古代・中世において文書・記録の作成・保管をおもに担当した下級の職員。〈あんず〉ともいう。奈良時代,造東大寺司や造石山寺所などに置かれていたことが〈正倉院文書〉にみえるが,その名称が多く登場するのは平安中期以降である。国,郡,大宰府公文所,六衛府,検非違使庁,太政官厨家,院宮・摂関家・諸家の政所や御厩にみられる。衛門府の場合〈権案主〉〈案主代〉,使庁の場合〈案主長〉の名称もみられる。摂関家政所下文などには紀・中原・清原・惟宗などの下級官人が案主として日下(につか)に一名署判している。鎌倉幕府では源頼朝が1191年(建久2)に政所を開設すると藤井俊長を案主に補した。その後は,鎌倉中期に一時的に清原氏がその職に就いたこともあるが,だいたい菅野氏が案主職を世襲した。このほか12世紀初頭以降,荘園の荘官の中に下司・公文らとならんで案主の名称が出現する。その地位は下司(げし)・公文(くもん)より低い。
執筆者:稲葉 伸道
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「あんず」とも。古代~中世に,諸官司で文書の作成・保管にあたった下級職員。正倉院文書にみえる奈良時代の写経所の場合は,写経の発願が行われると,担当する事務官を決めてこれを案主とよび,経師(きょうし)・校生(こうしょう)・装潢(そうこう)からなるチームを編成した。案主は多くの帳簿を作って,職員の管理,用具の入手,食料の手配,職員への給与の申請・給付など一切の実務をこなした。平安時代の諸司・諸家や荘園に,鎌倉時代の将軍家政所(まんどころ)などにもおかれるようになった。
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…国,郡,大宰府公文所,六衛府,検非違使庁,太政官厨家,院宮・摂関家・諸家の政所や御厩にみられる。衛門府の場合〈権案主〉〈案主代〉,使庁の場合〈案主長〉の名称もみられる。摂関家政所下文などには紀・中原・清原・惟宗などの下級官人が案主として日下(につか)に一名署判している。…
…左右衛門府職員が〈使の宣旨〉により兼任するのが原則で,弘仁左右衛門府式では定員を左右それぞれにつき官人1,府生1,火長5と定め,貞観・延喜式では左右それぞれ佐1,尉1,志1,府生1,火長(かちよう)9に増員し,834年(承和1)には別当が置かれている。火長は看督長(かどのおさ),案主,官人従者などからなり,式にはみえないが,火長の下に下部と称する下輩が置かれていた。佐の定員は時代が下っても式制どおり左右各1であるが,尉以下の職員については,必要に応じ増員が図られている。…
※「案主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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