【格付け】
専門用語としては一般に社債の格付けratingについていうが,商品取引所などにおける格付取引でも使われる。
[社債格付け]
社債の発行条件や発行量を調整したり,投資者の投資判断に資するため,社債を一定基準により質的にランク付けすること。社債格付けはアメリカでとくに発達しており,ムーディズ社Moody’s Investors Service Inc.(1903年創立。62年に信用調査で知られるダン・アンド・ブラッドストリート社の傘下に入った),スタンダード・アンド・プアーズ社Standard & Poor’s Corp.(1916年以来,格付けに着手。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
格付け
企業業績や財務内容などを分析し、企業が発行する債券の元本や利払い能力の安全度を順位付けすること。表記はアルファベットで、格付けするのは「格付機関」。米ムーディーズやS&P、日本では日本格付投資情報センターなどがに大きな影響を与えることで知られている。発祥は19世紀半ばの米国。大陸横断鉄道などの建設資金を欧州などから調達する際に投資家に情報を提供する会社が設立されたことが始まり。20世紀の国際的な資本市場の発達を背景に、国が発行する国債ほか金融機関の健全性を判断する目安としても活用されている。
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報