検地帳(読み)ケンチチョウ

デジタル大辞泉 「検地帳」の意味・読み・例文・類語

けんち‐ちょう〔‐チヤウ〕【検地帳】

検地の結果を書き記した土地台帳。縄帳。水帳みずちょう

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精選版 日本国語大辞典 「検地帳」の意味・読み・例文・類語

けんち‐ちょう‥チャウ【検地帳】

  1. 〘 名詞 〙 検地を行なって作成した土地台帳。耕地の小名、広さ、等級および名請人などが記されており、江戸時代のものは、宗門人別帳と並んで、もっとも基本的な民簿とされた。水帳(みずちょう)。〔書言字考節用集(1717)〕

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日本歴史地名大系 「検地帳」の解説

検地帳
けんちちよう

県内各地の検地は、天正後半から始められ、大半が文禄三年に行われた。現在県内には、この検地帳が二〇余残されている。一方、東京都徳川林政史研究所には二三〇余、二六〇村分に及ぶ同検地帳が蔵されており、全国でもまれな例となっている。以下、年次を記すもの以外は文禄三年のものである。

県内に現存の分

阿拝郡(伊賀国)〕野間(天正一四、ただし検地帳の形式を整えず、差出帳に近い。上野市岡森明彦)

〔朝明郡〕中野(四日市市立図書館)

〔三重郡〕四日市場(四日市市立図書館)

〔鈴鹿郡〕小崎(関町坂口正一)、高富(鈴鹿市大森家)平田(鈴鹿市平田町区有)

〔河曲郡〕若松之内中村(鈴鹿市中若松町区有)

奄芸郡〕平野郷(津市下津市次郎)

〔一志郡〕七栗郷中村・同大鳥(久居市公民館)、中村郷上津前(津市大宝院)、福田山郷(白山町福田山区有)、算所・須賀領(嬉野町豊島信夫)

飯高郡〕野村郷(松阪市野村町区有)

〔多気郡〕中村西佐伯(多気町津田神社)、田中(多気町田中区有)、五桂・同野帳(多気町五桂区有)、下三瀬(大台町下三瀬区有)

〔度会郡〕小浜(天正一六、鳥羽市小浜漁協)、山神(玉城町中村家)、伊勢路(南勢町伊勢路区有)、五ヶ所(南勢町奥村楠由)

徳川林政史研究所蔵分

〔安芸郡〕稲生郷、稗田、徳田郷、秋永郷、中世古、郡山、御薗、上野郷、大別保・円王寺、越智郷、徳居、長法寺郷、三宅、三行郷、赤部郷、南黒田郷、平野郷、中野郷、上津部田郷、野田、窪田郷、別保景重多郷、白子栗真、千王名(白塚・町屋・中山・小川・高佐・中瀬)

〔一志郡〕飯福田(天正一七)、市場庄、上之庄、算所、下之庄、堀之内、八田、薬王寺、小野、津屋城、河原木造、蘇原、田尻、宮古、小川、須賀、黒田、須賀瀬、一志、野田、見長、権現、丹生俣、井上、釜生田、森本、宮野、滝野川、矢下、与原郷、小原、木造、川口、家城、竹原、上多良生、中多良生、下多良生、小倭上野、一色、庄田郷、井生、井関、岡、古市、南出、本之郷、甚目・舞出、伊福田・岩倉

〔飯高郡〕田原(天正一五)、大平生、大塚郷、大口之郷、江(郷)津、高町屋、矢川、上川、垣鼻、久保、下、小黒田郷、厩部田、田村郷、立野、丹生寺、桂瀬、山室、広瀬、上茅原田、下茅原田、西野、阿形、野村之郷、田牧、矢津、下出江、六呂木、小片野、粥見郷、上出江、勢津、鍬形、丹生郷

〔多気郡〕上、相可、荒蒔、土羽郷、田中、野中、五桂、津留郷、井之内・林、古江、片野、波多瀬、栃原、柳原、楠、粟生、長、下三瀬、上三瀬、上菅、中須賀、川合、佐原郷、焼飯、真手猿飼郷、須賀小屋、小切畑、栗木谷、南、大井、大杉谷、赤滝、薗、茂原、熊内、唐櫃、神瀬、三瀬川、舟木、色太・土屋・車川、絵馬・天ヶ瀬、明豆・御棟、滝屋・神滝・小滝、奈良井・高瀬

〔度会郡〕上野、津、佐八、神薗、棚橋、中楽、宮子、中角、岩出、田宮寺、蚊野、有爾別所、有爾谷、坂本、小俣、中須、大野木、曾根・小社、粟野、妙法寺、上地、上久具、下久々、積良郷、勝田、葛原、世古、有爾井倉、湯田、長原、坂井、麻加江、田口、注連指之郷、野原之郷、野添、打見之郷、藤、神ノ原、柏野、崎、柑子垣内、栗原、中郷、五ヶ町、奥河内、木越、火打石、駒ヶ野、柳、市場、脇出、川上、中、和井野、押淵、始神、斎田、伊勢路、内瀬、船越、五ヶ所、切原、飯満、いつミ、神津佐、山原、檜山、下津浦、木谷、中津浜、宿島、田曾浦、相賀浦、礫浦、迫間浦、円座、贄浦、河内、村山、神前浦、方座浦、古和浦、日名田、下有爾、平谷

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改訂新版 世界大百科事典 「検地帳」の意味・わかりやすい解説

検地帳 (けんちちょう)

検地の結果をとりまとめて作成した帳簿。水帳(みずちよう)とも呼ばれている。形式には,さまざまなものがあるが,太閤検地の検地帳の形式が統一されるのは文禄検地であり,幕府検地の検地帳が統一的な形式に整えられるのは寛文・延宝検地である。検地帳の標準的な記載形式(文禄検地,寛文・延宝検地以後の幕府検地)では,1村単位で検地結果をとりまとめ,1村の石盛(こくもり)を定め,村内の田・畑・屋敷について1筆ごとに田畑所在地名(字名),地目(田,畑,屋敷),品位(上・中・下・下々),面積,石高,名請人(なうけにん)を記し,最後にそれを総計して村高を記載する。さらに,屋敷四壁,山林,池,沼沢,荒地などを記載したり,〈甲分・乙作〉〈甲家抱・乙作〉という分付形式で村落内部の階層関係が記帳されることもある。この場合,甲は年貢・諸役の負担者であり,乙は甲に隷属する零細な耕作者である。以上の諸事項を記載した後に,検地役人村役人が連署し,それを2冊作成して1冊を領主側に保管し,1冊を村方に交付する。名寄帳(なよせちよう)が村内で,村役人が年貢割付の事務処理の必要から作成されるものであるのに対して,検地帳は近世期における年貢負担義務を明確にするための公的な基本的土地台帳であり,領主の農民支配のための基礎帳簿である。領主は検地帳の村高を基準にして一定率の年貢・諸役を徴収し,検地帳に記載された名請人は土地の保有者(土地への緊縛)であると同時に,その土地に賦課される年貢・諸役(封建地代)の負担者である。

 現在残っている検地帳で古いものは,豊臣秀吉が天正~文禄の時期に実施した太閤検地の検地帳である。また徳川家康の所領で天正・文禄・慶長の時期に実施された備前検地石見検地などの検地帳も残されている。これらの古い検地帳の記載形式や記載内容は,それぞれの時期・地域の土地所有形態の差異を反映して,きわめて多様である。たとえば,畿内先進地の初期検地帳には,隷属関係にある小農民まで名請人として登録されているので,きわめて多数の零細名請人が現れ,後進地では,これらの小農民は分付形式で記帳され,名請人の数も少ない。したがって検地帳の形式と内容を比較・検討して,当該村落の政治的・社会経済的諸事情を知ることができる。さらに名寄帳や家数人馬改帳(いえかずじんばあらためちよう)などとの関連のなかで初期村落内部の重層的な農民階層関係が明らかになる。そのため検地帳は貴重な史料として研究者に利用されており,太閤検地論争は検地帳の研究の一つの成果である。地押帳地詰帳縄打帳などと表記された帳簿も,初期検地の研究では一括して検地帳と呼ばれることもあり,また初期検地では検地帳と表記された帳簿でも,それが実際に縄入れされた検地結果であることに疑義がもたれる検地帳もある。
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百科事典マイペディア 「検地帳」の意味・わかりやすい解説

検地帳【けんちちょう】

水帳,縄帳,竿(さお)帳とも。近世,検地の結果をまとめた土地台帳。村単位で土地の一筆ごとに地名,地目,等級,面積,石高,耕作者を記載する。検地帳に登録された耕作者が本百姓であり,年貢(ねんぐ)諸役の負担を義務づけられた。封建支配の基礎帳簿。
→関連項目字切図一地一作人海高国絵図郷帳古文書地押太閤検地名請人名寄帳分付百姓分米水呑村絵図

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「検地帳」の意味・わかりやすい解説

検地帳
けんちちょう

一村の検地の結果を一筆ごとに記載し村高を明らかにした土地台帳。水帳(みずちょう)、竿帳(さおちょう)、縄帳(なわちょう)などともいう。記載様式は、一筆ごとに、その所在地の小字(こあざ)名、田畑屋敷の別、等級(上・中・下の品付)、面積、分米(ぶんまい)(石高(こくだか))、名請人(なうけにん)を記載し、順次これを列記して、最後に、それらを合計した一村全体の田畑屋敷の総面積、村高を記入し、検地奉行(ぶぎょう)が署名するのが原則である。この原則は太閤(たいこう)検地からほぼ確定し、江戸時代を通じて継承された。しかし細かな点では検地奉行によって精粗の差があり、また内容の変化もみられた。等級は、上・中・下のほかに、上々(じょうじょう)・下々(げげ)などを加えた場合や、9等にも分けた場合もある。面積は、それを測る1間(けん)の長さが太閤検地では6尺3寸、江戸初期の検地では6尺1分、その後はさらに短くする場合もあったから、年代の下るほど実質的に狭くなった。名請人はその土地の公認の保有者であるが、江戸初期までの検地帳では屋敷を登録されたものと、されないものとがあり、また検地帳によっては分付(ぶんつけ)記載のあるもの(分付主の家抱または小作人と考えられる)もみられ、それらがのちには本百姓として把握されて、年貢課役の負担を義務づけられた。

 検地帳は2冊作成されて、1冊は領主側(勘定所)に、1冊は村の名主(庄屋(しょうや))のもとに保管され、これを基準に年貢課役が賦課された。検地帳が封建支配の基礎帳簿として果たした役割は大きい。

[宮川 満]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「検地帳」の意味・わかりやすい解説

検地帳
けんちちょう

水帳 (みずちょう) ともいう。江戸時代,検地条目に従って行われた検地の結果を各村ごとにまとめた土地台帳の一種。一般に,村内の耕地や屋敷などそれぞれ所在順,一筆ごとに小字 (→ ) ,地目,品位,面積,生産高,耕作者などを記載し,最後に地目,品位別集計,村高を記載した。この検地帳は2部作成され,1部は勘定所に,もう1部はその村の名主が保管した。検地帳に記載された農民は,直接耕作者としてその土地の耕作権を公認される (記載形式により例外もある) 反面,年貢負担者として土地に繋縛されることとなった。それゆえ,検地帳は単なる土地台帳ではなく,江戸時代の農民支配の最も基本的な帳簿として重要な役割をもっていた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「検地帳」の解説

検地帳
けんちちょう

水帳・縄打帳・竿入帳・地詰帳などとも。検地の結果を1村ごとに記録した土地の基本台帳。検地帳の形式は太閤検地段階でほぼ整えられ,江戸時代に整備された。通常は村内の田畑・屋敷地について1筆ごとの地字(ちあざ)・地種・等級,縦横の間数,面積および名請人(なうけにん)などが記載され,末尾には地種・等級別の面積集計と石盛(こくもり)・石高,および1村全体の面積総計と石高総計が記され,最後に検地奉行をはじめとする諸役人と村方の代表者の署名・押印がなされた。検地本帳は2通作成され,領主と村で1冊ずつ保管するのを原則とした。江戸時代を通じ,宗門人別帳と並んで,農政・民政上の最も重要な基礎台帳であった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「検地帳」の解説

検地帳
けんちちょう

近世,検地の結果を村ごとにまとめて記した土地台帳
水帳ともいう。村単位で,田畑・屋敷地一筆ごとに,所在地・等級・面積・石高・所有者(貢納責任者)を記し,最後に村の総面積・総石高などを記載。幕府・諸藩はこれに基づいて年貢諸役を課した。中世にも荘園・国衙 (こくが) の検注帳があったが,豊臣秀吉の太閤検地で様式がととのい,江戸時代の幕府・諸藩が継承した。

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世界大百科事典(旧版)内の検地帳の言及

【家数人馬改帳】より

…家数改帳,家付帳,家付人付帳,棟別帳,人畜改帳などの名がある。検地帳が土地生産力を記録するのに対して,家数人馬改帳は村内の百姓竈(かまど)ごとに受持高,家族の男女別年齢・軒数・牛馬数・屋敷地を調査し,村落構成員を把握するばかりでなく,村ごとに男女別・年齢別の集計を出すことによって夫役負担能力のあるものを書き上げさせた。すなわち役負担可能な家(役家)と役夫の台帳である。…

【名請人】より

検地帳に名前を登載されている農民のこと。検地によって田畑,屋敷地の所持者として領主に認定され,その田畑,屋敷地にかかる年貢,諸役を負担する責務を請け負っていた。…

【名寄帳】より

…日本近世の村方帳簿の一つ。検地帳に基づいて村ごとに作成された土地台帳。百姓の名まえ別に田,畑,屋敷の石高(こくだか),面積を1筆ごとに記載し,それを合計して百姓別の石高,面積を記帳している。…

【水帳】より

…近世における検地帳の別称。語源については,水土(土地)の土を略したとか,律令時代の民部省図帳を御図帳(みずちよう)といったのに基づくともいわれる。…

※「検地帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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